事業の概況

各事業の状況は、次のとおりであります。

(注)
  1. 各事業の売上高は、外部顧客に対する売上高に各事業間の内部売上高等を加算して表示しております。
  2. 当連結会計年度より、2022 年5月13 日公表の「大和ハウスグループ第7次中期経営計画」にあわせて、従来報告セグメントとしていた「住宅ストック」セグメントを廃止し、「その他」セグメントに含まれていた環境エネルギー事業を「環境エネルギー」セグメントとして報告セグメントに変更するなど報告セグメントの区分方法の見直しを行っており、第83 期は遡及処理後の数値を表示しております。

 戸建住宅事業では、事業ミッション「『続く幸せ』を、住まいから」及び、事業ビジョン「LiveStyle Design(リブスタイルデザイン)~家を、帰る場所から『生きる』場所へ~」のもとで、お客様の人生に寄り添い、地域に密着した事業展開を推進してまいりました。
 国内の住宅事業では、主力鉄骨造商品「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」、木造住宅商品「xevo Granwood(ジーヴォグランウッド)」、3・4・5階建「skye(スカイエ)」を中心に、オンラインで家づくりができる「Lifegenic(ライフジェニック)」や富裕層をターゲットとした当社最高級戸建住宅商品「WoodResidence MARE-希(- マレ)」などの多彩な商品をラインアップしてまいりました。また、当社オリジナルのソフト提案として「テレワークスタイル」や家族で家事をシェアする「家事シェアハウス」など、注文住宅・分譲住宅におきまして、お客様の課題解決と社会の変化をとらえた新たな価値の提案に注力してまいりました。
 また、2023年1月からはデジタル技術を使った提案力を強化し、初回提案時におけるプランの3D化やウェブコミュニケーションツール「LiveStyle診断」等をスタートしております。加えて、業界初となる24時間防犯カメラ機能付きインターホンを搭載した戸建住宅向け宅配ボックスを開発し、防犯や社会課題の改善に取組む商品を提案しております。
 海外では、米国におきまして、雇用拡大による住宅需要が見込める米国東部・南部・西部を結ぶスマイルゾーンでの戸建住宅事業を展開しております。金利上昇などによる不動産市況を含む景気の減速や、サプライチェーンの混乱などもある中、大幅な成長を実現いたしました。2022年度後半は受注が鈍化したものの、住宅ローン金利の上昇には一服感がみられ、2023年1月から3月の受注は順調に推移しております。
 以上の結果、当事業の売上高は9,100億7千6百万円(前期比15.9%増)、営業利益は466億6千6百万円(前期比21.6%増)となりました。

 賃貸住宅事業では、ご入居者様に喜ばれ、長く住み続けたいと思っていただける住まいを提供し、オーナー様の資産価値の最大化に繋がる賃貸住宅経営のご提案とサポートを行ってまいりました。環境負荷を低減し、省エネ・創エネ対応の賃貸建物を推進する中、2022年10月に断熱性能を高めた「TORISIA(トリシア)」を販売開始し、ZEH-M物件のさらなる普及・拡販に努めてまいりました。
 大和リビング株式会社におきましては、ライフスタイルの変化に伴い、管理物件にインターネットや宅配ボックスを標準導入するなど、ご入居者様のニーズにあわせた仕様を備えたことにより、高い入居率を維持するとともに、当社建築物件の管理戸数も増加いたしました。
 大和ハウス賃貸リフォーム株式会社におきましては、当社施工の賃貸住宅を所有するオーナー様に対し、定期点検・診断を通じたリレーションの強化を図り、保証延長工事やリノベーション提案を継続して推進してまいりました。
 また、当社、大和リビング株式会社及び大和ハウス賃貸リフォーム株式会社の3社は、近年の貧困や少子高齢化等、多様化・複雑化する社会課題の解決に向けて、賃貸住宅「D-room」を中心とする新たな「循環型事業モデル」を確立させるために「大和ハウスグループ『D-room地域共生基金』」を設立いたしました。地域の安全・防犯、地域イベントや文化の伝承、ひとり親世帯をはじめとする子育てなどに支援・貢献している10団体を選定し、2023年3月に第1回目の寄付を実施いたしました。
 海外では、賃貸住宅開発事業を展開している米国におきまして、メリーランド州で開発した賃貸住宅「ロックビルタウンセンター」の収益性が評価され、早期の売却が実現いたしました。断続的な金利上昇が機関投資家をはじめとする購買層の資金調達に影響し、収益物件のマーケットの動きに注視が必要な状況が継続しておりますが、開発した物件を高収益で売却できるタイミングを計りつつ、稼働率や賃貸による収益率の向上に注力しております。
 以上の結果、当事業の売上高は1兆1,494億2千4百万円(前期比9.2%増)、営業利益は1,097億1千万円(前期比13.5%増)となりました。

