事業報告

会社の対処すべき課題

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの成功

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、英国ロンドンに拠点を置く、金融行為規制機構(TheFinancial Conduct Authority)に登録されたソフトバンクグループ㈱の100%子会社SBInvestment Advisers (UK) Limited (以下「SBIA」)が運営を行っています。SBIAはソフトバンク・ビジョン・ファンドを成功に導き、ファンドの利益を最大化することを目指しています。

a ファンドの意義

SBIAは、日米のアドバイザリー会社の助言を受けながら、ファンドの投資先選定や各種投資意思決定プロセスの管理を行っており、ファンドの投資の状況に応じて、管理報酬および成功報酬を受け取ります。

また、ソフトバンクグループ㈱は、リミテッド・パートナーとして同ファンドに出資を行います。同ファンドへの参加は、他のリミテッド・パートナーの拠出金額と合わせた大規模かつ長期的な投資への参画だけでなく、自らの資金のみで行う場合と比較して、財務的負担および信用性への影響を抑制した持続的な投資活動が可能となります。

b 運用体制

SBIAは、ソフトバンクグループ㈱の取締役であるラジーブ・ミスラがCEOを務めるほか、投資銀行やベンチャー・キャピタル、テクノロジー企業などそれぞれ多様な経歴を持つ約10名のマネージング・パートナーが中心となって投資先候補の選定や評価、投資先のモニタリングを行っています。SBIAに設置された投資委員会がソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資の意思決定を行い、ラジーブ・ミスラとソフトバンクグループ㈱の代表取締役会長兼社長の孫正義が同委員会に参画しています。SBIAおよびアドバイザリー会社の従業員数は、2018年3月31日現在、159名に達しており、ファンドの投資規模の拡大に合わせ、組織の拡充を図っています。

c 投資アプローチ

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、上場・非上場や保有株式割合の多寡を問わず、新興テクノロジー企業から成長のために大規模な資金を必要とする数十億米ドル規模の企業価値の大企業まで、投資を行っていきます。917億米ドル(2018年3月31日現在)という巨額の出資コミットメントを保有することにより、企業価値の高い非上場企業への投資を複数行うことが可能であるほか、ファンドの存続期間が長期に渡るため、中長期的な投資リターンを追求することが可能です。

d 投資先価値の最大化の追求

SBIAは、投資先を慎重に選定することに加え、投資後も様々な支援を行い投資先の成長を促すことにより、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先価値の最大化を追求します。SBIAは、このような投資活動の中で、情報・テクノロジー分野における当社グループの知見を活用することが可能です。

健全な財務運営および財務基盤の継続的な改善

当社グループは、通信事業のキャッシュ・フローに依拠した財務運営から脱却し、より純粋持株会社としての機能を強めるとともに、ソフトバンク・ビジョン・ファンドへの参画を通じた戦略的投資を加速しています。このような展開を持続的に支えるために、当社グループはこれまで以上に安定した財務運営が求められます。同ファンドへの出資コミットメントの履行のための資金調達は、保有有価証券の活用ならびに売却などにより行う予定です。これらの資金調達にあたっては、既存のステークホルダーに配慮し、国内通信事業についてはネットレバレッジ・レシオ(注1)を、その他の事業については負債カバー水準(注2)を主な指標として、それぞれ一定の水準以下に維持することを心掛け、健全な財務運営および財務基盤の継続的な改善に取り組んでいきます。

(注)

  • ネットレバレッジ・レシオ=純有利子負債÷調整後EBITDA。純有利子負債=有利子負債-手元流動性
    手元流動性=現金及び現金同等物+流動資産に含まれる短期投資
    なお、有利子負債は、アリババ株式の株式先渡売買契約に係る金融負債、ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンドの有利子負債、および㈱ジャパンネット銀行の銀行業の預金を控除しています。また、手元流動性は、ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンドならびに㈱ジャパンネット銀行の手元流動性を控除しています。
  • 負債カバー水準=純有利子負債÷保有株式価値

