当連結会計年度における我が国経済は、ウィズコロナのもと感染症対策等と経済活動との両立が進んだことで緩やかながらも回復基調となった一方、世界的な金融引き締め、地政学リスクの顕在化による供給面の制約等が事業環境に影響を及ぼしました。
このような状況のもと、当社グループは、「中期経営計画2025」に掲げる、「アフターコロナの再成長に向けた稼ぐ力と効率性の向上」の実現に向けて、事業ポートフォリオの再構築を着実に推進するとともに、全社方針である「環境経営」と「DX」を通じた独自性のある価値創出に取り組んでまいりました。当事業年度は、事業ポートフォリオマネジメントでは、中期経営計画2025において「抜本的な再構築」の対象とした事業について、売却や外部連携等を含めて改革を推進し、その目処を付けることができました。今後は、事業環境の変化をしっかりと見据えながら、定量評価と定性評価の2軸で事業ポートフォリオを管理し、各事業の変革と成長を実現してまいります。
「環境経営」の取り組みについて
「環境を起点とした事業機会の拡大」を加速させるため、東急不動産㈱において、全ての事業所及び保有施設※1の使用電力※2を100%再生可能エネルギーに切り替えるなど、脱炭素社会の早期実現に向けた具体的な取り組みを推進してまいりました。
「DX」の取り組みについて
ビジネスプロセスにおける多くの事例や成果の創出、お客さま接点の高度化をめざし、取り組みを推進してまいりました。
※1 RE100の対象範囲とならない、売却又は取壊し予定案件及び同社がエネルギー管理権限を有しない一部の共同事業案件を除きます。
※2 RE100が認めるグリーンガスが国内市場に存在しないため、コジェネレーション自家発電による電力を除きます。なお、東京瓦斯㈱が供給するカーボンニュートラルガスを採用することで、脱炭素を実施しております。
なお、当社は、2023年2月14日付けで、東日本旅客鉄道㈱と包括的業務提携契約を締結いたしました。住宅事業と再生可能エネルギー事業を軸に、海外事業展開など幅広い事業連携を進め、両社グループが持つまちづくりに関わるアセット、ノウハウ、人材などを活用した高いシナジー効果を追求することで、持続可能なまちづくりを通じた社会課題の解決と企業成長をめざしてまいります。
当連結会計年度は、売上高は1兆58億36百万円(前期比1.7%増)、営業利益は1,104億10百万円(前期比31.7%増)、経常利益は995億58百万円(前期比36.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は482億27百万円(前期比37.3%増)となり、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は、ホールディングス体制への移行前も含めて、過去最高となりました。
(ご参考)
「中期経営計画2025」の詳細は以下URLからご覧ください
https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/ir/mgtpolicy/mid-term-plan/
東急不動産㈱では、将来の安定利益の拡大に向け大型再開発案件を着実に推進いたしました。また、ポートフォリオの見直しを戦略的に進めるとともに、回転型投資を加速させてまいりました。
主な取り組み
● 渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業は、施設名称を「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」と決定、2023年度下期竣工に向け事業を引き続き推進
●「九段会館テラス」(東京都千代田区)の開業、多様なニーズに対応する新しい時代のコンパクトビルシリーズの第一弾「COERU SHIBUYA(コエル渋谷)」(東京都渋谷区)を竣工 等
「九段会館テラス」(2022年10月開業)
本施設は登録有形文化財(建造物)である旧九段会館を一部保存しながら建て替えたもので、歴史的建造物の創建当時の貴重な技術や素材を活かして保存・復原を行った保存部分と、お濠を臨みIoTを活用した地上17階建ての最新鋭のオフィスとなる新築部分が融合した施設となります。
(ご参考)
(外観イメージ)
「Forestgate Daikanyama“ produced by 東急不動産”(フォレストゲート代官山)」(2023年度下期開業予定)
賑わいと落ち着きが共存する代官山に環境フラッグシップとして誕生する当施設は、賃貸住宅、シェアオフィス、商業施設で構成されるMAIN棟とサステナブルな活動拠点として様々な体験を提供するカフェ、イベントスペースのTENOHA棟からなり、サーキュラーエコノミーを体現する複合施設となります。
