デンカと三菱商事株式会社(以下三菱商事)は、炭素の先端素材であるフラーレン事業に関する合弁契約を締結いたしました。本契約に基づき、デンカはフラーレンの製造販売事業を行うフロンティアカーボン株式会社(以下FCC社)の株式50%を三菱商事より取得し、同社を共同で運営いたします。
フラーレンは、炭素原子がサッカーボール状の構造を持つ、ナノメートルレベルの分子です。優れた電気特性や熱安定性を備え有機溶媒に溶けることから、有機薄膜太陽電池(*1)の発電層として活用されております。また、次世代太陽電池として注目されている、ペロブスカイト太陽電池(*2)の材料としての活用も検討されています。スマートフォン等に用いられる各種センサーの材料としても注目を集めており、今後も新たな用途への展開が見込まれています。
デンカは、高純度で優れた導電性を有する炭素素材であるアセチレンブラック(*3)の量産実績から、これまで培ってきたカーボンナノ材料の知見や製造技術をフラーレン事業に応用しFCC社の更なる発展を支えるとともに、デンカが保有する製造設備等のユーティリティを活用することで、事業インフラの構築も支援いたします。これにより、デンカはカーボンナノ材料マーケットでのプレゼンス向上を図り、当分野での事業拡大を進めてまいります。
また、フラーレンは電子部品・バイオ医薬分野など多岐に渡る幅広い産業分野で使用が検討されており、デンカが経営計画「Mission 2030」で注力分野として掲げるICT & Energy、Healthcare、Sustainable Livingの各分野への貢献も大きく図れるものと考えております。
デンカと三菱商事は、販売と技術開発の両面でそれぞれの知見や強みを掛け合わせ、フラーレンの普及を推進するとともに、用途市場の立ち上がりによるフラーレン需要増に応えるため、生産増強体制の構築を目指すことで、FCC社の事業を通じて社会課題の解決に取り組んでまいります。
(*1)有機薄膜太陽電池:有機半導体の薄膜を発電層として用いた太陽電池で、2種類(p型とn型)の半導体材料がありフラーレンはn型材料。
(*2)ペロブスカイト太陽電池:ペロブスカイト結晶構造の材料を用い、薄いガラスやプラスチックの基板上に液体を塗り焼いて作られる太陽電池。
(*3)アセチレンブラック:アセチレンの熱分解によって製造されるカーボンブラックの一種。優れた導電性を有し車載のリチウムイオンバッテリー、洋上風力発電の高圧ケーブル等に用いられる。
フロンティアカーボン社 概要(2024年4月24日時点)
(1)会社名:フロンティアカーボン株式会社
(2)代表取締役社長:大島 幸一
(3)設 立:2001年
(4)本社所在地:東京都千代田区神田錦町2丁目2-1
(5)出資比率:三菱商事50%、デンカ50%
(6)事業内容:フラーレンおよびフラーレン応用製品の製造・販売
デンカと東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野の菅野武准教授、正宗淳教授の研究グループは、ユー・エー株式会社との共同研究の成果をもとに、「Medical Rising STAR」(*)プロジェクトの第2弾として実際の内視鏡と治療用具を用いて、胆管挿管~十二指腸乳頭切開~胆管結石除去の包括的な流れを学習でき、推奨されない方向や過剰な乳頭切開時の出血合併症を体験できるシミュレータを開発しました。
本シミュレータは、初学者が患者を危険に晒すことなく、胆膵内視鏡の重要な手技である内視鏡的胆管膵管造影(ERCP)および乳頭切開術(EST)を、合併症まで含めて学習できる機会を提供します。
この共同研究は、侵襲的内視鏡手技に対するシミュレータ開発「Medical Rising STAR」プロジェクトの第2弾であり、今後販売を目指し準備しています。患者を対象としない学習方法の確立により、患者安全の推進と内視鏡技術の発展とに寄与します。また、本シミュレータを用いた、若手医師への教育プログラムの開発とその効果の検証を進めています。
(*)Medical Rising STAR:Medical Rising STAR の STAR には“Simulator Training model for Advanced high Risk endoscopic therapy” の意味を込めています。
デンカは、ペガサス・テック・ベンチャーズと共同で運営するCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)ファンドを通じて、ウェアラブル生体センサを開発するスタートアップ企業Epicore Biosystems Inc.(以下Epicore社)へ出資いたしました。Epicore社はマイクロ流路技術を核とし、汗中のバイオマーカー(*)や発汗状態を、皮膚に貼ったウェアラブル生体センサを介してセンシングし、身体状態を分析する技術プラットフォームを開発しており、当社は一昨年夏より事業化に向けてEpicore社と協業検討を進めてきました。Epicore社は米国においてパッチタイプの生体センサをアスリート向けに市販化し、さらには熱中症対策として発汗量や電解質の損失をリアルタイムでモニタリングでき、適切なタイミングでの水分補給を推奨する高度なウェアラブルIoTセンサを開発しています。
Epicore社への出資は、CVCファンドを通じた第1号の投資案件であり、今回の出資を通じて、Epicore社の製品のアジア市場展開の支援や医療用途に向けた新製品の共同開発などで連携を図ってまいります。さらに、当社がヘルスケア分野で取り組む「予防・診断・治療」の領域において、Epicore社の技術を応用し、在宅医療にも適用可能な新たな生体センサを共同開発することでヘルスケア事業のさらなる深化を目指します。
(*)バイオマーカー:体内物質において、症状の変化や治療前後の効果を推し測る指標となるもの(例:酵素や血糖値など)。