事業の経過及びその成果

 当社は2022年12月期から4年間を対象とする中期経営計画のもと、「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業」を目指しております。基本戦略である「4つのアクション(①野菜摂取に対する行動変容の促進 ②ファンベースドマーケティングへの変革 ③オーガニック・インオーガニック、両面での成長追求 ④グループ経営基盤の強化と挑戦する風土の醸成)の有機的連携による持続的成長の実現」に取り組み、さらなる企業価値の向上に努めてまいります。

 当連結会計年度(2022年1月1日から2022年12月31日)は、新型コロナウイルス感染症や、地政学リスクの高まりの影響により、原料価格及びエネルギー価格の高騰、サプライチェーンの混乱、円安の進行など、事業を取り巻く環境が大きく変化しました。
 このような環境の下、売上収益は、主に国際事業が円安や米国外食需要の回復などにより増収となりました。他方、価格改定を上回る原料価格の高騰や販売促進費の積極的投下により、事業利益(※)は減益となりました。

 以上により、当連結会計年度の売上収益は、前期比8.4%増の2,056億18百万円、事業利益は前期比9.4%減の128億8百万円、営業利益は前期比8.9%減の127億57百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比6.6%減の91億16百万円となりました。
※ 事業利益は、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除し、持分法による投資損益を加えた、経常的な事業の業績を測る利益指標です。

●売上収益・事業利益

●基本的1株当たり当期利益(EPS)・1株当たり親会社所有者帰属持分(BPS)

(注)

基本的1株当たり当期利益は期中平均発行済株式総数に基づき、1株当たり親会社所有者帰属持分は期末発行済株式総数に基づき、それぞれ算出しております。なお、期中平均及び期末の発行済株式総数は、いずれも自己株式を除いて算出しております。


 セグメント別の業績の概況は、次の通りであります。
 2022年12月期から4年間を対象とする中期経営計画の開始にあたる当連結会計年度より、各セグメントをより実態に即した費用負担で管理するために、国内事業の「加工食品」セグメントに含まれていた本社費用の一部を以下の通り変更しております。
 ①グループ本社機能に要する費用を連結共通費用として「調整額」に含める
 ②国際事業など他セグメントに直接関わる費用を該当セグメントの費用とする
 上記の他、国内から海外への輸出販売取引について、「国際事業」から「その他」に移管しております。
 また、報告セグメントの区分及び名称を、国内事業の「加工食品」、「農」、「その他」及び「国際事業」から、「国内加工食品事業」、「国内農事業」、「国際事業」、「その他」に変更しております。
 なお、前連結会計年度については、当該変更に基づき遡及して作成した数値となっております。

(注)

事業利益の調整額には、事業セグメントに配分していないグループ本社機能に関する連結共通費用が含まれております。


各事業別の売上収益の状況は以下の通りであります。

 1  国内加工食品事業

主要製品及び商品等 野菜ジュース トマトジュース トマトケチャップ トマト系調味料など

売上収益 1,379億68百万円(前期比0.9%増)

 国内加工食品事業では、飲料、調味料、サプリメントやスープ等の製造・販売を手掛けております。

[飲料]
 野菜飲料においては、日本における野菜摂取量を「あと60g増やす」ことを目指した『野菜をとろうキャンペーン』を推進し、積極的な販促活動を実施しました。加えて、植物性ミルクの新ブランド「畑うまれのやさしいミルク」を2022年3月29日より全国で発売しております。一方、「野菜生活100」シリーズは、前年の内食需要の反動があり、主にホームパックの需要が減少しました。
[通販]
 広告宣伝の顧客獲得効率低下により野菜飲料が前年を下回ったものの、サプリメントやスープが好調に推移しました。
[食品他]
 原材料であるトマトペースト価格の高騰などから、2022年4月1日より家庭用、業務用の一部トマト調味料の出荷価格の改定を行いました。
 食品カテゴリーは、内食需要に対応した「焼きケチャップ」などのメニュー情報発信と販促活動を強化しましたが、価格改定による一時的な需要の落ち込みにより、売上収益は減収となりました。
 業務用カテゴリーは、外食需要の回復に価格改定による販売単価の上昇も相俟って、売上収益は増収となりました。
 ギフト・特販カテゴリーは、受託製品の販売が減少したことで、売上収益は減収となりました。

 2  国内農事業

主要製品及び商品等 生鮮トマト(高リコピントマト、β-カロテントマト、ラウンドレッドなど) ベビーリーフ など

売上収益 95億82百万円(前期比0.4%増)

