経営環境および対処すべき課題

重要な子会社別

 ソフトバンクグループ㈱の経営陣は、ソフトバンク・ビジョン・ファンド、アームおよびソフトバンク㈱を、投資規模およびソフトバンクグループ㈱連結収益への影響度が極めて高い、最重要子会社と認識しています。各子会社における、経営上の課題は以下のとおりです。

❶ソフトバンク・ビジョン・ファンドの成功

 ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、英国ロンドンに拠点を置く投資ファンドであり、次世代のイノベーションを引き起こす可能性のある企業やプラットフォーム・ビジネスに対して、大規模かつ長期的な投資を行うことを目指しています。ソフトバンク・ビジョン・ファンドに対し、ソフトバンクグループ㈱はリミテッド・パートナーとして出資を行っています。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの運営は金融行為規制機構(The Financial Conduct Authority)に登録されたソフトバンクグループ㈱100%子会社であるSBIAが行っており、SBIAはソフトバンク・ビジョン・ファンドから管理報酬および成功報酬を受け取ります。SBIAは、以下の取り組みを通じてソフトバンク・ビジョン・ファンドの利益を最大化することを目指しています。


a.運用体制の拡充
 SBIAは、ソフトバンググループ㈱の取締役であるラジーブ・ミスラがCEOを務めるほか、投資銀行やベンチャー・キャピタル、テクノロジー企業等それぞれ多様な経歴を持つプロフェッショナルによって運営されています。投資規模の拡大に合わせた投資・運用体制を確保することを目的としてSBIAは人員の拡充を進めており、世界数カ国の拠点を合わせた従業員数は、2019年3月31日現在297名に達しています。


b.「ユニコーン」中心の中長期的な分散投資
 ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、970億米ドル(2019年3月31日現在)という多額の出資コミットメントに加え、存続期間が原則2029年11月20日までの長期にわたるという特色を有しています。このような特色を生かし、SBIAは、企業価値が10億米ドルを超えると試算される非上場企業(いわゆる「ユニコーン」)を中心に投資を行っており、各事業分野におけるプレゼンスを確立した企業に対して中長期に投資を行うことで、短期的な市場の変動による影響を抑えながら、中長期的な投資リターンを追求しています。


c.投資先価値の最大化の追求
 SBIAは、投資先を慎重に選定することに加え、投資後も様々な支援を行い投資先の成長を促すことにより、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの保有株式価値の最大化を追求しています。具体的には、SBIAは、情報・テクノロジー分野における同社の知見や当社グループの事業基盤を活用することに加え、投資先間の協業を促進することで、投資先企業のさらなる成長を後押ししていきます。


❷アームの新規市場での事業成長

 プロセッサーの設計を手がけるアームのテクノロジーは、省電力性に優れており、2018年12月31日現在、スマートフォン用メインチップの95%以上に採用されています。現在、アームは研究開発投資の加速フェーズにあり、研究開発に従事する従業員数を2016年のソフトバンクグループ㈱による買収時から大幅に増加させる等、収益のほぼ全てを事業に再投資しています。この研究開発投資の加速フェーズは今後数年にわたり続く見込みである一方、現在開発が進む新テクノロジーから生まれる収益が今後の収益性を底上げしていくと見込んでいます。アームの製品・サービスが属する世界の半導体市場は、人工知能(AI)やコンピュータービジョン等の新テクノロジーが自律走行車やIoT等の成長市場で活用されることにより、堅調に成長することが見込まれています。一方、短期的には、スマートフォン市場の減速や中国経済の低迷等の影響をうけ、半導体市場の成長は過去に比べゆるやかになることが予想されています。このような環境下でアームは、将来何年にもわたり必要とされるテクノロジーの開発を図っており、研究開発のさらなる拡充により、以下の戦略を長期的に実現することを目指しています。

  • スマートフォンやコンシューマー・エレクトロニクス、組込アプリケーション等の市場での高いシェアを維持
  • より多数のテクノロジー(グラフィック・プロセッサーや機械学習向けプロセッサー等)や、より高付加価値のテクノロジー(パフォーマンスやセキュリティーの向上等)が提供可能な分野で、ロイヤルティー単価を向上
  • 自動運転やIoT、拡張現実(AR)ヘッドセット等新興技術分野でのポジションを確立
  • メーカーやクラウドサービス提供企業へのライセンス直接供与等、競争環境を変えうる新商流の導入
  • IoTマネージドサービス(デバイス管理やコネクティビティー提供、データ管理等)の提供による新規収益源の確立

❸ソフトバンク㈱の着実な利益成長と安定的なキャッシュ・フローの創出

 日本の通信市場においては、政府の競争促進政策に基づく競争が深化していることに加え、新規参入も予定され、通信事業者間の競争はますます激化しています。一方、通信サービスにおいてはIoTやAIの活用が急速に浸透しています。このような経営環境の中で着実な利益成長と安定的なキャッシュ・フローの創出を継続していくため、ソフトバンク㈱は、「Beyond Carrier」戦略のもと、以下の取り組みを通じて、これまで培った事業資産を活かしながら、顧客基盤の拡大を通じて通信事業のさらなる成長を目指すとともに、当社グループの知見を活かし新たな領域へ事業を拡大することによって、収益基盤の強化および確立を図っています。

a.通信事業のさらなる成長

①顧客基盤の拡大

  • スマートフォンのさらなる普及
  • 「SoftBank」「Y!mobile」「LINEモバイル」の3ブランドの提供による、多様なニーズへの対応
  • インターネットサービスと移動通信サービス等のセット契約割引の提供を通じた収益機会の創出

②通信ネットワークの高度化

  • 安全性と信頼性の高い通信ネットワークの構築および継続的な安定運用
  • 5G対応ネットワークの効率的な構築・運用

b.新規事業の育成・拡大

  • ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先および当社グループのビジネスパートナーの日本展開へのインキュベーターとしての参画による、通信事業の事業資産および当社グループの持つテクノロジー企業群とのつながりを活用した革新的なサービスの展開
  • ヤフーとのさらなる協業による、サービス・ソリューションの提供

全社

安定した財務基盤の構築

 当社グループは、通信事業のキャッシュ・フローに依拠した財務運営から、ソフトバンクグループ㈱が、子会社を含むグループ会社を投資ポートフォリオとして統括する戦略的投資持株会社としての財務運営へと移行しました。株式市場の変調を含む保有株式価値の変動の影響を受けやすい同ビジネスモデルにおいて、ソフトバンクグループ㈱は、これらの影響を可能な限り抑えた安定的な財務運営を行うことにより、安全性の確保を目指しています。具体的には、ソフトバンクグループ㈱のLTV(Loan to Value、保有資産に対する負債の割合。調整後純有利子負債(注)÷保有株式価値で算出)を主要な指標と定め、35%を上限に、金融市場の平時においては25%未満に収まるよう同指標を管理しながら、新規投資や投資回収、投資資産価値の上昇等投資活動の状況に応じて適切に負債をコントロールしていくことを目指しています。
 また、子会社を含むグループ会社からの配当収入やリミテッド・パートナーとしてソフトバンク・ビジョン・ファンドから受け取る分配金等の収入を安定的に確保しながら、売却および借入(アセット・バック・ファイナンス)を含む投資資産の資金化や負債による資金調達を機動的に活用することで、最低2年分の社債の償還資金に備えた潤沢な現預金を確保し安全性を維持できるよう努めています。

2019/06/19 15:00:00 +0900
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