技術開発の状況

 当社グループは、グローバルでの厳しい競争に勝ち残っていくため、新しい技術トレンドを積極的にビジネスに取り入れる「最先端技術・イノベーション推進」に取り組むとともに、システム開発の高速化、高品質化やクラウド化・デジタル化を見据えたクラウド基盤の構築等、「生産技術革新」に関する研究開発に取り組んでいます。最先端技術に関する知見やノウハウをグローバルで集約・活用しイノベーションを推進していくとともに、次世代の生産技術を磨いていきます。
 更に、日本電信電話株式会社との研究開発連携により、基盤的研究開発テーマについてはその成果を活用し、当社のリソースを応用的研究開発テーマに重点配分しています。
 当連結会計年度の研究開発費は24,937百万円です。研究開発の成果は、公共・社会基盤、金融、法人、海外セグメントに共通して適用可能であるため、セグメント別に分計はしていません。


<グローバル6カ国に「イノベーションセンタ」を設立>

 当社は、世界トップクラスの先進技術活用力の獲得をめざし、2022年8月に世界6カ国にイノベーションセンタを設立しました。本センタは、技術戦略を策定する戦略グループと、日本・米国・イタリア・ドイツ・中国・インドのローカルセンタで構成され、各拠点に技術戦略に基づいた技術テーマを設定し、先進的なお客様と共創R&Dを進めるほか、大学やスタートアップとの連携により、現地で先行する技術活用事例をいち早く収集し次の技術戦略に活かします。設立に当たり、今まで世界中に点在していたリサーチャー、コンサルタント、エンジニアを中心としたエキスパート100名を本センタに集結しました。
 本センタは、各国で先進的なお客様とのPoC(注1)を実施しており、今年度イタリアのメディア会社とインダストリアルデジタルツイン領域におけるイノベーションパートナーシップ契約を締結したほか、メタバース領域や量子コンピューティング領域において、それぞれ重工業・自動車製造業等の大型の先進的なお客様との共同プロジェクトを受注しています。
 今後は、2025年度末までに体制を300名に増強の上、先進的なお客様との中長期R&Dパートナーシップを50件以上創発することをめざします。2023年度は、インダストリアルデジタルツイン領域や量子コンピューティング領域、及び当社がEverest Group PEAK Matrixにてお客様をサポートする世界のリーディングITサービスプロバイダーであると評価(注2)されたブロックチェーン領域を含めた3領域を、中期経営計画の戦略4(先進技術活用力とシステム開発技術力の強化)で策定しているEmerging領域の次の段階であるGrowth領域として注力設定し、お客様のビジネスを革新するための実ビジネス拡大を加速します。


<イジングマシン(注3)を用いた組合せ最適化技術を活用>

 当社と株式会社香味醗酵(以下、香味醗酵)、及び日本電信電話株式会社(以下、NTT)の3社は共同で、数千種類の匂い成分から最適な組み合わせを計算し、少数の匂い成分で様々な匂い・香りを瞬時に再構成する手法の実機検証を2022年11月から2023年3月に実施しました。
 本検証は、香味発酵の持つ匂いデータベースから最適な組み合わせを算出する「匂い分子の組み合わせ最適化」について、NTTの次世代光イジングマシンLASOLV及び当社の分析技術(注4)を用いた最適化計算を適用し、従来手法との比較評価を実施しました。従来の手法では、匂いの組み合わせ計算で対象とする匂い成分は1,000種類が限界でしたが、8,000種類以上に拡張可能であることが確認できました。また、最適化計算精度の向上や匂いのABテスト(注5)工程支援にも、本検証の手法が有効であるとの結果を得ました。
 前述の成果を得たことから、当社と香味醗酵は、2023年4月よりパートナーシップ契約を締結しており、ビジネス連携も含めた検討を開始しています。今後両社は、香料開発の効率化・高度化だけでなく、映像産業やメタバースへの匂い情報の実装などを含めた新たなビジネスの開拓に取り組み、2025年までに10件以上の匂いに関するビジネス創出をめざします。また、当社は、香料分野に限らず様々な分野で組合せ最適化問題に対する新たな手法の適用によるビジネスイノベーションを推進します。グローバルに量子コンピュータや次世代アーキテクチャー・ラボのサービス展開を行い、今後3年間で100件以上の新手法による業務改善の実現をめざします。

(注1)PoC(Proof of Concept)
「概念実証」のことで、新たな概念やアイディアの実現可能性を示すための簡易な試行のことです。

(注2)Everest Group PEAK Matrixにてお客様をサポートする世界のリーディングITサービスプロバイダーであると評価
当社は、2021年12月に発行された米国社の調査レポート「Enterprise Blockchain Services PEAK Matrix Assessment 2022」において、「リーダー」評価を獲得しました。

(注3)イジングマシン
次世代光イジングマシンLASOLVは、NTTが研究開発に取り組む、新しい原理に基づいた計算装置です。LASOLVは常温で利用可能で、複数のパルス光の位相の組合せ、“光の物理現象”でイジングモデルを模擬し、解の候補が最適に近いほど位相の組合せの変化が少なくなる(=安定する)といった相互作用を作り出すことで解を導出します。LASOLVは組合せ最適化問題を極めて高速に解くことが可能であるため、これまでは解くことができなかった課題の解決が期待されています。

(注4)当社の分析技術
当社は、業界を問わず様々な実ビジネスの問題を、量子コンピュータや「組合せ最適化」の効率的な計算を行うイジングマシンを適切に活用し、業務要件に基づいた検証・評価を行うサービスを提供しています。

(注5)ABテスト
2つのパターンを比較し、どちらの方が良いかを決定するテスト手法のことです。

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2023/06/20 12:00:00 +0900
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