 国内農事業では、主に生鮮トマト、ベビーリーフ等の生産・販売を手掛けております。当連結会計年度は、天候等の影響により生鮮トマトの取扱量が減少したものの、市況が前年を上回りました。

 3  国際事業

主要製品及び商品等 トマトペースト、ダイストマト ピザソース、トマトケチャップ トマト・野菜種子 野菜飲料 など

売上収益 678億30百万円(前期比33.6%増)

 国際事業では、種子開発から農業生産、商品開発、加工、販売まで垂直統合型ビジネスを展開しております。
 KAGOME INC.(米国)は、米国外食需要の回復により、新規顧客を含むフードサービス企業向け販売が好調に推移したこと、およびコスト上昇に伴う価格改定を実施したことにより増収となりました。Holding da Industria Transformadora do Tomate, SGPS S.A.(ポルトガル)は、主力商品であるトマトペースト価格が上昇したことなどにより増収となりました。Kagome Australia Pty Ltd.(豪州)は、アップルペーストなどの販売が好調だったことにより、増収となりました。

 4  その他事業

主な事業 不動産賃貸業 業務受託事業 新規事業 など

売上収益 22億21百万円(前期比16.5%増)

 その他の事業には、不動産賃貸業、業務受託事業、新規事業などが含まれております。

会社の経営上の重要な事項

 該当事項はありません。

研究開発の状況

 当連結会計年度の研究開発費の総額は、40億90百万円であります。また、当社の研究開発活動については、以下の通りであります。
 イノベーション本部では「野菜の力による社会課題の解決」を目的とした健康・農業・安全に関する研究に果敢にチャレンジし、その成果を事業に繋げることによってカゴメグループの持続的な成長に貢献しています。

① イノベーション本部における研究分野
・農業研究
トマトの新品種開発や栽培技術の研究を中心に、遺伝子に関連するビッグデータ活用や、スマート農業に関連する先端技術の開発・活用を進めています。
・健康研究
緑黄色野菜を主とした機能性研究やビッグデータ解析を中心に、健康情報の発信、野菜摂取の行動変容につながる仕組みの社会実装研究を行っています。
・安全研究
食に関わる様々なリスク与件の収集活動、高度な安全性評価技術の装備、原材料の安全性評価など、「畑から一貫して安全を保障する基盤技術」を維持、強化しています。

② 知的財産の保護・活用
 自社の研究開発活動における発明・発見や、他社特許調査を通じて知的財産関連基盤(知財の取得、保護、妨害、訴訟予防)を強化しているほか、保有する知的財産の社外での有効活用にも取り組んでいます。
 主な取組み
・トマトジュース・トマトケチャップの特許を活用した競争優位の維持
・ベジチェック特許による競争優位確立の推進
・トマト収穫機の特許を活用しての農作業効率向上及び技術利用料収入

③ オープンイノベーションの取り組み例
アブラナ科野菜由来成分スルフォラファングルコシノレート(SGS)の継続的な摂取が、高齢者の処理速度やネガティブ感情を改善
 ブロッコリースプラウトなどのアブラナ科野菜に含まれるスルフォラファングルコシノレート(以下SGS)は多くの健康機能が期待されており、当社は国内外の大学や研究機関と共同研究を実施してきました。
 このたび、東北大学加齢医学研究所との共同研究において、健康な高齢者を対象にヒト試験を実施し、SGSを継続的に摂取することで、認知機能の一種である「処理速度」や、怒りや混乱や抑うつなどを含む全般的なネガティブ感情が改善することを確認しました。本研究結果は、将来的に高齢者の健康促進のための取り組みに活用されることが期待されます。

AIを活用した生鮮トマトの収量予測システムを開発・導入
 当社から販売している生鮮トマトは子会社の大型菜園などで栽培されています。従来、生鮮トマトの営業計画(当週~数週間先)は、菜園担当者の経験などを基に立案していましたが、数週間先の予測精度の向上が課題でした。そこで、当社がこれまで蓄積してきた栽培技術・管理に関するデータとAI解析技術を組み合わせた収量予測モデルを作り上げ、数週間先の予測精度を高めることを可能にしました。これによって確度の高い営業計画の策定や食品ロスの削減が期待されます。

本システムを導入したいわき小名浜菜園(福島県)


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2023/03/28 12:00:00 +0900
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