世界では人口増加や地球温暖化、高齢化等の問題が、ますます大きな社会課題となっています。また情報化社会の進展により、人々の消費行動の多様化、ビジネスモデルの変化も起こっています。モビリティ領域も同様に、IoTやAIの進化、そして異業種からの参入により、電動化や自動運転、コネクティッド等の開発が加速し、当社を取り巻く環境は大変革期を迎えています。クルマに求められる価値も大きく変わり、IT技術を活用したソフト領域における価値がますます高まり、変化のスピードはより一層加速しています。
このような大変革期においても持続的に成長し続けるために、当社は
2017年10月に、2030年の目指す姿を描いた、2030年長期方針を策定しました。従来注力している「環境」、「安心」の提供価値を最大化することに加え、社会から「共感」していただける新たな価値の提供を通じて、笑顔広がる社会づくりに貢献していきたいと考えています。また、この長期方針を実現するための道筋として、2025年長期構想を策定しています。「電動化」、「先進安全・自動運転」、「コネクティッド」、「非車載事業(FA・農業)」を注力4分野として取り組みを加速し、2025年度の目標である、売上収益7兆円、営業利益率10%の達成を目指します。
地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい。
2030年の目指す姿
地球にやさしく、すべての人が安心と幸せを感じられるモビリティ社会の実現に向け、新たな価値を創造し続ける企業
環境
未来のために、もっと豊かな環境を。
安心
どこまでも安全に、いつまでも心地よく、すべての人へ。
共感
モビリティ社会に新たな価値を。人に笑顔を。
事業活動を通じて社会課題を解決し、持続的な社会の実現に貢献していくサステナビリティ経営は、企業理念の実践であり、当社の経営の根幹です。2030年長期方針の実現に向けて、すべてのステークホルダーに共感され、社会に支持される企業として存続し続けるために、サステナビリティ経営のさらなる強化を図っています。その一環として、当社の優先取り組み課題と、関連する国連の持続可能な開発目標(SDGs)を選定しました。今後もサステナビリティ経営の実践を通じて、社会の持続的成長と企業価値向上を目指していきます。
SDGsは、世界が抱える問題を解決し、持続可能な社会を作るため、2030年までに政府・企業を含めたあらゆる立場の人が解決すべき目標として、2015年9月に国連が採択した、17の国際目標です。持続可能な社会の実現に向けて、事業活動を通じてこのSDGsの実現に貢献していきます。
当社は、地球にやさしく、より快適に移動できる電動車両システムを提供するために、長年、電動化技術の開発を行っています。その結果、ハイブリッド車に欠かせない主要製品の高性能化や小型化、省燃費を実現し、世界中で生産実績を積み上げてきました。今後は、当社の幅広い事業領域を活かし、車内のあらゆるシステムや製品をつなぎ、クルマの中のエネルギーを効率よくマネジメントすることで、さらなる燃費性能の向上や省電力化に貢献していきます。
1 トヨタ自動車の電子部品事業を統合
トヨタ自動車とデンソーは、両社の主要な電子部品事業をデンソーに統合することを正式に決定し、事業譲渡契約を締結しました。開発・生産事業をあわせて、2020年4月に実施する予定です。様々な自動車部品の電子制御化が進むなか、電子部品事業の重要度は今後もますます高まっていきます。スピーディかつ競争力のある開発・生産体制の構築とリソーセスの最大活用を図り、グループ全体の競争力向上を目指します。
2 駆動モジュール開発・販売の合弁会社を設立(アイシン精機、デンソー)
アイシン精機とデンソーは、電動車両の駆動に不可欠な主要コンポーネントをパッケージ化した、駆動モジュールの開発・販売を行う合弁会社、BluE Nexus(ブルーイー ネクサス)を2019年4月に設立しました。ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車等、幅広い電動化ニーズに対応する駆動モジュールの品揃えや、求められる性能、地域事情等に合わせた適合までを含めて対応できる体制を構築することで、世界各地域への幅広い普及を目指します。
当社は、交通事故のない、誰もが安心・安全に移動できるモビリティ社会を目指し、品質と信頼性の高い安全技術の開発に取り組んできました。これまで培ってきたセンシング技術に加え、今後は、AI・情報技術に磨きをかけることで、自動運転技術の発展にさらに貢献していきます。創業以来変わらない品質へのこだわりをつらぬき、モビリティ社会の未来に確かな安心を届けます。
1 統合制御ソフトウェア開発の合弁会社を設立(アイシン精機、アドヴィックス、ジェイテクト、デンソー)
自動運転の実現には、クルマの「走る・曲がる・止まる」に関わるセンサやステアリング、ブレーキを、より高度に連携させるための車両統合制御システムが必要になります。そのソフトウェアの高度化と開発の加速に向け、4社が持つ自動運転・車両運動制御等の技術知見を結集した合弁会社、J-QuAD DYNAMICS(ジェイクワッド ダイナミクス)を2019年4月に設立しました。
2 新車に加え、既販車の安全性向上に貢献する後付け装着可能製品を開発
・後付けドライバーステータスモニタ
車室内のカメラで撮影したドライバーの顔の画像から、脇見、眠気、居眠り、不適切な運転姿勢等の運転状態を推定し、音声で警告します。
・後付けペダル踏み間違い加速抑制装置(トヨタ自動車と共同開発)
駐車・停車状態からの発進時に、障害物を検知すると、表示機とブザーでドライバーに注意喚起。それでもドライバーがブレーキと間違えて強くアクセルを踏み込んだ場合には、加速を抑制し、衝突被害の軽減に貢献します。
クルマの「所有」から「利用・サービス化」へのシフトという大改革が起こるなか、MaaS(Mobility as a Service:ヒトやモノの移動をサービスとして提供するモビリティサービス)事業に取り組んでいます。当社は、クルマに乗る人だけでなく、クルマを持たない人にも安心・安全で便利な移動手段の提供を目指し、新たなモビリティ社会の実現に貢献していきます。
1 CES2019でモビリティと様々なモノがつながるコネクティッド技術を紹介
アメリカで開催された世界最大級の家電見本市CES(Consumer Electronics Show)で、車両とクラウドを連携させるための最新のIoT技術であるMobility IoT Core等を展示しました。また、これらの技術を活用した、将来のモビリティサービスを体感できるデモを行いました。
MaaSの実現に貢献するため当社が開発するコネクティッド技術
・ 多様な車両情報を一元管理、共有するためのクラウド技術「デジタルツイン」
・ 車両とクラウドを連携させるための車載エッジコンピュータ「Mobility IoT Core」
・ 車両のソフトウェアやデータの改ざん防止を目的とした「ブロックチェーン」
100年に一度といわれる大変革期を自ら切り開き、モビリティ社会に新たな価値を提供するため、従来から取締役数の削減や執行権限の委譲、組織変更を行い「スピード」と「現場の活力」を進化させてきました。今回、さらなる経営のスピードアップを狙い、役員体制の変更を実施しました。
2019年2月18日開催の取締役会において、4月1日付の役員体制の変更について決議しました。経営の意思決定と執行のスピードアップを狙い、専務役員以上の会長、社長、副社長、取締役、専務役員及び監査役を役員とし、役員数を55名から28名に削減しました。
専務役員は部門のトップとして執行をリードするとともに、経営の担い手として全社の経営課題の解決にあたってきました。そうした役割を明確化するため、名称を「経営役員」に変更しました。なお、常務役員は、現場のトップとして迅速に意思決定を行うとともに、担当分野における執行責任及び権限を行使してきました。その役割を明確化するため、名称を「執行職」に変更しました。