① 事業概況
当連結会計年度における当社グループの事業環境は、年の前半は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、世界規模で設備投資に慎重な姿勢がみられ、厳しい状況で推移しました。しかしながら、年の後半に入り、コロナ禍からいち早く回復した中国経済の影響により、日本を含むアジア市場を中心に受注環境に回復の兆しが見られました。さらに年度終盤にかけては、設備投資意欲が一層の高まりを見せ、事業環境は大幅に改善しました。
② 受注高の概況
当社グループの受注環境は、前述のように年度前半は厳しい状況が続きましたが、年の後半からは、アジア市場において中国を中心に自動化投資が活発化したことに加え、データ需要急増に伴う半導体大手による大規模投資の加速により急速に改善しました。また、前年まで過剰となっていたお客様における当社製品の在庫調整が進展したことも、受注の底上げに寄与しました。これらにより、通期の連結受注高は前期比38.8%増加の416億75百万円となりました。
③ 売上高の概況
日本を含むアジア市場における売上高は受注回復の影響により増加したものの、欧米地域では新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の回復の遅れから主要用途向けの売上高が総じて減少しました。その結果、連結売上高は、前期比1.2%減少の370億34百万円となりました。
④ 用途別売上高の概況
用途別の売上高の動向は、産業用ロボット向けは、中国を中心とした自動化設備投資の回復に加え、EV向けのバッテリー生産工程でも産業用ロボットの導入が進んだことによる需要拡大が貢献し、売上高は増加しました。
半導体製造装置向けは、第5世代通信(5G)の普及やIoTの進展などで設備投資意欲が旺盛だった影響から売上高は増加しました。
一方、フラットパネルディスプレイ製造装置向けは、前年と同様に設備投資案件が乏しく売上高は低水準となりました。また、工作機械向け、車載用途等も年の前半の受注低迷を受け、通期での売上高は減少しました。
⑤ 利益の概況
損益面につきましては、お客様、お取引先、社員及びその家族の新型コロナウイルス感染防止対策を最優先しながら、厳しい事業環境下でも利益を出せるより筋肉質な体質の構築と、次に訪れる拡大期の備えに傾注してまいりました。その結果、売上高は減少したものの、営業利益は8億65百万円(前期は営業損失1億95百万円)となりました。また、営業利益の増加により、親会社株主に帰属する当期純利益は6億62百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失10億95百万円)となりました。
⑥ 事業上の取り組みの概況
2020年度は、中期経営計画(2018年度~2020年度)の最終年度であり、財務目標は未達となるも、当該計画に掲げた各施策に取り組んでまいりました。
営業面におきましては、新型コロナウイルスの感染拡大により、対面での営業活動は難しくなったものの、オンラインでの営業力強化に取り組み、お客様ごとの課題解決をスピードアップすることで受注の獲得に取り組んでまいりました。また、感染対策を徹底した上で展示会への出展を実行した一方で、バーチャル展示会をホームページに常設し、リアルとバーチャルを組み合わせて、更なる受注の獲得と新市場の開拓に傾注してまいりました。
品質面におきましては、当社の品質の定義である『お客様の期待値を満足させること』を再確認した上で、製品品質・業務品質の向上に取り組んでまいりました。具体的な取り組み例としては、お客様の緊急依頼事項に全社一丸で対応するためのチームを組織し、これまでに増して短時間に最適な提案を行うことを可能とすることにより、お客様の満足度向上を図りました。また、新型コロナウイルスの感染拡大により、人の往来は制限されたものの、ITツールを活用し、当社グループの各生産拠点(日本、ドイツ、米国、韓国)の品質を高度に均質化するため、「世界共通品質」の維持・改善にも努めてまいりました。
研究開発面におきましては、新たな原理・理論の確立や技術の追求など基礎研究の拡充と深化を図り、波動歯車装置(ハーモニックドライブ®)の進化を図るとともに、次世代のモーションコントロールに必要となり得る要素開発と製品化に取り組んでまいりました。また、日本とドイツを拠点とする研究開発部門間の連携を強化し、開発テーマの共同推進や研究資源の相互活用などにより、研究開発活動の効率化と研究レベルの向上にも取り組んでまいりました。
さらに市場のニーズを製品に反映する応用開発では、精密遊星減速機HPGRシリーズに2段型を追加し、ラインアップの拡充を進めてまいりました。また、2015年に製品化された1段型減速タイプ(減速比3~10)に加え、2段型減速タイプ(減速比15~50)を追加することで減速比3~50までの幅広い減速比の製品群を用意し、市場の開拓を進めてまいりました。
生産面におきましては、「安全と安心」をキーワードに従来から継続的に取り組んでいる安全衛生活動に加え、新型コロナウイルスの感染対策を確実に実施し、お客様への製品供給責任を果たしてまいりました。また、急激な環境の変化に追従できる生産体制を構築するため、生産性の向上、製品リードタイムの短縮を継続的に進めてまいりました。生産性の向上にあたっては、高度な熟練作業を要する工程は人材育成と技能伝承を加速する一方で、それ以外の工程は積極的な自動化投資を実施することによって省人化を推進しました。また、製品リードタイムの短縮にあたっては、新たな生産管理システムを導入し、これまで蓄積してきた多品種・少量生産のノウハウを生かしながら、需要変動に柔軟に対応可能な生産体制の構築を目指し取り組んでまいりました。
⑦ 新型コロナウイルス感染拡大に関して
当社グループは、新型コロナウイルス感染拡大防止対策として、2020年2月3日に当社内に対策本部を設置し、社員、お客様、お取引先など、ステークホルダー各位の安全と安心を最優先に感染防止に努めてまいりました。現在に至るまで、新型コロナウイルス感染等による重大な健康被害、工場の操業、サプライチェーンへの影響は発生しておりません。引き続き、感染防止策の徹底に傾注してまいります。