第10期定時株主総会招集ご通知 証券コード : 7180
当社グループは、銀行持株会社である当社、並びに株式会社肥後銀行(以下、「肥後銀行」といいます。)、株式会社鹿児島銀行(以下、「鹿児島銀行」といいます。)、九州FG証券株式会社(以下、「九州FG証券」といいます。)を含む連結子会社22社で構成され、銀行業務を中心にリース業務、クレジットカード業務、信託業務、金融商品取引業務等の金融サービスに係る業務のほか、DXソリューション事業、ECモール事業等の地域価値共創事業を行っております。
当年度のわが国経済は、日本銀行の17年ぶりの利上げ実施や、公示地価上昇率や春闘賃上げ率はバブル期以来の伸びなど、インフレ経済への回帰が見られました。
こうした経済環境のもと、日米金利差等を背景とした円安を追い風に輸出関連企業の業績が伸び、7月に日経平均株価が史上最高値となる42,000円台を記録しました。一方、8月には米ハイテク株の急落や円高の進行により、日経平均株価は過去最大の下落幅を記録しましたが、米FRBの利下げなどで次第に落着きを取り戻しました。年明け以降は、2025年4月から本格化するトランプ政権の貿易政策が世界景気を下押しさせるとの懸念が膨らみ、3年ぶりに年度末の終値が前年度末を下回りました。為替相場は、好調な米経済指標と日銀の緩和政策継続から7月に1ドル161円台まで円安が進行しました。その後、一旦は円高傾向となったものの、堅調に推移する米経済とトランプ大統領への期待から年末にかけて再び円安基調となりました。年明け以降は、米国の景気後退懸念と日銀の利上げ観測により円高が進行しました。
地元経済におきましては、サービス消費を中心とした個人消費や外国人観光客の増加などによるインバウンド需要が回復しました。また、企業においては、原材料やエネルギー価格の上昇でコスト高となる一方、価格転嫁による売り上げ増加もあり、全体としては緩やかに回復しました。
当社は、2015年10月1日、肥後銀行と鹿児島銀行(以下、総称して「両行」といいます。)との経営統合に伴い、共同株式移転により設立いたしました。両行の地元を中心とした九州での存在感をさらに発揮できる盤石な経営基盤を確立することで、広域化した新たな地域密着型ビジネスモデルを創造し、地元との信頼関係をさらに強化するとともに経営の効率化を促進し、企業価値を高め、地域価値共創グループとして活力あふれる地域社会の実現に積極的に貢献してまいります。
【第4次グループ中期経営計画】
当社グループは、2015年10月の設立以来、「協働」ステージ、「融合」ステージと歩み、2021年4月には、総合金融グループから地域価値共創グループに進化する10年間の計画を掲げ、これを共創ステージと定めました。また、2024年4月からは、共創ステージの第1章「改革」に続く第2章として、第4次グループ中期経営計画「躍進」(計画期間:2024年4月1日〜2027年3月31日)をスタートさせ、地域価値共創グループへの進化に向けて取り組んでおります。
1.位置づけ
2.概要
3.主な財務指標
第4次グループ中期経営計画の初年度となる2024年度において、当社グループが実施した主な施策は次のとおりです。
未来を創る地域価値提供の取り組み加速
<新たな事業への挑戦・事業領域の拡充>
従来の金融の枠組みを超えて地域産業振興にかかる課題解決に主体的に取り組むため、2023年4月に地域商社事業を営む当社子会社「株式会社九州みらいCreation」を設立し、開業2周年を迎えました。ECモール「よかもーる」では南九州の魅力的な逸品を幅広く取り扱い、取扱商材は2025年3月末で約700品、会員数は約32,000名と拡大しております。
2021年12月より取扱開始したスマートフォンアプリ「Hugmeg(ハグメグ)」は、自治体や地域企業との価値共創を実現する「地域のデジタルプラットフォーム」を目指し、金融機能に留まらず地域課題の解決や生活の質向上に繋がる機能を随時拡充しております。2025年3月末でのダウンロード数は約128,000件と多くのお客様にご利用いただいております。
また、肥後銀行では、フードロスや在庫ロスなど様々なロスの解消を目指すため、実証実験を経て、2025年2月より「地域のロス解消事業」を開始いたしました。ロスを地域で消費する新たなプラットフォーム「かせする」を構築し、2025年3月末時点で約11,000ユーザー、約90事業者にご参加いただいております。
<地域・お客様起点のソリューション提供>
