事業の経過及びその成果

 当社は、「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業」を目指し、2019年12月期から当期を最終年度とする第2次中期経営計画のもと、基本戦略である①収益力強化の継続、②新事業・新領域への挑戦による成長に取組み、更なる企業価値の向上に努めてまいりました。

 当連結会計年度(2021年1月1日から2021年12月31日)における売上収益は増収となりました。国内においては、新型コロナウイルス感染症拡大による健康志向や内食需要の高まりが継続するとともに、ワクチン接種の拡大等により外食需要も回復基調にありました。こうした環境のもと、『野菜をとろうキャンペーン』活動による需要喚起効果も相俟って、国内加工食品事業は増収となりました。国際事業においても、新型コロナウイルス感染症政策の影響により大きく落ち込んだ外食需要が回復してきたことで、KAGOME INC.(米国)を中心に増収となりました。
 事業利益(※)は、国内加工食品事業において、『野菜をとろうキャンペーン』のための広告宣伝費及び販売促進費の増加により減益となったものの、国際事業において、前述の米国を中心とした増収に加え、前連結会計年度に持分法適用会社であるIngomar Packing Company, LLCへの投資に係る減損損失を9億96百万円計上したことの反動などにより、増益となりました。
 営業利益は、前連結会計年度にポルトガル子会社であるHolding da Industria Transformadora do Tomate,SGPS S.A.において、保有する固定資産の減損損失を30億28百万円計上したことの反動などにより、大幅な増益となりました。

 以上により、当連結会計年度の売上収益は、前期比3.6%増の1,896億52百万円、事業利益は前期比4.0%増の141億38百万円、営業利益は前期比31.2%増の140億10百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比31.5%増の97億63百万円となりました。
※ 事業利益は、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除し、持分法による投資損益を加えた、経常的な事業の業績を測る利益指標です。

●売上収益・事業利益

●基本的1株当たり当期利益(EPS) ・1株当たり親会社所有者帰属持分(BPS)

(注)

基本的1株当たり当期利益は期中平均発行済株式総数に基づき、1株当たり親会社所有者帰属持分は期末発行済株式総数に基づき、 それぞれ算出しております。なお、期中平均及び期末の発行済株式総数は、いずれも自己株式を除いて算出しております。


セグメント別の業績の概況は、次の通りであります。

 なお、当連結会計年度より、前期まで国内加工食品事業の食品他に含めておりました、通販事業を独立開示 するセグメント区分の変更をしております。当社は、同セグメントを成長期待事業として位置付けており、経 営管理上の重要性が増したことによります。

(注)
  1. 国内事業内のセグメント間売上収益を消去しております。
  2. 国内事業と国際事業間のセグメント売上収益を消去しております。

国内事業売上収益 1,472億5百万円(前期比1.2%増)

各事業別の売上収益の状況は以下の通りであります。

 1  加工食品

主要製品及び商品等 野菜ジュース トマトジュース トマトケチャップ トマト系調味料 など

売上収益 1,367億29百万円(前期比1.7%増)

 加工食品事業では、飲料、調味料、サプリメントやスープ等の製造・販売を手掛けております。
[飲料]
 野菜飲料においては、日本における野菜摂取量を「あと60g増やす」ことを目指した『野菜をとろうキャンペーン』を推進し、積極的な広告投下、販促活動を実施しました。加えて、新型コロナウイルス感染症拡大による健康への関心の高まりもあり、飲用機会の増加につながりました。商品別では、2021年3月に「野菜生活100Smoothie ビタミンスムージー」を発売した「野菜生活100」シリーズ、「野菜一日これ一本」が好調に推移しました。
[通販]
 新型コロナウイルス感染症拡大に伴うECチャネルの利用拡大により、つぶより野菜などの野菜飲料、スルフォラファンなどのサプリメント、スープの主要商品が好調に推移しました。
[食品他]
 食品カテゴリーは、前期に引き続きトマトケチャップやパスタソースが好調を維持していることに加えて、ナポリタンスタジアム開催などによるメニュー訴求の強化を行いました。しかしながら、前年のコロナ禍における内食機会急増の反動減により、減収となりました。
 業務用カテゴリーは、依然として厳しい事業環境が継続しているものの、外食需要が前年水準より回復していることで、増収となりました。
 ギフト・特販カテゴリーは、受託製品が好調に推移したことで、増収となりました。

 2  農事業

主要製品及び商品等 生鮮トマト(高リコピントマト、β-カロテントマト、ラウンドレッドなど) ベビーリーフ など

売上収益 95億42百万円(前期比6.4%減)

 2021年1月1日に当社農事業を会社分割によりカゴメアグリフレッシュ株式会社に移管し、同社を農セグメントの中核会社として事業を推進しています。
 当連結会計年度は、第2四半期までの生鮮トマト市況低迷による販売単価の下落に加え、第3四半期は、8月以降の天候不順に伴う日照不足により生鮮トマトの取扱量が大幅に減少しました。

 3  その他事業

主な事業 不動産賃貸業 業務受託事業 など

売上収益 10億5百万円(前期比27.8%増)