 マンション事業では、お住まいになる方々の多彩なライフスタイルに応えるため、ハウスメーカーとして培ってきたノウハウを駆使しながら、長寿命の住まいに欠かせない基本性能や快適性、安全性、管理体制の提供を追求してまいりました。そして、お客様にとっての資産価値に加えて、環境や社会への配慮、地域社会への貢献を目指した付加価値の高いマンションづくりに努めております。
 2023年3月に販売開始した「プレミスト本鵠沼」(神奈川県)は、閑静な立地と徒歩10分圏内に生活利便施設や教育施設が整う成熟した住環境に加えて、各主要都市への交通利便性の良さが評価され、販売が順調に進捗しております。
 また、当社が開発する分譲マンション「プレミスト」シリーズでは、2024年度以降に着工する全棟にZEH-M仕様を採用いたします。2018年度からZEH-M仕様のマンション開発を開始し全国での開発・販売体制が整ったため、当初目標から2年前倒しで取組むこととなりました。
 株式会社コスモスイニシアにおきましては、「イニシア町田」(東京都)が、JR横浜線町田駅から徒歩4分の交通利便性と商業施設や商店街が揃う生活利便性に加え、三方が道路に面した立地の解放感や日当たりの良さなどが評価され、販売が順調に進捗し全戸完売いたしました。
 大和ライフネクスト株式会社におきましては、充実した福利厚生により企業の採用競争力を高めるため、寮・社宅ニーズ、在宅勤務等の普及によるコミュニケーション不足や体調不良時の孤立化リスクに応えるべく、法人向けクオリティレジデンス「エルプレイスシリーズ」(社員寮)を全国61ヶ所に展開しております。2023年3月には、新規物件「エルプレイス清澄白河」(東京都)を開業いたしました。
 海外では、既に完売しております中国の分譲マンション「和風雅頌(グレース・レジデンス)」(南通市)及び「琅越龍洲(グレース・レジデンス)」(常州市)の引渡しが順調に進捗いたしました。
 以上の結果、当事業の売上高は4,843億8千2百万円(前期比27.5%増)、営業利益は408億7千9百万円(前期比319.2%増)となりました。

 商業施設事業では、テナント企業様の事業戦略やエリアの特性を活かし、ニーズに応じたバリエーション豊富な企画提案を行ってまいりました。特に、大型物件への取組みの強化や、当社で土地取得・開発企画・設計施工・テナントリーシングまで行った物件を投資家に販売する分譲事業等に注力してまいりました。
 都市型ホテル事業では、大和ハウスリアルティマネジメント株式会社におきまして、ペントアップ需要や外国人の旅行先として訪日のニーズが根強い中、2022年10月に実施された外国人観光客入国制限解除や歴史的な円安が追い風になり、コロナ前以上のインバウンド需要の回復に伴う収益増が期待されております。そのような中、ダイワロイネットホテルの2023年1月から3月の平均稼働率は85.1%と改善し、順調に推移いたしました。
 フィットネスクラブ事業では、スポーツクラブNAS株式会社におきまして、スクール会員数はコロナ前の水準まで回復してまいりましたが、昨今の水道光熱費高騰の影響で厳しい経営環境が続いているため、運営オペレーションの見直しによる効率化を継続し、コスト削減を徹底してまいりました。
 以上の結果、当事業の売上高は1兆921億6千7百万円(前期比5.2%増)、営業利益は1,329億8千4百万円(前期比7.1%増)となりました。

