事業の経過及び成果

 当連結会計年度におけるわが国経済は、日銀の金融緩和政策や政府の経済対策等により、総じて緩やかな景気回復が続きました。海外経済は、米国において着実に景気回復が続いているものの、アジアの一部の景気について弱い動きが見られるなど不確実な状況が続いております。先行きについては、国内は消費税率の引上げによる下期の経済減速が想定され、また、海外についても米国の政策に関する不確実性、中国経済の先行き、通商問題の動向、金融資本市場の変動のリスクに留意する必要があります。

 一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会が2018年7月に発表した『第43回経営業務実態調査』によると、2017年度の国内マーケティング・リサーチ市場規模は2,147億円、前年の2,099億円と比較すると2.3%増加はしているものの、その伸び率は前年の7.9%と比較すると鈍化しております。また、調査の内容としては、パネル調査が688億円(前年比1.6%増)、アドホック調査(当社ではカスタムリサーチと表現)は1,332億円(前年比3.9%増)となっております。

 このような状況の中、当社グループは、第12次中期経営計画の2年目となる当連結会計年度において、引き続き「“Take the Initiative”~データ活用の領域で先手を取れ~」をグループ基本方針として掲げ、グループの持続的成長や企業価値向上を目指して、次世代サービス開発並びに積極的な事業投資及びR&D活動を実行してまいりました。

 お客様のマーケティングアクションにおいて、多様なデータを駆使したリアルタイムな対応が求められるようになってきております。当社グループは、長年に渡り培ってきたデータハンドリング技術を基盤として、パネルデータを始めとする当社グループの持つ代表性の高いデータの更なる価値向上や、高品質な提供データのラインナップの充実化を図るとともに、外部データの価値化や活用ソリューションの開発を進めるなどのアクションを通じて、変化し続けるお客様のニーズに応える企業でありたいと考えております。

 上記方針のもと、各セグメントにおいて既存事業の着実な案件獲得に努めた一方、成長や新たなサービス開発のための各種投資も実施いたしました。

 マーケティング支援(消費財・サービス)事業においては、当事業セグメントの中核を担う株式会社インテージにおいて、2019年1月にテストデータの提供、2020年以降にサービス開始予定であるSRI(全国小売店パネル調査)の進化版『SRI+』に係る設計及び開発等に注力したほか、シナジーの大きい外部企業との業務提携や協業を通じた新たなサービスや共同研究・検証などを次々と発表いたしました。

 マーケティング支援(ヘルスケア)事業においては、統合によるシナジー効果の発揮あるいは新たな事業分野への投資を目的として、株式会社アンテリオと株式会社アスクレップの経営統合により新会社「株式会社インテージヘルスケア」が2019年4月1日に発足いたしました。また、本年度ヘルスケア事業ではM&Aによるアセットの充実化を図っており、2018年6月には株式会社アンテリオにおいて、医療機器分野における強みと医療経済分析のノウハウを持つジュニコン株式会社を子会社化し、10月に吸収合併したほか、2018年9月には、株式会社アスクレップにおいて、医療に係るプロモーション、エデュケーション、データソリューション、ヘルステックの各事業を展開する株式会社協和企画を子会社化しました。

 ビジネスインテリジェンス事業においては、当該セグメントの拡張を目的として、2018年10月に製造業を中心としたさまざまな業種におけるシステム開発実績を保有し、これらの実績を通して蓄積されたシステム開発力、及び生産・購買・販売・会計などの業務ノウハウを強みとしたソフトウェア事業を展開するエヌ・エス・ケイ株式会社を子会社化いたしました。

 なお、昨年スタートした働き方改革についても、当社グループの最大の資産である人材の有効活用、付加価値向上、生産性向上を目指した取り組みを加速いたしました。

 この結果、当社グループの当連結会計年度の業績は、売上高53,986百万円(前期比6.9%増)、営業利益4,268百万円(同6.1%増)、経常利益4,215百万円(同2.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,859百万円(同6.3%減)となりました。

