今般、2030年における当社グループの目指す姿として「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げました。必要なモノ・サービスを必要なところに提供することを総合商社の使命と捉え、「マーケットインの徹底」、「社内外での共創と共有の実践」、「スピードの追求」により競争優位・成長を追求し、併せて必要となる組織や人材の変革を継続することで、持続的な価値創造を実現していきます。
この2030年の目指す姿に向け、2021年4月からは3ヶ年計画「中期経営計画2023」~Start of the Next Decade~を以下のとおり策定しました。
当社の株主資本コストが8%程度であることを踏まえ、経営指標としてROE目標を10%超としています。この目標を達成するために、社内管理指標として投下資本に対する基礎的営業キャッシュ・フローの比率を示すキャッシュリターンベースでのROIC(CROIC)を導入し、各セグメントにおける達成すべきCROICの目線を価値創造ラインとして定めています。
「中期経営計画2023」においても、キャッシュ・フローをマネージした規律を堅持しつつ、メガトレンドを踏まえた成長領域や新たな領域における投資を中期経営計画3ヶ年で合計3,300億円(うち300億円は人や組織改革に向けた非財務投資)程度を実行することにより、企業価値の着実な向上を実現していきます。
具体的には、メガトレンドを踏まえたマーケットニーズや社会課題に応えるため、「競争優位性」と「成長マーケット」を追求した戦略に基づき、価値創造を図っていくとのコンセプトの下、「インフラ・ヘルスケア」、「東南アジアやインドといった成長市場でのマーケットイン志向」、「素材・サーキュラーエコノミー」の3つを注力領域として定め、人材や資金のリソースをこの3つの領域に集中し、成長を実現していきます。
当社は、株主の皆様に対して、安定的かつ継続的に配当を行うと共に、内部留保の拡充と有効活用によって株主価値を向上させることを基本方針としております。この基本方針のもと「中期経営計画2023」においては、 連結配当性向30%程度を基本とします。
また、下限配当について、PBR1倍に至るまでは時価DOE4%、PBR1倍到達後は簿価DOE4%と設定しました。
つまり、PBR1倍に至るまでは、実質的に配当利回り4%をお約束し、PBR1倍到達時には当社が考える資本コスト8%程度の半分を還元することになります。
※ DOE:株主資本配当率
「中期経営計画2023」の詳細は、当社ウェブサイト(https://www.sojitz.com/)をご参照ください。
当社は、2021年4月付にて、著しい環境変化、急速に進むデジタル化、価値観の多様化などを踏まえた成長領域における事業規模の拡大・変革及び新規事業の推進を目指し、従来の9本部から7本部へと再編する機構改革を実施しました。
本部戦略
自動車の卸売・組立事業と小売事業を中核事業とし、成長市場であるアジア・ロシアNIS・ラテンアメリカ、成熟市場である日本・米国などで展開しています。地域密着型のセールス・マーケティングとアフターセールサービスの強化、デジタル技術の活用などの機能強化を通じて事業のバリューアップを図ると共に、有望市場で更なる事業領域の拡大を図ります。また、販売金融事業の強化、時代の変化を捉えた自動車関連サービス事業の構築にも積極的に取り組んでおり、豊かなモビリティ社会に貢献していきます。
本部戦略
民間航空機・防衛関連の代理店やリース、パーツアウト、ビジネスジェットなどの航空事業のほか、空港運営や鉄道などの交通インフラ事業、船舶では新造船や中古船などの各種船舶事業に取り組んでいます。代理店事業におけるボーイング社とのパートナーシップの深化やビジネスジェット事業の機能拡大、機内食事業といった空港関連ビジネスの強化など、航空関連事業の強化・幅出しと共に、北米鉄道事業の事業拡大、需要の高まる新興国での空港・交通インフラビジネスにも取り組んで事業基盤を強化していきます。
本部戦略