多様化・高度化する事業ニーズに対して、グループ一体となり様々な課題解決支援を行っております。
肥後銀行では、株式会社日本M&Aセンターホールディングス、玉山ベンチャーキャピタルと3社共同出資により、M&A事業会社「九州M&Aアドバイザーズ株式会社」を設立し、2025年1月には福岡市のソフトウェア受託開発事業会社「マイクロコート株式会社」と東京都の東証グロース市場上場「株式会社BlueMeme」の資本業務提携を支援いたしました。
鹿児島銀行では、2023年11月に設立いたしました「株式会社かぎん共創投資」において、九州地方で餃子の製造・販売を行う「ぎょうざの丸岡グループ」と資本業務提携を行いました。
また、九州FG証券では、株式上場を目指すお客様を支援する「IPO支援業務」の取り組みも強化しており、2024年5月に東京証券取引所「TOKYO PRO Market」のJ-Adviser資格、また2024年8月に福岡証券取引所「Fukuoka PRO Market」のF-Adviserの資格を取得いたしました。
地域経済の成長に向けたコア事業の強化
<地域産業の成長支援強化>
半導体受託生産世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)の日本初の生産拠点であるJASM熊本第1工場は2024年12月より量産を開始しました。また、第2工場も2025年内に建設着工を予定しており、2027年度末までの稼働開始を目指しています。
肥後銀行では、「電子デバイス関連産業プロジェクトチーム」を中心に、サプライチェーン参入機会の創出、台湾企業の進出支援や取引拡大支援、またビジネスマッチング提案力強化などに積極的に取り組んでいます。半導体関連産業への融資実績は2022年4月から2025年3月までの累計で約2,631億円、サプライチェーン参入支援企業数は2025年3月時点で11社となり、引き続き新生シリコンアイランド九州の実現に向け取り組んでまいります。
また、九州・沖縄・山口の地銀13行による「九州・沖縄地銀連携協定(愛称:Q-BASS)」は発足後1年が経過し、肥後銀行、鹿児島銀行も様々な活動を実施しております。2024年12月には台湾で「半導体セミナー」「日台半導体企業の個別商談会」「日台企業交流会」を他地銀とともに開催し、個別商談会では日本側から30社、台湾側から33社が参加し、商談件数は140件となりました。
<ライフプランコンサルティングの深化>
NISA(少額投資非課税制度)の抜本的な拡充・恒久化、また物価高等による資産形成ニーズが高まる中、当社グループは肥後銀行、鹿児島銀行と九州FG証券が適切に連携し、お客様の資産形成支援に積極的に取り組んでおります。「株式会社九州みらいCreation」と連携したキャンペーンの展開、お客様の資産運用に役立つセミナーや資産運用フェアなどを実施しており、九州FG証券の預り資産残高は2025年3月時点で約3,800億円と1年間で約300億円増加いたしました。
また、高齢化社会を踏まえた相続・資産承継ニーズに対応するため、九州の地方銀行グループとしては初の取り組みとなる銀行本体での信託業務を2019年4月より開始しており、信託契約件数は年々増加しております。信託銀行との連携などによる信託業務の専門人材育成にも注力しております。
引き続きお客様の属性・ライフイベント等に応じたワンストップコンサルティング実践を通し、お客様の未来の資産の創造・承継に貢献してまいります。
持続的成長に向けた強固な経営基盤の確立
<価値共創を実現する人づくり>
地域価値共創グループへの進化に向け、金融に特化した基本的な育成はもとより、幅広い分野の専門性を高める研修や、グループ横断的な人材の配置、外部企業への派遣等を実施しております。
特徴的な施策としては、グループ全体を対象に地域の課題解決に繋がる新規事業立案に向けた研修プログラムを「学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学」と連携して実施しております。また、デジタル分野においても、データサイエンティストを育成するために、プログラミングについてチームで協力しながら実践的に学習する「データコンペティション研修」を実施いたしました。
物価上昇等の経済環境への対応、従業員のエンゲージメント向上、優秀な人材の確保等を目的として、ベースアップを含む5%以上の賃金の引き上げを3年連続で実施しております。なお、初任給の引き上げについても3年連続で実施しております。
