事業の経過および成果ならびに対処すべき課題

【当期のグループ業績】

 JFEグループは、企業理念である「常に世界最高の技術をもって社会に貢献する」ことを通じて、企業としての持続的な成長を図り、株主の皆様をはじめすべてのステークホルダーにとっての企業価値の向上に努めてまいりました。
 当期のわが国経済は、輸出や企業収益が持ち直すとともに、設備投資の増加や雇用環境の改善もあり、全体として緩やかな回復基調となりました。一方、海外経済は米国を中心に先進国で緩やかな回復がみられるものの、英国や米国で具体化しつつある経済政策の変化や、中国経済の下振れリスク等により、不透明感の強い状況が続いております。
 国内外の鋼材需要は回復の兆しを見せているものの、アジアにおける鋼材の供給過剰の影響やエネルギー関連需要の低迷もあり、全面的な市況回復には至っておりません。さらに原料炭を中心に原料価格が乱高下する等、変化の激しい事業環境が続いております。
 このような状況のもと、JFEグループでは、第5次中期経営計画の主要施策である製造基盤整備やコスト削減等の国内収益基盤の強化、技術優位性による新商品開発、多様な人材の確保・育成および中長期的な視点での海外事業拡大等を着実に進めた結果、当期のグループ業績は、連結経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益ともに、前期に比べ増益となりました。


 各事業会社におきましては、それぞれの事業の特性と環境に応じた活動を展開してまいりました。

〈JFEスチール株式会社の業績〉

 JFEスチール株式会社は、国内外の需要環境が回復基調にあり、当期の連結粗鋼生産量は3,041万トンと前期に比べ増加いたしました。売上高については、鋼材価格の改善に取り組んだものの、円高による為替影響もあり、連結売上高は2兆3,491億円と前期に比べ減収となりました。損益については、収益改善に継続的に取り組みましたが、平成28年秋以降の急激かつ大幅な原料炭価格の高騰の影響が大きく、実質的には厳しい状況が継続しました。当期の連結経常利益は、棚卸資産評価差等の一過性の増益要因が大きく寄与し、405億円と前期に比べ増益となりました。

〈JFEエンジニアリング株式会社の業績〉

 JFEエンジニアリング株式会社は、過年度受注プロジェクトの円滑な遂行と収益確保に努めるとともに、環境・エネルギーおよびインフラ構築プロジェクトを対象に、積極的な受注活動を展開いたしました。この結果、当期の連結売上高は前期に比べ大幅に増加し、4,261億円となり、損益については連結経常利益266億円となりました。連結売上高、連結経常利益はともに過去最高を更新いたしました。

〈JFE商事株式会社の業績〉

 JFE商事株式会社は、国内外における鉄鋼製品の販売単価の下落等により、連結売上高は1兆6,710億円と前期に比べ減収となりました。損益については、自動車分野を中心とした堅調な鋼材需要を着実に捕捉するとともに、北米グループ会社や海外鋼材加工センターの収益改善に取り組んだ結果、当期の連結経常利益は218億円となり、前期に比べ増益となりました。

〈当社連結決算の状況〉

 以上の結果、当社単体業績等と合わせ、当期における連結売上高は3兆3,089億円、連結営業利益は967億円、連結経常利益は847億円となり、前期に比べ減収・増益となりました。また、特別損益は207億円の利益となり、連結での税金等調整前当期純利益は1,054億円、親会社株主に帰属する当期純利益は679億円となりました。

〈当社単体の業績〉

 当社は、事業会社3社より計23億円を経営管理料として受け取りました。また事業会社3社およびジャパンマリンユナイテッド株式会社より受取配当金として計82億円を受領いたしました。
 その結果、当期の当社の営業利益は85億円、経常利益は85億円となりました。
 剰余金の配当につきましては、株主の皆様への利益還元を最重要課題の一つと考えており、グループ全体として持続性のある企業体質の確立を図りつつ、積極的に配当を実施していく方針としております。当期末の配当につきましては、特に鉄鋼事業における原料価格の高騰等を主因とした厳しい経営状況を踏まえ、1株当たり30円で株主総会におはかりすることといたしました。何卒ご了承賜りますようお願い申しあげます。

【対処すべき課題】

 JFEグループを取り巻く事業環境は、国内では国土強靭化政策やオリンピック・パラリンピックへの対応などにより底堅い需要が見込まれ、また海外では社会インフラの整備や省エネルギー・環境対応ニーズ等の拡大が期待されるものの、原油・天然ガス価格の低迷、為替相場や原料炭を中心とした原料価格の急激な変動などの影響により、依然として厳しい状況が続いております。
 このような状況のもと、JFEグループでは平成27年度から平成29年度の事業運営の方針となる第5次中期経営計画を策定し、その達成に向けた着実な取り組みを進めております。JFEグループが持つ「技術の優位性」、「多様な人材力」そして広い事業領域で培った「グループの総合力」を活用し、国内収益基盤の強化と海外事業収益の拡大を図り持続的な成長と企業価値向上を図ってまいります。