新興国を中心とした経済成長に伴うインフラ・ヘルスケア関連の需要の増加や、気候変動、デジタル化、価値観の多様化などグローバルな社会課題に対し、エネルギー、通信、都市インフラ、ヘルスケアなどの事業領域において、双日ならではの機能・発想を複合的に組み合わせることで新たなソリューションを提供し、価値を創造していきます。
本部戦略
金属資源や鉄鋼分野における上流権益投資及びトレーディング事業に加えて、リサイクルを含むサーキュラーエコノミーの領域に本格参入し、社会ニーズに対応した新規事業の創出・推進に取り組んでいます。資源関連ビジネスにおける変革を推進すると共に、近年の脱炭素に向けた潮流の加速化を踏まえて、近未来の省資源化、循環型社会の実現に向けたリサイクル事業を最注力テーマと位置づけ、市況に左右されない事業構築を図り、強化していきます。
本部戦略
メタノールなどの基礎化学から、合成樹脂を中心とした機能性材料、工業塩・レアアースといった無機化学など、幅広いトレードや事業を展開しており、脱炭素社会・循環型社会に貢献する環境ビジネスやライフサイエンス分野での事業開発にも取り組んでいます。事業・人材の変革に取り組みながら、これら強みのある事業の更なる強化と、脱炭素社会・循環型社会の実現に貢献する環境・ライフサイエンスや、素材ビジネスへの取り組みを強化し、持続的成長を実現していきます。
本部戦略
安全・安心な食と快適な住空間の提供により、質の高いライフスタイルを実現するため、東南アジアなど成長著しい地域において、肥料事業、食料事業、水産事業、飼料事業、林産資源事業などの既存事業の強化並びに周辺事業の拡大・変革により、持続的成長を目指します。さらに先進国における社会課題の解決からの価値創造をテーマに、日本の地方創生への挑戦にも取り組み、優良な事業資産を拡充していきます。
本部戦略
食品流通事業、商業施設運営事業、消費財流通事業、不動産事業など、消費者のニーズに応える多種多様な事業に国内外で取り組んでいます。ベトナムやインドなど成長が期待される新興国において、既存事業のビジネス変革並びに、人々に「生活の豊かさ」と「利便性」をもたらす多様なビジネスを展開していきます。さらに国内リテール領域における事業強化もテーマに取り組んでいきます。
❶ サステナビリティに関する取り組み
当社グループは、「双日が得る価値」と「社会が得る価値」の「2つの価値」を、将来にわたり創造し続けるため、事業を通じて中長期的に取り組む6つのサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を定め、グローバルな環境・社会課題の解決と企業活動との融合促進及びその体制の構築に取り組んでいます。
パリ協定や、持続可能な開発目標(SDGs)などのグローバル課題を踏まえ、当社にとって影響がより大きい「脱炭素社会実現」と「サプライチェーン上の人権配慮」を目指す「サステナビリティ チャレンジ」を掲げております。
「中期経営計画2023」では、脱炭素社会や循環型社会を見据えたビジネスや、トランジション期間に必要不可欠なインフラ型ビジネス・サービスを強化するとともに、恒常的に人権尊重の取り組みを拡大していきます。
●脱炭素に向けた取り組み
当社は、自社グループの「既存事業」からのCO2排出削減を加速させ、将来の脱炭素社会への耐性を高めるとともに、今後手掛ける「新規事業」では、この社会移行を新たな「機会」と捉え、エネルギー分野はもとより、幅広いビジネス構築を行っていきます。これにより、脱炭素社会の実現という「社会が得る価値」の構築までの過程で、様々な収益機会を「双日が得る価値」として増やしていきます。
上記を具体的に進めるべく、2021年3月に、新たに以下の対応方針・目標を公表しました。
当社グループの「脱炭素」対応方針・目標
なお、本目標は、現時点の将来見通しに基づいたものであり、社会動向や技術革新の状況の変化によって、柔軟に見直しを行います。
当社は、2018年8月にTCFDの最終提言への賛同を表明しており、上記目標の進捗については、TCFDの最終提言に則した開示に努めていきます。