東急不動産㈱は、高付加価値の再開発物件に重点を置いた事業の強化や、持続可能で心地よい暮らしと環境貢献実現のために新たな発想や仕組みを取り入れた「環境先進マンション」の開発に注力してまいりました。
主な取り組み
● 分譲マンション「BRANZ(ブランズ)」の全物件について、ZEH※3標準仕様化の目標を前倒し、加えて「低炭素建築物」の認定を取得することを決定
●「ブランズ神楽坂」(東京都新宿区)、「ブランズシティ湘南台」(神奈川県藤沢市)、「ブランズ上目黒諏訪山」(東京都目黒区)、「ブランズシティ南草津」(滋賀県草津市)などを売上計上 等
※3「ZEH」とは集合住宅におけるZEH-M(100%以上省エネ)、またNearlyZEH-M(75%以上省エネ)、ZEH-M Ready(50%以上省エネ)、ZEH-M Oriented(20%以上省エネ)等を含み、これらを取り組みの対象とします。
「ブランズ上目黒諏訪山」(2022年11月竣工)
カーボンニュートラルに向けてEV(電気自動車)の普及が進むなか、1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)で初めて全戸分の自走式平置き駐車場にEV充電器を設置した分譲マンションとなり、環境に優しいEVの普及を設備面から後押ししております。
以上の結果、都市開発事業の売上高は3,460億81百万円(前期比6.2%増)、営業利益は586億34百万円(前期比12.9%増)となりました。
脱炭素の流れを受けてマーケットが拡大を続ける一方で、新規案件の取得競争が激化いたしました。東急不動産㈱では、開発中案件の推進に加え、今後の事業拡大を支える共創関係や仕組みの整備、また、新たな領域への展開にも取り組んでまいりました。
主な取り組み
● 再生可能エネルギーの導入検討が進む地域で、地域の課題解決や活性化を目的とした地域共生プロジェクトを開始
● 法人向け再生可能エネルギー供給サービス開始による顧客企業の環境経営支援
● 横浜市内学校53校における太陽光発電設備の導入実施事業者に選定 等
「再生可能エネルギー事業」(2023年3月末時点)
発電能力は原子力発電所1基分を超え、再生可能エネルギー事業者として国内トップレベルになります。
*世帯当たりの電⼒使⽤量4,743kWh/年を⽬安に算出
(太陽光発電協会「表⽰ガイドライン2022年度」より)
**環境省・経済産業省公表の『電気事業者別排出係数
(2021年度実績)における一般送配電事業者のCO₂排出係数
「435g-CO₂/kWh」(沖縄電力㈱以外の全国平均係数)』を使用
※共同事業を含みます。
※定格容量・CO₂削減量は持分換算前の値です。
※総事業数・定格容量・CO₂削減量にはルーフトップ等1事業(稼働済/開発中案件含む)を含みます。
※MWはパネル等容量で記載しています。
東急不動産㈱は、急激なデジタル化、脱炭素化、生活スタイルの多様化など、社会がめまぐるしく変化するなか、テナントさまとステークホルダーのサステナブルな成長に向け、施設自体が進化し続けなければならないという想いから、物流施設ブランド「LOGI’Q(ロジック)」のブランドリニューアルに取り組みました。使用電力のグリーン化や、先進技術の積極的な導入による物流のスマート化を推進し、テナントさまとステークホルダーの未来を切り拓く施設づくりに取り組んでまいります。
主な取り組み
●「LOGI’Q南砂町」(東京都江東区)の開業 等
(ご参考)
(外観イメージ)
「LOGI’Q 南茨木」(2023年度下期竣工予定)
本施設は、新たに設定したブランドコンセプト「NEXT GREEN LOGISTICS」を具現化するフラッグシップ物件となります。長期ビジョンスローガンである「WE ARE GREEN」に込められた思いを踏襲し、環境に配慮しながら人にも優しいあるべき姿とは何かを追い求めて、物流施設の新たな役割と価値を探し続けてまいります。
海外事業では、東急不動産㈱は、米国において、賃貸住宅バリューアド事業が好調に推移し、累計関与戸数は約8,000戸となりました。今後も、米国及びアジアにおける事業規模拡大に引き続き取り組んでまいります。
主な取り組み
●「425パーク・アベニュー」(米国 ニューヨーク・マンハッタン)の開業
● タイ王国 バンコク都市圏での物流施設開発事業への参画 等
「425パーク・アベニュー」(2022年10月開業)