 事業分野別の状況は次のとおりであります。

 マーケティング支援(消費財・サービス)事業の連結業績は、売上高33,815百万円(前期比1.9%増)、営業利益2,211百万円(同2.2%増)となりました。当事業では、主力事業であるパネル調査が堅調に推移しました。カスタムリサーチにつきましては、WEB調査の売上が前年実績に若干届かなかったものの、WEB調査以外のカスタムリサーチが好調で、特にプロダクト評価を主としたCLT(Central Location Test)や日系企業からの海外における調査、株式会社インテージリサーチにおける官公庁案件が売上に寄与しました。また、ここ近年株式会社インテージで取り組んでいる生活者を包括的に理解するためのデータ統合ソリューション開発やマーケティングPDCAの各段階を支援する各種ソリューション開発で成果が出始めております。一方、急速に伸長するデジタルメディア広告の効果計測に関して、GDPR施行などの環境変化を受けて、新たな計測手法の開発も強化しました。2019年度も引き続き、国内事業における着実な案件積上げの実施と併せて、新たな調査手法やサービス開発を見据えたR&D活動を実施していく予定です。海外事業については、中国及びシンガポールが計画達成となり、タイ、インドも好調であった反面、香港、インドネシア、ベトナムは厳しい状況となりました。利益面については、売上の増加に伴い、前述のSRIのリニューアルに係る設計及び開発等の投資を着実に実行しつつ増益を達成することができました。

 マーケティング支援(ヘルスケア)事業の連結業績は、売上高13,086百万円(前期比18.2%増)、営業利益1,604百万円(同13.6%増)となりました。当事業では、株式会社アンテリオにおいて医療用医薬品に係るカスタムリサーチ及び一般用医薬品に係るパネル調査が年間を通じて好調に推移し、売上だけでなく利益にも大きく寄与しました。その中でもプロモーション活動評価や医師に対するライトなWEBアンケートが活況となりました。一方、株式会社アスクレップにおいては、メインの業務であるCRO(医薬品開発業務受託機関)の製造販売後調査に関して、前期末の受注残高が減少していたことを踏まえ、当期においては受注案件の積上げを図るべく安全性管理業務などの案件獲得に尽力しましたが、前年割れの結果となりました。CROについては、国や政府での医療費抑制やMID-NET(Medical Information Database Network)導入などに見られる能動的なデータ収集の影響やそれらに伴う製薬メーカーの経営方針や開発内容の変化に伴い、来期以降の見通しは不透明な状況となっておりますが、RPA(Robotic Process Automation)の導入等業務効率化の効果も出始めており、引き続き収益性の向上を図ってまいります。また、前述のとおり新たに吸収合併したジュニコン株式会社、子会社化した株式会社協和企画が売上に貢献しております。利益面についても、CROの売上減少の影響は受けたものの、株式会社アンテリオの売上増および利益良化により大幅な増益となりました。

 ビジネスインテリジェンス事業の連結業績は、売上高7,084百万円(前期比13.5%増)、営業利益452百万円(同1.4%増)となりました。当事業では、生命保険分野での開発案件及び旅行分野での開発案件並びに運用案件増加に加え、子会社化した株式会社ビルドシステム及びエヌ・エス・ケイ株式会社の貢献により売上が伸長しました。株式会社インテージテクノスフィアにおいては、製造業における異常検知などAIを使用した業務などの引き合いも増加し、また2018年6月にはNetBaseJapan株式会社と連携しSNSのデータを活用したコーポレート・マーケティングや企業全体の事業戦略を支援するソーシャルインテリジェンス事業を共同で立ち上げる検討を開始するなど、新たな取り組みにも着手いたしました。利益面については、一部不採算案件が発生したものの、売上の堅調な伸びが貢献し増益となりました。


事業分野別の状況



 主力事業であるパネル調査が堅調に推移しました。カスタムリサーチは、WEB調査以外のカスタムリサーチが好調で、特にプロダクト評価を主としたCLT(Central Location Test)や日系企業からの海外における調査、株式会社インテージリサーチにおける官公庁案件が売上に寄与し、増収となりました。利益面は、SRI+に係る設計及び開発等の投資を着実に実行しつつも、売上の増加に伴い増益を達成いたしました。


 株式会社アンテリオにおいて医療用医薬品に係るカスタムリサーチ及び一般用医薬品に係るパネル調査が年間を通じて好調に推移しました。一方、株式会社アスクレップにおいては、メインの業務であるCRO(医薬品開発業務受託機関)の製造販売後調査に関して、受注案件の積上げを図るべく安全性管理業務などの案件獲得に尽力しましたが、前年割れの結果となりました。利益面については、CROの売上減少の影響は受けたものの、株式会社アンテリオの売上増及び利益良化により大幅な増益となりました。


 生命保険分野での開発案件及び旅行分野での開発案件並びに運用案件増加に加え、子会社化した株式会社ビルドシステム及びエヌ・エス・ケイ株式会社の貢献により売上が伸長しました。利益面については、売上の堅調な伸びが貢献し増益となりました。



次の項目へ
2019/06/26 12:00:00 +0900
外部サイトへ移動します 移動 ×