●サプライチェーン上の人権配慮に向けた取り組み
多様な事業をグローバルに展開している当社グループは、世界中で広範なサプライチェーンを有しており、事業に関わるどの国・地域においても、人権尊重が担保されることを目指しています。
この達成に向け、当社は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、取り組みを推進しています。
方針の策定・共有
サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)の1つを「人権」と定め、「サステナビリティ チャレンジ」において「サプライチェーンを含む人権尊重への対応」を掲げています。
また、グループ各社や仕入先に、これら方針を記載したハンドブックなどを配布・共有しており、今後も、継続的に、認知徹底を図ります。
リスク評価
英国NGO「ビジネスと人権リソースセンター」が保有する環境・人権リスクの発生事例データベースをもとに、一般的に環境・社会リスクが発生しやすいセクターを抽出し、当社グループのサプライチェーン上の該当状況及びリスクへの取り組み状況を確認しています。また、確認結果は、外部専門家からの監修を受けています。
改善・救済
社内・社外ともにホットラインを用意しており、被害者からの情報連絡を直接受け取る仕組みを構築しています。
また、グループ内での課題認識の徹底、及び必要に応じて、サプライヤーの皆様に対する啓発活動を行っていきます。
実績開示
今後もグループの活動実績を、積極的に開示していきます。
❷ 多様性と自律性を持つ人材の創出
当社はこれまでも変化を機会と捉え価値創造できる人材を創出すべく、各種人事施策に力を入れてきました。
「中期経営計画2023」では、「多様性を競争力に」をテーマに、多様性と自律性を備える「個」の集団を作り上げるべく、多様性を競争力に変えていくために、様々な人材施策に取り組んでいきます。
まず、従来から取り組んできた女性活躍をはじめとしたダイバーシティの更なる推進に加え、テレワーク活用といった柔軟な働き方の追求など“多様な働き方ができる環境の整備”を継続、深化させていきます。
加えて、①事業経営できる力、②発想・起業できる力、③巻込み・やり切る力を持った人材の創出を実現するため、2019年にスタートした「発想×双日プロジェクト(通称 Hassojitz Project)」(※)など、全社横断で“挑戦を促す仕組み”を拡大するほか、若手の海外派遣や長期トレーニー制度などを通じた“社員一人ひとりが成長実感をもてる機会”を増加させていきます。社員個人のキャリアパスを支援しながら、個人の成長を、組織ひいては当社の成長の原動力とし、新たな事業創出につなげていきます。
(※)将来の世の中の変化や情勢を見据えながら新規事業やビジネスモデルを検討
●ダイバーシティの推進
人材の多様性を、変化の激しい市場環境に対応し、常にスピードをもって事業創造できる組織の力へと変えるため、当社では、女性、外国人、様々な職歴をもつキャリア採用者など、多様な人材の採用、起用を積極的かつ継続的に行いつつ、それぞれの特性や能力を最大限活かせる職場環境の整備やマネジメント層の教育などの取り組みを進めてきました。
「中期経営計画2023」では、これまでの取り組みに加え、多様なキャリアパス・働き方を促し、社員の多様性を新規事業の創出や組織の意思決定に活かすための人材施策を実行していきます。
当社では、なでしこ銘柄に5年連続で選定されるなど、近年、女性活躍推進を積極的に行っており、各種女性比率向上に加え、海外への駐在や、部長、課長職を担う女性社員も増え、その活躍の場も拡大しています。2021年4月には内部昇格により初の女性執行役員も誕生しました。
「中期経営計画2023」では、2030年代中に女性社員比率を50%程度にすることを目指し、中長期の目線で、あたり前に女性が活躍する環境づくりを進めます。また、社員の自律的な成長をサポートしつつ、各世代層のパイプライン形成と、経験の蓄積、キャリア意識醸成に継続的に取り組み、将来的に経営の意思決定に関わる女性社員を増やしていきます。