東急不動産㈱は子会社のTokyu Land US Corporationを通じて、ニューヨーク・マンハッタンプラザ地区で事業参画していたオフィス・店舗ビル「425パーク・アベニュー」を開業いたしました。本地区では約50年ぶりの再開発事業となり、環境負荷に配慮した施設となります。
以上の結果、戦略投資事業の売上高は787億63百万円(前期比17.6%増)、営業利益は152億41百万円(前期比3.4%増)となりました。
㈱東急コミュニティーは、不動産管理業のソリューション提供型モデルへの進化に重点をおいたビジネスモデル転換を進めるとともに、ブランド力と競争力のさらなる強化に努めてまいりました。
主な取り組み
● 2022年度より開始された、マンションの維持管理状況を市場評価に反映する新たな仕組み「管理適正評価制度」・「管理計画認定制度」への対応
● 当社グループ各社や他事業との将来的な連携・シナジー強化の基盤となるような基幹業務システムの再構築の推進
● スタジアム「エスコンフィールドHOKKAIDO」を含む「北海道ボールパークFビレッジ」(北海道北広島市)の管理開始 等
「第10回カーボンニュートラル賞 大賞受賞」
(2022年4月)
カーボンニュートラル社会の実現に向けた建築物、建築設備に関わる優れた業績として、研修施設「東急コミュニティー技術研修センターNOTIA(ノティア)」が、一般社団法人建築設備技術者協会主催の第10回カーボンニュートラル賞で大賞を受賞いたしました。
東急不動産㈱では、事業ポートフォリオ見直しを推進するとともに、レジャー需要の回復を捉えた集客の強化を図り、また、新規施設の開業にも取り組んでまいりました。
主な取り組み
● フィットネスクラブの㈱東急スポーツオアシスは、2023年3月31日付で、同業大手の㈱ルネサンスと資本提携を実施
●「東急ハーヴェストクラブ京都東山 In THE HOTEL HIGASHIYAMA」(京都市)、「東急ハーヴェストクラブVIALA鬼怒川渓翠」(栃木県日光市)を開業
●「東急ステイ メルキュール 大阪なんば」(大阪市)を開業 等
「東急ハーヴェストクラブVIALA鬼怒川渓翠」
(2022年12月開業)
都心からのアクセスが良く、雄大な鬼怒川渓谷の自然を間近に感じられる好立地に、「VIALA」シリーズの第六弾が開業いたしました。近年多様化する新ニーズの一つである「ワーケーション」でのご利用にも対応しておりニューノーマルな時代における、新たな滞在スタイルを提案してまいります。
環境緑化サービス業の㈱石勝エクステリアは、DX活用による事業領域拡大と新たな需要の創造に取り組んでまいりました。
主な取り組み
● ドローンを活用した樹木のデータ化による業務効率の向上
● センサーを用いた植栽のデータ収集・分析による管理品質向上のデジタル活用 等
以上の結果、前期にハンズ事業を譲渡した影響等から、管理運営事業の売上高は3,371億36百万円(前期比12.1%減)となりましたが、営業利益は122億92百万円とリゾート需要の回復などから、黒字に転換いたしました。
東急リバブル㈱は、業界トップブランドの実現に向けて、コーポレートブランドを刷新いたしました。また、3つの業界NO.1戦略(お客様評価、事業競争力、働きがい)及び3つの業界変革戦略(情報の付加価値化、オペレーションの効率化、環境対応力の強化)に基づき、収益拡大の基盤づくりに注力してまいりました。
主な取り組み
● 売買仲介リテールにおいて、お客さまのユーザビリティ向上を企図し、AIを活用したサービスを導入
● DXの応用により、1つの拠点で複数物件を体感できる「東急リバブル・銀座サロン」(東京都中央区)を開設 等
(テレビCM)
「コーポレートブランド 刷新」(2022年9月)
総合不動産流通企業として更なるお客様への価値提供と事業の発展をめざし、新たなブランドスローガンとして、「つなぐ。答えへ。未来へ。」を掲げ、コーポレートロゴも刷新いたしました。
東急住宅リース㈱は、主要顧客であるファンド・REITの住宅への高い投資意欲が継続したこともあり、管理戸数は増加し、稼働率も順調に推移しました。
主な取り組み
● 業務効率化とお客さまの利便性向上に向けた、契約手続きのWEB化や業務進捗管理のシステム化などのDX推進
●「オアーゼ新宿市谷薬王寺」(東京都新宿区)の管理開始 等
㈱学生情報センターでは、外国人留学生の入国数や法人賃貸需要の一定の回復により、営業状況は堅調に推移しました。
主な取り組み
● 賃貸管理領域における顧客接点の高度化と業務効率の向上をめざしたDXの活用強化
●「キャンパスヴィレッジ千歳烏山」(東京都世田谷区)の管理・運営の開始 等
以上の結果、不動産流通事業の売上高は2,629億63百万円(前期比12.1%増)、営業利益は336億79百万円(前期比28.9%増)となりました。