[経営環境の見通し]
社会を取り巻く環境は日々大きく変化しており、社会課題の解決・地球環境への貢献と、新しい価値創造をはじめとした経済価値向上の両立等、企業経営に求められる要素は多様化しております。テクノロジーの進化を背景に様々なモノ・ヒトがつながることで、企業活動から人々の消費・生活スタイルまであらゆる社会トレンドが変化しており、デジタルトランスフォーメーションに代表されるITサービスの重要性はますます高まっています。
一方、世界的な金融引締め等を背景として海外景気の下振れが懸念され、この下振れが国内の景気を下押しするリスクとなっています。また、資源価格・物価の上昇、供給面での制約や金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。
そのような環境においても、お客様企業におけるデジタルトランスフォーメーションの需要は増加しており、需要環境については堅調に推移していくものとみられていますが、新規プレイヤーの参入等、IT市場の競争環境は依然として激化しており、当社がお客様へ貢献し続けるために、更なるグローバルレベルでの事業競争力強化が必要と考えております。
[対処すべき課題]
従前から取り組んでいる海外事業の収益性改善については、一定の成果が出ているものの、国内事業に比べると未だ収益性が低く、海外事業の更なる成長に向けて、引き続き収益性改善とデジタルシフトの推進に取り組んでいく必要があると認識しております。
デジタルビジネスの拡大に向けて、コンサルティングをはじめとする上流の強化、自動化やアセット活用、ショアリングによる生産性向上・品質強化などを推進していく必要があると考えております。
一方で、経営環境の見通しにもあるとおり、社会課題の解決・地球環境の貢献に向けたデジタルトランスフォーメーションは加速しており、更なる競争力の強化に向けた取り組みが必要と認識しております。
また、更なる事業成長に向け、M&Aやデータセンタ等への積極投資を進める上で、投資収益性や財務健全性への影響を考慮した、適切な投資管理の必要性を認識しております。
加えて、世界的に人材獲得競争が激化していることを踏まえ、多様な人財が長期に活躍できる環境・文化へ変革していくとともに、真のグローバル企業へと成長していくことが課題であると認識しております。
[課題への対処]
海外事業の質を伴った成長
海外事業の収益性改善に向け、海外事業統合前より事業構造改革を進めてまいりました。その成果として海外EBITA率※は2019年度の2.5%から2022年度に8.0%まで改善し、質を伴った成長を着実に実現してきております。
2023年度は海外事業再編を本格的に推進し、①地域単位で一元的にオファリング提供できる統合体制への移行、②グローバルレベルでのサービス提供力の強化、③複数会社に存在するコーポレート機能の全体最適化等、海外事業構造の転換によるシナジー創出を加速し、中期経営計画の経営目標である海外EBITA率※10%達成をめざします。
中期経営計画の徹底した実行
上記課題への対応に向け、中期経営計画の5つの戦略を徹底して実行し、デジタル関連ケイパビリティの獲得等、競争優位性強化を進めてまいります。
事業成長に向けた投資
中期経営計画の5つの戦略を支える仕組みとして、2023年度において320億円規模の戦略投資を実施し、投資と成長の好循環の確立と、Global 3rd Stageに向けた事業成長を実現していきます。
中期経営計画の目標達成に向けたデジタル領域を中心とした注力技術・Industryの強化、中長期的な成長に向けたIOWN等の先進技術活用やサステナビリティビジネスの推進等の次世代ビジネスの創出に取り組んでまいります。
北米等主要マーケットにおけるシェア拡大やデジタル関連ケイパビリティ獲得に向けたM&Aについて2022年度は約800億円の投資を実施しており、2023年度においても同規模以上の投資を実施予定です。
積極的なM&Aによりデジタルビジネス提供力の強化、コンサルティング力の強化、重点インダストリにおける顧客基盤の拡充を進めてまいります。
また、データセンタ事業を将来の利益獲得源として重要な事業領域と認識しており、積極投資を進め
Hyper Scalerとのパートナーシップ強化と、エンタープライズ向けサービスの事業展開をめざします。
これらの積極投資により中期経営計画の経営目標の達成に加え、中長期的な競争優位性の維持・強化に努めてまいります。
一方で、M&Aやデータセンタ投資等でレバレッジを効かせた戦略投資を実施することにより投資収益性や財務健全性への影響が発生しますが、回収期間の短期化等の財務戦略、及び、収益性の向上等、多面的な対応を図ってまいります。
人財獲得への取り組み
人財の獲得については、国内では新卒採用の拡充に加えて経験者採用の強化に向け、採用体制の強化を進めており、2022年度においても成果が出ております。海外においては採用の強化に加え、前述のM&A等による人財確保を進めております。
また、獲得した人財の多様な力を新たな競争力につなげていくことが必要であると考えており、人財の活躍に向けた制度の充実と、グローバル共通のトレーニングメニューの確立や人材交流などを中長期視点で進めてまいります。
サステナビリティ経営
2022年7月に設置したサステナビリティ経営推進部を中心に、中期経営計画で掲げている、「Realizing a Sustainable Future」のスローガンのもと、3つの軸と9つのマテリアリティに基づき、当社の携わるビジネスにサステナビリティの考え方を内包する形、すなわち「Business “with”
Sustainability」を体現する活動を促進していきます。
当社グループの企業理念「情報技術で、新しい『しくみ』や『価値』を創造し、より豊かで調和のとれた社会の実現に貢献する」は、大きな変化を迎える時代においても、当社の存在意義そのものです。
今後もこの企業理念のもと、当社は未来に向けた価値をつくり、様々な人々をテクノロジーでつなぐことでお客様とともにサステナブルな社会を実現していきます。
※ M&A・構造改革等の一時的なコストを除く