LGBTQを含む様々なマイノリティの方々の人権を尊重し、多様な家族のあり方に対応できる企業風土の醸成に努めております。その一環として、2025年4月より「パートナーシップ制度」を導入し、従業員の同性パートナーに法律婚による配偶者と同等の福利厚生や規程を一部適用可能としました。
KFGグループの従業員約5,500名を対象に実施しているエンゲージメント調査結果は、業界平均対比で良好なスコアとなっており、スコア良好店に関する情報の発信、スコア低位店への臨店支援、マネジメント層全員を対象とした研修の実施等を継続的に行っております。さらに、入社5年以内の若年層に対しては「個」に寄り添うことを目的に、結果を踏まえた個別フォローを実施しております。
<GXにかかる先進的取り組み>
当社グループは、気候変動や自然資本を含む環境問題への対応を重要課題として認識しております。地域社会の脱炭素化を積極的に推進するため、2023年3月に「KFGカーボンニュートラル宣言」を公表いたしました。また、2022年度よりファイナンスドエミッションの算定開示を始めました。これにより、投融資先に対する脱炭素化に向けた取り組みを進めております。その一環として、肥後銀行において開発したCO2排出量算定システム「Zero-Carbon-System(通称:炭削くん)」を、お取引先をはじめとした地域企業への導入を進めております。2025年3月末の「炭削くん」の導入実績は4,128件と脱炭素経営の支援および地域への浸透が加速しております。
さらに、当社グループは、自然関連の財務情報を開示する枠組みの開発・提供を目指すイニシアチブ「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラム」に参画し、事業を通じた自然資本・生物多様性への依存と影響、リスクと機会を認識し、2024年連結会計年度よりTNFDの提言に沿った透明性のある開示を行ってまいります。
<DXにかかる先進的な取り組み>
地域におけるキャッシュレスへの取り組みとして、熊本では「くまモンのICカード」、鹿児島ではキャッシュレス決済アプリ「Payどん」の機能拡大を継続的に行っております。
肥後銀行では、非対面チャネルの機能拡充への取組みとして、2024年3月の「肥後銀行アプリ」のサービス開始に続き、2025年5月末には「くまモンのICカード」の機能を承継しつつ、より広範な決済に対応するスマートフォンアプリ「くまモン!Pay」をリリース予定です。バーチャルプリペイドカードによるタッチ決済、QRコード決済・デジタル商品券等の機能サービスを予定しております。
鹿児島銀行では、鹿児島県内の各自治体や商店街、地域企業などと連携して「Payどん」によるデジタル地域振興券の発行事業を拡大しております。引き続き自治体と連携した子育て支援給付事業など、地域経済活性化に取り組んでまいります。また、2025年7月には、個人顧客向けに口座開設など実店舗同様の手続を可能とする新「かぎんアプリ」の提供を予定しております。
さらに、営業店窓口におけるお客様の書類記入の負担軽減や、手続き時間、待ち時間短縮への取り組みとして、肥後銀行及び鹿児島銀行で「店頭タブレット」を導入しております。また、住宅ローンや事業性のお借入れにおいて、紙の契約書への記入や押印に代わりPDFファイルへの電子署名により、契約手続きが完了する「電子契約サービス」を導入しております。お客様のパソコンやスマートフォンでお手続きが可能で営業時間外でも契約内容のご確認や電子署名を行うことができます。ペーパーレス化を進めることにより、生産性が大幅に向上しております。
加えて、業務効率化及び生産性向上を目的に生成AIの導入も行っており、具体的には文章校正・添削、議事録作成、ソースコード作成、銀行業務にかかる事務手続きの問い合わせ等へ活用しております。今後は生産性の向上を図るとともに、適正なリスク対策を講じながら有効活用してまいります。
KFGビジネスモデルの変革
<統合と独自性>
第4次グループ中期経営計画では、グループとして統合する分野を明確化しております。
DX分野では、基幹系システムの統合に向け、プロジェクトチームを中心に議論を開始しており、「地域・お客様、ステークホルダーへの提供価値の向上」の観点から、次世代システムのあるべき姿を検討のうえ、2025年度中に具体案を策定することを予定しております。また、ガバナンス、人的資本の分野においても、機能集約や体制・枠組み等の統一を図ることで、効率性と専門性を追求してまいります。