(ご参考)
■ なでしこ銘柄5年連続選定(2021年3月)
https://www.sojitz.com/jp/news/docs/210322rr.pdf
■ 女性活躍推進法に基づく 一般事業主行動計画 (2021年度~2023年度)
https://www.sojitz.com/jp/csr/employee/pdf/kodo2021.pdf
●柔軟で多様な働き方を実現する職場環境の整備
当社は2018年3月に「双日グループ健康憲章 “Sojitz Healthy Value”」を制定し、社員及びその家族を含めた健康の維持・増進に取り組んでいます。2021年3月に、経済産業省と日本健康会議が主催する健康経営優良法人認定制度である「健康経営優良法人2021(ホワイト500)」に3年連続で認定されました。また2020年度においては、従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に取り組んでいる企業として「健康経営銘柄2021」にも認定されました。
加えて、働き方改革の一環として、コアタイムを設けないスーパーフレックス制度とテレワーク制度を導入し、柔軟な働き方を推進しています。新型コロナウイルス感染症の影響がある中においては、社員とその家族の健康を守ることを第一に考え、テレワークと出社をバランス良く併用し、感染リスクを回避しながら業務できる環境を整えております。2020年10月30日、このような取り組みが評価され、総務省より令和2年度「テレワーク先駆者百選」に選定されました。今後も社員の声に耳を傾け、新しい働き方や柔軟性の高い職場環境を整備していきます。
●多様なキャリアパス・働き方を実現する取り組み
労働力不足・働く価値観の変化・兼業や副業といった新たな労働スタイルの浸透と環境が大きく変わる中、当社で働く社員が高いモチベーションを持ち、多様なキャリアパスや働き方を実現できる新たな取り組みを進めています。
・ジョブ型新会社
35歳以上の社員の多様なキャリア・ライフプランを支援するキャリアプラットフォームとして、ジョブ型雇用の新会社「双日プロフェッショナルシェア㈱」を2021年3月に設立しました。運営開始は2021年7月を予定しており、70歳定年、就業時間・場所の制限無し、副業・起業を可能とし、社員一人ひとりが新たなキャリアパスで活躍し続けられるよう支援していきます。
・独立・起業支援制度
独立・起業を目指す社員のために、当社のリソース(資金・情報・ネットワーク)を提供し、事業推進を支援する独立・起業支援制度を導入いたしました。独立・起業も含めた社員のキャリアパスを支援し、起業家精神を持ち積極的に挑戦し続ける人材の確保・育成、企業文化の変革を目指します。
・双日アルムナイ
双日OB/OGによる「双日アルムナイ」設立の提案を受け、同アルムナイ活動を公認し運営支援しています。双日役職員と双日OB/OGとの人的ネットワークの形成・拡大により、当社のビジネス領域の拡大を促進するプラットフォームとして活用していきます。
緩やかな双日グループの形成を通じ、現状の事業領域にとらわれない新たな事業機会の創出やオープンイノベーションを促進していきます。
●経営人材の育成のための取り組み
人事制度や研修制度を通して個々の人材力の最大化を図っています。当社の将来を担う若手社員には、3ヶ月から1年以上海外に派遣するトレーニー制度を設け、全員をその対象としています。加えて、2020年度からは所属部署とは異なる分野の事業会社にトレーニーとして赴任させ、事業運営・意思決定に触れる機会を増やし、視野を広げる新たな取り組みも行っています。また、次世代経営幹部人材には、将来を見据えた戦略思考や行動変革につなげるため、エグゼクティブコーチングや他社とのワークショップなどの機会を設けています。このように、若手層から管理職層に対して幅広く育成機会を提供することにより、将来の経営人材層を計画的に育成していきます。
(ご参考)
■ 人材関連全般
https://www.sojitz.com/jp/csr/employee/