 事業施設事業では、法人のお客様の様々なニーズに応じた施設建設のプロデュースや不動産の有効活用をトータルサポートすることで業容の拡大を図ってまいりました。
 物流施設関連では、「DPL浦安Ⅳ」(千葉県)が竣工と同時に満床稼働となるなど、順調に開発を進めてまいりました。また、新潟県初となるマルチテナント型物流センター「DPL新潟巻潟東」を着工するなど、当社の強みである地方での拠点展開を活かし、製造業の国内回帰をターゲットとした地方における物流倉庫の開発を加速いたしました。なお、2022年度では全国41ヶ所の新規物流施設を着工しており、豊富な経験とノウハウでお客様の物流戦略をバックアップしております。
 主に当社が開発した物流施設を管理・運営する大和ハウスプロパティマネジメント株式会社におきましては、2023年1月完成の「DPL坂戸Ⅱ」(埼玉県)をはじめとする物流施設等30棟について新規プロパティマネジメント(PM)契約を締結し、累計管理棟数は238棟、管理面積は約938万㎡となりました。
 大和物流株式会社におきましては、物流基盤構築として2023年1月に「広島観音物流センター」、2023年3月に「丸亀物流センター」(香川県)を竣工し、物流センターを軸とした3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)を積極的に展開してまいりました。
 株式会社フジタにおきましては、大型建築工事として清掃工場建替・物流倉庫・大学施設・市街地再開発事業での複合施設・生産施設等、土木事業としてエネルギー事業関連の受注により、建設受注高は堅調に推移いたしました。また、期首繰越工事の順調な進捗と開発案件の売却増加により、売上高は前年から大幅に増加いたしました。
 海外では、主な展開エリアとなるASEANにおきまして、新型コロナウイルス感染症対策の規制緩和が進んだものの、インドネシア・ベトナム・マレーシア・タイで推進中の物流倉庫事業につきましては、円安による日系企業の設備投資意欲の減退の影響が継続しております。今後の日系企業のASEAN進出や事業拡大の再開に注視しつつ、外資系企業への営業活動を実施してまいります。
 以上の結果、当事業の売上高は1兆1,302億3千万円(前期比4.7%増)、営業利益は996億3千万円(前期比20.6%減)となりました。

 環境エネルギー事業では、脱炭素への流れが加速し、再生可能エネルギーへのニーズが高まるなか、EPC事業(再生可能エネルギー発電所の設計・施工)、PPS事業(電気小売事業)、IPP事業(発電事業)の3つの事業を推進してまいりました。
 EPC事業では、脱FIT(再生可能エネルギーの固定買取制度)の取組みとして、屋根上や隣接地に設置した太陽光発電所から直接電力を供給する「オンサイトPPA(※)」、太陽光発電所から離れた需要家に供給する「オフサイトPPA」の2つのPPA事業の拡大に注力しており、案件が増加しております。
 PPS事業では、長期化するウクライナ情勢や円安の影響による資源価格の上昇により電力仕入価格が高騰し、厳しい事業環境が続いております。当社グループでは、低圧の燃料調整費の上限撤廃、高圧における市場連動型プランの開始、電源調達量に応じた電力供給、電力卸売市場からの調達比率の低減等の施策により収益性の改善に取組んでまいりました。直近では電力卸売市場のスポット価格も落着きはじめ、収益の改善が見込まれます。
 IPP事業では、太陽光発電を中心に、風力発電、水力発電を全国480ヶ所で運営しております。今後も第7次中期経営計画における経営方針の一環として「原則すべての新築建築物の屋根に太陽光発電の設置」の取組みを当社グループ全体で推進し、更なる再生可能エネルギー発電事業の拡大を目指してまいります。
 以上の結果、当事業の売上高は1,886億1千1百万円(前期比17.1%増)、営業利益は62億8千5百万円(前期比19.3%増)となりました。

※Power Purchase Agreement(パワー・パーチェース・アグリーメント)の略。電力購入契約。

 アコモデーション事業では、大和リゾート株式会社におきまして、国内宿泊需要は全国旅行支援、県民割の実施により前年に比べ増加し、稼働率は前年を上回る結果となりました。
  また、当社は「株式会社響灘火力発電所」の経営権を取得し、2023年1月26日付で当社グループ会社といたしました。2022年度を初年度とする5ヵ年計画「第7次中期経営計画」において、“カーボンニュートラルの実現”をテーマとし、その一つとして再生可能エネルギーの供給量拡大を掲げております。2026年度には累計1,550MW以上、2030年度には累計2,500MW以上の再エネ供給施設を自社運営し、広く社会にクリーンなエネルギーを供給することを目指しております。そのような中、より積極的に自社運営施設を拡大すべく、定格出力112MWの発電能力を有する響灘火力発電所を取得いたしました。同社が運営する「響灘火力発電所」では、現在石炭とバイオマス燃料(木質ペレット)の混焼による発電を行っておりますが、バイオマス燃料を100%利用したバイオマス専焼発電所へ転換し、2026年4月の運転開始を目指してまいります。
 以上の結果、当事業の売上高は818億4千9百万円(前期比29.8%増)、営業利益は54億9千7百万円(前連結会計年度は59億2千2百万円の営業損失)となりました。

