対処すべき課題

 当社は、経営理念である「先端技術を先端で支える」を体現する会社であり続けるため、当社がどうありたいか、何をなすべきかを定めた中長期経営方針「グランドデザイン(10年)」を2018年度に策定しました。またグランドデザインの実現に向けた最初の3カ年計画「第1期中期経営計画(2018~2020年度)」(略称:MTP1)を同時に策定し、この達成に努めてきました。
 このMTP1が2020年度に全ての経営指標を超過し成功裡に終了したことを踏まえ、当社では、グランドデザインを更新するとともに、「第2期中期経営計画(2021~2023年度)」(略称:MTP2)を新たに策定しました。MTP2のもと、グランドデザイン達成に向けた道筋をより確実なものとするべく、一段の飛躍を目指します。

1.グランドデザイン(10年)(2018年度~2027年度)
<ビジョン・ステートメント>
 「進化する半導体バリューチェーンで顧客価値を追求」

<中長期経営目標>
 「売上高4,000億円の達成」
 これまで「売上高3,000~4,000億円の達成」を最終目標としてきましたが、2020年度に目標値の下限に到達したことを受け、目標を上方修正します。また当目標は2027年度での達成を当初企図していましたが、業績進捗と今後の事業見通しを踏まえ、今後はより早期での達成を目指すことに変更します。

<戦略>
 当社は、半導体の量産テスト用システムの開発・販売に加え、半導体量産工程の前後工程にある半導体設計・評価工程や製品・システムレベル試験工程といった近縁市場へ事業領域を広げることで、業容の拡大と企業価値向上を目指します。
 上記の達成に向け、「コア・ビジネスの強化、重点投資」、「オペレーショナル・エクセレンスの追求」、「さらなる飛躍への価値探求」、「新事業領域の開拓」、「ESGのさらなる推進」の5つの戦略課題に取り組みます。

2.第1期中期経営計画(MTP1、2018~2020年度)の総括
<目標とした経営指標の状況>

 デジタル革命の進展により半導体市場および半導体テスタ市場が拡大する中で、想定より早く市場シェア拡大を実現したこと(2017年全体シェア約36%に対し、2018~2020年平均は約50%)、M&Aで取得した事業の早期業績貢献などにより、全ての指標でベース・シナリオとして掲げた目標を超過しました。

3.第2期中期経営計画(MTP2、2021~2023年度)の概要
<経営指標>
 MTP2では、さらなる成長に向けた事業強化の取り組みを推進するとともに、成長投資と株主還元の双方を拡充し、企業価値向上を図ります。この考えに基づき、MTP2において重視する経営指標を売上高、営業利益率、当期純利益、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)、基本的1株当たり当期利益(EPS)とし、これらの成長に努めます。なお計画の進捗を中長期視点で評価するため、経営指標には単年の業績変動の影響を軽減できる3カ年平均の指標を用います。
 MTP2における各数値目標は、以下のとおりです。
 ※下記指標の予想に用いた為替レートは、1米ドル=105円


<主な施策>
 - 半導体・部品テストシステム事業
   ・新製品「V93000 EXA Scale」の強みを活かし、拡大するスマートフォン関連のSoC半導体やHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)デバイスの試験装置需要を取り込む
   ・2022年以降に本格拡大するミリ波関連テストにおけるリーダーポジションの確立
   ・DRAM半導体向け、不揮発性メモリ半導体向けでの強固なビジネス基盤を堅持
- メカトロニクス関連事業部門
   ・テスト品質向上につながるテストセル環境を提供し、販売機会を拡大
- サービス他部門
   ・システムレベルテスト(SLT)需要が高まる中、モバイル、HPC、メモリ/ストレージ向け等で顧客拡大。またSLT消耗品のリカーリングビジネスも拡大
   ・新規事業領域となるデータ・アナリティクス分野における最適なビジネスモデル探索を推進

<コスト・利益構造>
 企業価値の向上を目指すにあたり、成長の源泉であるR&D投資についてはこれまでの高い水準を維持する方針です。並行して、業務効率向上の推進により、販管費効率と収益性の改善を図ります。