 その他の事業には、不動産賃貸業、業務受託事業などが含まれております。


国際事業売上収益 516億81百万円(前期比16.5%増)
     国際事業

主要製品及び商品等 トマトペースト、ダイストマト ピザソース、トマトケチャップ  トマト・野菜種子 野菜飲料 など

国際事業では、種子開発から農業生産、商品開発、加工、販売まで垂直統合型ビジネスを展開しております。

 KAGOME INC.(米国)は、コロナワクチン接種拡大を受けた米国外食需要の回復により、新規顧客を含むフードサービス企業向け販売が好調に推移したことにより増収となりました。Holding da Industria Transformadora do Tomate, SGPS S.A.(ポルトガル)は、前連結会計年度に新型コロナウイルス感染症拡大に伴い食品メーカー向け販売が好調に推移した反動により減収となりました。Kagome Australia Pty Ltd.(豪州)は、グループ向けのニンジン濃縮汁及びアップルペーストの販売が好調だったこと、新規顧客を含むフードサービス企業向け販売が好調に推移したことなどに伴い、増収となりました。台湾可果美股份有限公司は、台湾内の巣ごもり需要に対して新商品導入等により家庭向け販売を拡大するとともに、宅配需要増に対応した外食チェーン向け販売が好調に推移した結果、増収となりました。

会社の経営上の重要な事項

 該当事項はありません。

研究開発の状況

 当連結会計年度の研究開発費の総額は、37億96百万円であります。また、当社の研究開発活動については、以下の通りであります。
 イノベーション本部では「野菜の力による社会課題の解決」を目的とした健康・農業・安全に関する研究に果敢にチャレンジし、その成果を事業に繋げることによってカゴメグループの持続的な成長に貢献しています。

① イノベーション本部における研究分野
・農業研究
約7,500種に及ぶトマトの遺伝資源を活用し、気候変動や病害虫への耐性がある加工用トマト、市場のニーズに沿った生鮮・園芸用トマトの新品種開発や栽培技術の研究を行っています。従来の手法に加え、遺伝子に関連するビッグデータ活用や、スマート農業に関連する先端技術の開発・活用を進めています。
・健康研究
緑黄色野菜を主とした機能性研究を中心に、健康情報の発信、野菜摂取の行動変容につながる仕組みの社会実装研究を行っています。積極的に研究をオープン化し、大学の医学部などとの産学官連携を推進しています。
・安全研究
食に関わる様々なリスク与件の収取活動、高度な分析評価技術の装備、原材料の安全性評価など、「畑から一貫して安全を保障する基盤技術」を維持、強化しています。

② 知的財産の保護・活用
 持続的な競争力を維持するため、自社の研究開発活動における発明・発見や、定期的な他社特許調査を通じて知的財産関連基盤(知財の取得、保護、妨害、訴訟予防)を強化しています。さらに保有する知的財産の社外での有効活用に取り組んでいます。
 主な取組み
・トマトジュース・トマトケチャップの特許を活用した競争優位の維持
・ベジチェック特許による競争優位確立の推進
・トマト収穫機の特許を活用しての農作業効率向上及び技術利用料収入

③ オープンイノベーションの取り組み例
「ナトカリ比」を食と行動変容の新指標に
-東北大学(COI東北拠点/東北メディカル・メガバンク機構)との「ナトカリ」普及に向けた取り組み-
 食塩の摂りすぎは高血圧の原因となる一方、野菜や果物などに含まれるカリウムを多く摂取することで血圧が低下するといわれています。塩と野菜の摂取バランスを示す、ナトリウム・カリウム比(ナトカリ比)とその指標に基づいて食行動を変える仕組みの普及を、東北大学と連携で進めています。ナトリウム量を縦軸、カリウム量を横軸に様々なメニューを配置した「ナトカリマップ®」を作成し、視覚的に分かり易くすることで、食に対する行動変容をサポートしています。
 これらのナトカリの取り組みは、厚生労働省の大規模実証事業にも採択されており、当社も参画しております。
※「ナトカリマップ®」は東北大学とカゴメの登録商標であり、両者が共同で特許出願中のものです。

トマト加工品の夾雑物検出技術の開発
 2018年より、AIを活用してトマトの夾雑物を判別する実験を開始し、AI画像判定サービスを強みとするYE DIGITAL社とロボット技術を活用したシステム構築の実績を持つ末松九機㈱とともに開発を進め、AIによる夾雑物除去システムを当社茨城工場で導入しました。
 本設備は、ベルトコンベアを流れるダイストマトを連続撮影した画像から、AIが夾雑物を判別し、ロボットで吸引除去するものです。商品の安心・安全を確保するとともに人手不足の対応などの社会課題解決にも貢献できる技術です。

④ 今後の強化策
・研究クリエイティビティと橋渡し(事業化)ができるT字型人財育成の更なる推進(積極的な大学・他社への研究出向、ベンチャー企業出向、外部コンサル等の実施)
・知的財産の獲得・維持・価値創造・発信の強化と知的財産による参入障壁の構築
・原料調達の環境変化に対応した、品種開発と開発拠点の海外展開
・食品安全コンサル活動を通じた「安全」基盤強化


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2022/03/30 12:00:00 +0900
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