〈各事業会社の取り組み〉

 JFEスチール株式会社においては、「常に新たな価値を創造し、お客様とともに成長するグローバル鉄鋼サプライヤー」を目指してまいります。この方針のもと、従来より取り組んできた製造基盤整備に引き続き経営資源を投ずることにより、コスト競争力の強化および製造実力の向上を実現し、中期経営計画で掲げた売上高経常利益率(ROS)10%を目指してまいります。
 具体的には第5次中期経営計画で掲げた3年間で6,500億円とした国内設備投資を着実に実施してまいります。特に製鉄所の競争力強化に大きな影響を与える上工程については、これまでの更新工事に加えて千葉第6コークス炉B団を建設中であるほか、福山No.3焼結機の更新も予定しており、コークスや焼結鉱の自給率を向上させることにより中長期的に収益を安定して確保できる体制を確立してまいります。また将来を見据えた新商品およびプロセス技術の開発を加速することにより技術優位性の向上を図りつつ、商品開発と一体となった販売戦略を立案・推進し、お客様にとってより魅力ある商品・サービスの提供に努めてまいります。
 一方、足下の原料価格の高騰に伴い製造コストが大幅に増加しており、コスト削減を一層強力に進めるとともに、お客様のご理解を得ながら、販売価格の改善を粘り強く進めてまいります。
 さらに、将来にわたり競争力の維持・強化を図るため、製造現場での大幅な世代交代を見据えた人材の育成と技能伝承を推進いたします。


 JFEエンジニアリング株式会社においては、くらしの礎を「創り」さらに「担う」企業として、引き続き、高い水準にある受注済プロジェクトを着実に遂行し、業績の一層の向上に努めてまいります。
 国内では、ソリューション提案から運営まで一貫して関わるビジネスモデルを、更に積極的に展開してまいります。また、平成29年4月には事業本部の大括り化、プラント建設機能の集約・強化などを目的とした組織変更を実施しました。これにより、組織横断的なノウハウの共有化を進め、廃棄物処理プラント・水処理プラント等の環境・エネルギー分野や橋梁・沿岸構造物等のインフラ構築分野で着実に実績を積み上げ、収益基盤の強化、拡大に努めてまいります。
 海外では、これまで築いてきたグローバルエンジニアリング機能を最適化し、国内の事業部門との連携を一層緊密にすることにより、営業力とプロジェクト遂行力を強化して、事業規模の拡大と収益化を進めてまいります。


 JFE商事株式会社においては、JFEグループの中核商社としての機能に一層磨きをかけるとともに、独自の商社機能も発揮することにより、グループ全体の収益最大化に貢献してまいります。
 国内では、オリンピック・パラリンピックに向けて鋼材需要の拡大が予想されることから、JFE商事グループ各社の機能を結集させたサービスをお客様に提供することにより着実な需要の捕捉に努めます。また、将来を見据えて、JFEグループ全体の最適を目指した流通の再編・強化にも取り組んでまいります。
 海外では、JFEスチール株式会社との輸出戦略の同期化を一層深化させ販売数量の拡大を図るとともに、地域やお客様に密着した地産地消ビジネスの拡大にスピード感を持って取り組んでまいります。

 このように各事業における取り組みは着実に進めておりますが、特に鉄鋼事業を取り巻く経営環境は、平成28年秋以降、原料炭を中心とした原料価格が大きく変動するなど、第5次中期経営計画の想定に比べ変化の激しい状況が継続しております。当社はこのような事業環境に対処するため、中長期的な競争力に大きな影響を与える製鉄所の上工程を中心とした設備更新を推進し、今後も製造実力の向上に着実に取り組んでまいります。
製造基盤整備の継続的な実施によりさらなるコスト削減と安定供給体制を実現するとともに、新商品開発・プロセス開発による技術優位性の維持・向上等の施策に積極的に経営資源を投入することで、中長期的に安定的な収益を確保できる体制を確立いたします。これらの施策を着実に進めるために資産圧縮等により必要な資金を確保し、競争力強化と財務体質改善の両立に取り組んでまいります。
 当社は株主の皆様への利益還元を経営の最重要課題の一つと考えており、配当性向を25〜30%程度とすることを基本として、積極的に実施してまいります。

 当社は、当社およびJFEグループが持続的な成長および中長期的な企業価値の向上を実現し、企業理念を実践するために最良のコーポレートガバナンスを追求しそのさらなる充実を図ることを目的として、平成27年10月に「JFEホールディングス コーポレートガバナンス基本方針」を制定し、指名委員会・報酬委員会を設置するとともに、取締役会の審議の更なる深化のための工夫等、当該基本方針に沿った取り組みを進めております。
 当社はグループの経営課題を着実に実行していくために、株主利益に適うグループ経営および健全なコーポレートガバナンスの要として、その機能を充実していくとともに、さらに効率的な運営を図ってまいります。

 JFEグループは、社会との信頼関係の基本である、コンプライアンスの徹底、環境課題への取り組み、安全の確立について、グループをあげて真摯な努力を継続し、企業としての持続的成長を図り、株主の皆様をはじめすべてのステークホルダーにとっての企業価値最大化に努めてまいる所存でございます。
 株主の皆様におかれましては、JFEグループに対し、なお一層のご理解をいただくとともに、ご指導ご支援を賜りますようお願い申しあげます。