<資本政策、キャピタル・アロケーション、株主還元>
 MTP2における資本政策としては、成長に向けた事業投資を優先しつつ、資本効率と資本コストに配慮したバランスシート管理の見地から負債(デット)も柔軟に活用します。さらに経営基盤の強化および持続的企業価値創造のために、財務健全性を維持した上で適正な資本構成を図る方針です。財務健全性については株主資本比率50%以上を、資本効率についてはROE 20%以上を指標とします。
 成長投資および株主還元の原資としては、MTP2期間に予想される累計2,200億円以上の営業キャッシュ・フローと、手元現金の保有水準見直しによる活用を想定しています。成長投資枠は、MTP2期間累計でM&A等の戦略投資に1,000億円、設備投資に400億円とします。株主還元についてはMTP2期間における安定的な事業環境を前提として、配当を半期配当性向30%から、1株当たり配当金半期50円・通期100円を最低額とする金額基準に変更します。通期総還元性向は50%以上を目途とし、配当や自己株式の取得を通じて株主還元を強化するともに資本効率の向上を図ります。

<ESGのさらなる推進>
 当社は事業活動を通じて、社会的課題の解決とサステナブルな社会の実現に貢献してまいります。それにあたり、当社自身がサステナブルであるための根幹となるコーポレートガバナンスにおいて、経営・執行体制整備やサクセッションプランの確立・運用などを通じ、当社の“稼ぐ力” を強化します。また人権尊重、人財開発・育成など、人的資本に関するサステナビリティ要素の強化や気候変動への取り組み強化も並行して推進します。
※ 中長期経営方針の詳細につきましては、当社ウェブサイトの「中長期経営方針」の欄に掲載しております。
  URL: https://www.advantest.com/ja/investors/management-policy/management-policy.html

4.今後の見通し
 2021年度の事業環境を展望しますと、SoC半導体用試験装置事業では、先端半導体への活発な技術投資を背景に、スマートフォンやHPC用先端SoC半導体に対する試験需要の拡大を予想しています。また、電子機器の低消費電力化や自動車産業の復調などを反映したアナログ半導体の試験需要増も見込まれます。一方、メモリ半導体においては、堅調な需要に加え、微細化や多層化などの技術投資が2021年も進展する見通しです。これらが、メモリ半導体の試験需要を牽引することからメモリ半導体用試験装置事業も堅調に推移するものと想定しています。
 2021年度の通期連結業績予想については、各事業の今後の見通し、為替の状況などを踏まえ、受注高3,500億円、売上高3,500億円、営業利益850億円、税引前利益850億円、当期利益640億円を予想しています。予想の前提とした為替レートは、米ドルが105円、ユーロが130円です。
 ただし新型コロナウイルス感染症に収束の兆しが見えない中、世界経済の不確実性は依然高い状態が継続しています。また、米中摩擦の激化、供給能力の確保、さらには予期せぬ自然災害など事業を取り巻くリスクは複雑化しています。外部環境の変化に機動的に対応することを、引き続き最優先事項として事業活動に臨みます。
 現下の新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界経済に深刻な影響を与え続ける一方で、デジタル革命を加速する契機となっています。5G通信を中核としたデジタル革命は、高性能かつ高い信頼性を備えた半導体の需要を中長期にわたり喚起するものです。そして、より高付加価値な半導体試験ソリューションに対する顧客ニーズの高まりを通じ、デジタル革命は当社の事業機会をもまた中長期にわたり拡大するものと予想しています。
 当社はこれまで、半導体のウエハ・レベル試験やパッケージ・レベル試験といった既存事業の強化のみならず、システム/モジュール・レベルでのテスト・ソリューション分野への参入や、半導体のテストデータを半導体プロセス解析などに活用するデータ・アナリティクス分野への展開を進めてきました。
 そしてデジタル革命が進展し続ける中、中長期経営方針「グランドデザイン」で目標とした売上高4,000億円の達成に向け、成長施策の手を緩めず今後も取り組んでまいります。

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2021/06/23 12:00:00 +0900
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