今後の成長分野でのアームのシェア拡大

プロセッサーの設計を手がけるアームのテクノロジーは、省電力性に優れており、現在、スマートフォン用メインチップの95%以上に採用されています。アームの製品・サービスが属する世界の半導体市場は、堅調な成長が見込まれており、アームは、研究開発にさらに積極的に取り組むことで、スマートフォン分野での圧倒的なシェアを維持するとともに、ネットワーク・インフラ、サーバー、車載機器、IoT、AIなどの成長余地が大きいとみられる分野でもシェアを拡大させていきます。

スプリントの着実な改善

米国の移動通信市場は成熟期を迎えているものの、同業他社のデータ無制限プラン導入後は顧客獲得競争が激化しています。こうした状況下、スプリントは、豊富な周波数を最大限に活用してネットワーク品質および顧客価値の向上を推し進め、ポストペイドおよびプリペイド携帯電話の契約数の増加とARPUの安定化による売上高の拡大を図っています。2018年度からは、他事業者との差別化戦略を推進するため、通信設備への投資額(現金支出ベース)を大幅に増やし、ネットワーク品質をさらに改善させる計画です。そのほか、事業運営の効率性を向上させることで、コスト削減にも継続的に取り組んでいます。

なお、2017年度終了後の2018年4月29日(米国東部時間)、スプリントとTモバイルは、両社の全ての対価を株式とする合併による取引(以下「本取引」)(注3)に関して最終的な合意に至りました。当社グループは、本取引により想定されるコストの低減と規模の経済性による大きなシナジーが、統合会社の価値の増大と当社グループの資産価値向上に貢献し、結果としてソフトバンクグループ㈱の株主にとっての株式価値向上につながると確信しています。

(注)

  • 3.本取引は、スプリントとTモバイルの株主および規制当局の承認、その他の一般的なクロージング要件の充足を必要とします。本取引のクロージングは、遅くとも2019年半ばまでに行われることを見込んでいます。本取引の完了後、統合後の会社はソフトバンクグループ㈱の持分法適用関連会社となり、スプリントはソフトバンクグループ㈱の子会社ではなくなります。

国内通信事業の着実な利益成長と安定的なキャッシュ・フローの創出

日本の国内通信市場は、世界的に見ても高い利益率を誇る安定した市場の一つですが、近年では、仮想移動体通信事業者(注4)各社が登場し、顧客獲得競争の進展がみられるほか、日本市場全体として少子高齢化の進展に伴う人口減少の問題に直面しています。このような構造問題を背景に、国内通信事業を担うソフトバンク㈱では、着実な利益成長と安定的なキャッシュ・フローの創出を達成することを課題とし、顧客基盤の拡大と、通信領域以外の新規ビジネスの育成・拡大を進めていきます。

顧客基盤の拡大にあたっては、「SoftBank」「Y!mobile」「LINEモバイル」の3ブランドによるマルチブランドを採用し、種々様々なニーズに的確に対応していきます。また、「SoftBank光」などのブロードバンドサービスと移動通信サービスとのセット契約割引「おうち割」や、通信サービスと「ソフトバンクでんき」のセット契約割引「おうち割でんきセット」の提供により、顧客との接点を個人から家庭へと拡大し収益機会を創出していきます。これに加え、通信サービスを営むことにより得られるビッグデータの分析を通じ、新たなビジネスソリューションの開発・提案に生かしていきます。

また、ヤフー㈱との連携を深めることで、同業他社に対する差別化を図っており、イーコマースやコンテンツ、シェアリングビジネス等の分野における連携したサービス提供により、新たな収益源の確保によるグループ利益の最大化を図っていきます。

このほか、通信領域以外の新規ビジネスの育成・拡大を目指す「Beyond Carrier」戦略を推進していきます。ソフトバンク㈱が構築してきた顧客などステークホルダーとの良好な関係、通信ネットワーク、店舗、販売ノウハウといった事業資産のポテンシャルを最大限に発揮しながら、新たな成長エンジンを見出すべく投資を実施していくとともに、当社グループのもつ世界中の優れたテクノロジー企業とのつながりを活用した次世代サービスを展開していきます。

(注)

  • 4.仮想移動通信事業者:Mobile Virtual Network Operator(MVNO)。移動通信事業者からネットワークを借りて移動通信サービスを提供する事業者。