当連結会計年度の事業の状況
2021年度、当社の税引前利益は前年度から6兆5,400億円悪化し8,696億円の損失となり、親会社の所有者に帰属する純利益(注1)も同様に大きく悪化し1兆7,080億円の損失となりました。このような大幅な業績悪化となったのは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの多くの上場投資先の株価下落が大きく影響し、合計3兆4,347億円の投資損失を計上したためです。
投資損失のうち、ソフトバンク・ビジョン・ファンド1およびソフトバンク・ビジョン・ファンド2等からの損失は3兆7,388億円です(うち、外部投資家に帰属する投資損失は9,727億円)。ソフトバンク・ビジョン・ファンド1は、保有銘柄の一部売却などにより1兆2,261億円(純額)の実現益を計上した(注2)一方、金利先高観を受けた高成長テクノロジー銘柄回避の動きやオーバーハング懸念(注3)、規制強化など複数要因により多くの上場投資先の株価が下落したことにより、当年度末に保有する投資のうち上場投資先について合計3兆6,322億円の未実現評価損失(純額)を計上しました。一方、未上場投資先については、資金調達ラウンドや業績好調を背景とした一部投資先の公正価値増加により、7,098億円の未実現評価益(純額)を計上しました。ソフトバンク・ビジョン・ファンド2は、投資の一部売却などにより実現益1,286億円を計上(注4)した一方、上場投資先の株価下落や未上場投資先の公正価値減少により、2,655億円の未実現評価損失(純額)を計上しました。
このほか、アリババ株式を活用した資金調達(注5)などに関連してデリバティブ関連利益(投資損益を除く)1兆2,347億円を計上した一方、円安の影響を受け(注6)為替差損7,061億円を計上しました。
株主の皆さまへの還元については、当社は、株主還元の充実を図るとともに、当社株式がNAVに比べて大きくディスカウントされて取引されている状況を是正し、適正な株主価値の実現を図るために、2021年11月8日、2億5千万株または1兆円のいずれかを上限とする自己株式の取得を決定しました。2022年3月末までに6,726万株の自己株式(取得価額の総額は3,446億円)を取得(注7)しました。
ロシア・ウクライナ情勢の影響について ソフトバンクグループ㈱およびソフトバンク・ビジョン・ファンドは、2022年3月末現在、ロシアまたはウクライナの企業への直接的な投資を保有していません。また、ソフトバンク・ビジョン・ファンド1の外部投資家にロシアの投資家は含まれていません。一部のグループ会社や投資先が、ロシアまたはウクライナで事業を行ったり、ロシアの企業と取引を行ったりしていますが(すでに事業の撤退・停止を行ったものおよび取引を停止したものを含む。)当該事業または取引が当社グループの連結計算書類に与える影響は限定的です。
ただし、ロシアのウクライナ侵攻にともなう対ロシア経済制裁を機にエネルギー価格が急騰し、また米国においてインフレ抑制のための金融引き締めが始まったことやコロナ禍におけるサプライチェーンの混乱も相まって、世界的に景気減速の懸念が高まっています。こうしたマクロ経済の逆風にともない世界の株式市場のボラティリティが高まっており、当社の保有株式価値、そしてNAVに悪影響を及ぼしています。当社は、引き続きLTV(注8)および手元流動性維持に関する財務方針を遵守したうえで、投資ポートフォリオの流動性・多様性の確保に努めています。また、特に、ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンドにおいては、他の多くの国際的な投資ファンドと同様に外部環境の変化による影響を受けやすいため、市場動向を注視しつつ投資先のファンダメンタルズの見極めを重視し、慎重な投資ポートフォリオの構築と管理を継続しています。
(注)- 税引前損失のほか、法人所得税5,926億円が含まれます。
- このうち1兆4,638億円は過年度に未実現評価益(純額)として計上済みです。
- 大株主が今後、株式を多く売るかもしれないという懸念
- このうち3,141億円は過年度に未実現評価益(純額)として計上済みです。
- 2019年度から2021年度に締結したアリババ株式の先渡売買契約
- 当社と国内の資金調達子会社の米ドル建て負債(子会社からの借入や外貨建て普通社債など)が米ドル建て現預金・貸付金を上回っていたことから、為替換算レートが円安となったことにより為替差損が生じました。
- 2022年4月末までに累計8,331万株を総額4,330億円で取得しました。
- 保有資産に対する負債の割合。調整後純有利子負債÷保有株値で算出します。当社は、金融市場の平時は25%未満、異常時でも35%を上限として管理するよう努めています。保有株式価値および調整後純有利子負債は、いずれもアセットバック・ファイナンスにおける満期決済金額または借入金を除きます。また、調整後純有利子負債の算出からは、当社グループのうち、ソフトバンク㈱(Zホールディングス㈱をはじめとする子会社を含む)、ソフトバンク・ビジョン・ファンド1、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2、ソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンド、アームおよびPayPay㈱など独立採算で運営される事業体、ならびに資産運用子会社SB Northstarに帰属する有利子負債および現預金等を除きます。