企業集団の部門別受注高及び売上高

(注)
  1. 記載金額は百万円未満を切り捨てて表示しております。
  2. 各事業部門の区分につきましては、「1.企業集団の現況に関する事項 (6) 主要な事業内容」に記載しております。
  3. 前期繰越高・当期受注高・当期売上高・次期繰越高ともに外部顧客に対する前期繰越高・当期受注高・当期売上高・次期繰越高を表示しております。

(注)
  1. 「売上高」「事業別売上高構成比」は外部顧客に対する売上高を表示しております。
  2. 「営業利益」のグラフ内に記載の調整額には、セグメント間取引消去、のれんの償却額、各セグメントに配賦していない全社費用が含まれております。

設備投資及び資金調達の状況

 当連結会計年度において実施した企業集団の設備投資の総額は、5,181億円であり、その主なものは、事業用地及び賃貸等不動産の取得であります。
 また、当連結会計年度における主な資金調達として、社債2,010億円の発行及び長期借入金4,338億円の調達を実施いたしました。

対処すべき課題

 今後の社会経済環境の見通しにつきましては、コロナ禍における行動制限の緩和等により個人消費や設備投資を中心に経済活動の正常化が進みました。一方で、急激な円安や資源高に起因する物価上昇等の影響に注視が必要な状況です。世界経済は、長期化するウクライナ情勢や欧州を中心としたエネルギー危機等により景気の減速感が懸念されており、国際通貨基金(IMF)は、2023年4月に発表した世界経済見通しについて、金融不安を受け、世界経済の下振れリスクになると指摘、下方修正しております。引き続き金利・物価の上昇等による景気の下振れリスクを注視していく必要があります。
 このような事業環境の中で、当社グループは、2022年度を初年度とする5ヵ年計画「大和ハウスグループ第7次中期経営計画」を開始いたしました。第8次中期経営計画以降の成長も見据えた企業価値の最大化に向けて、3つの経営方針「収益モデルの進化」・「経営効率の向上」・「経営基盤の強化」のもと、継続して各重点施策に取組んでおります。今後もこれらの取組みにより、「事業の推進」と「経営基盤の強化」の好循環をさらに加速させるべく、「事業の推進」におきましては、請負型・開発型ビジネスを維持しながら、海外事業とストック事業を拡大させてまいります。さらに「再生と循環」をキーワードとした事業を推進し、持続的な成長を実現する収益モデルへと進化させると共に、「経営基盤の強化」につきましては、人的資本の価値向上、DXによる顧客体験価値向上と技術基盤の強化、ガバナンスの更なる強化に努めてまいります。併せて、2030年度までの新たなカーボンニュートラル計画を実行し、環境経営を推進することで企業収益と環境負荷低減の実現に努めてまいります。
 株主の皆様におかれましては、今後とも一層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申しあげます。

ご参考

大和ハウスグループ第7次中期経営計画の進捗状況について

当社は、2027年3月を最終年度とする「第7次中期経営計画(2022年度から2026年度)」を策定し、最終年度の目標である売上高5兆5,000億円、営業利益5,000億円、当期純利益3,400億円を目指してまいります。

業績目標等


資本政策・株主還元に関する基本方針


財産及び損益の状況の推移

① 企業集団の財産及び損益の状況の推移

(注)
  1. 売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益、総資産、純資産の金額は百万円未満を切り捨てて表示しております。
  2. 第83期より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しており、第83期以降の財産及び損益の状況については、当該会計基準等を適用した後の数値を記載しております。

② 当社の財産及び損益の状況の推移

(注)
  1. 受注高、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益、総資産、純資産の金額は百万円未満を切り捨てて表示しております。
  2. 第83期より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しており、第83期以降の財産及び損益の状況については、当該会計基準等を適用した後の数値を記載しております。

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2023/06/29 12:00:00 +0900
2023/06/22 18:00:00 +0900
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