「Hondaフィロソフィー」は、Hondaグループすべての企業と、そこで働くすべての従業員の価値観として共有され、あらゆる企業活動と、従業員の行動や判断の基準となっています。
さらに、企業の成長機会の創出とサステナブルな社会の実現を両立させるため、21世紀の方向性として「存在を期待される企業」を掲げ、「喜びの創造」「喜びの拡大」「喜びを次世代へ」という取り組みを推進しています。
これらの実現に向けて、Hondaが進むべき方向性を具体的に示したマイルストーンが、「2030年ビジョン」です。Hondaのサステナビリティにとって重要なことは、商品・サービスを通した価値の提供によってステークホルダーの期待・要請に応えるとともに、環境や社会に対する影響への配慮など、企業の社会的責任を果たすことや、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することです。そこでHondaでは、ステークホルダーとHondaの両視点を踏まえた課題の評価である「マテリアリティマトリックス」をガイドに、グローバルの地域ごとの特色に照らし合わせ、果たすべき役割や貢献すべき点を考慮した中長期の事業戦略を策定しています。
ステークホルダーの視点を踏まえた課題評価
Hondaフィロソフィーを基点とした長期ビジョン達成に向けては、取り組むべき重要な課題をHondaとステークホルダーの2つの視点から整理しています。「マテリアリティマトリックス」はそうした課題を整理するための代表的なフレームワークであり、これを作成・活用することで、課題の網羅性を確認し、位置付けを明確化しました。
マテリアリティマトリックスの作成にあたっては、課題の抽出とその重要性の評価という2段階で行いました。課題の抽出は、社内各本部のメンバーによる議論に加え、技術革新の状況、SDGs※1やパリ協定に記された社会課題も踏まえ、グローバルかつバリュー・チェーンの観点で実施しています。そしてこれら課題の重要性について、代表的なESG※2評価機関や、企業のサステナビリティに精通した欧米のNGOとの対話などを通じてステークホルダー視点での評価を行いました。そのうえでサステナビリティ戦略会議などにおいて経営メンバーが評価・確認をしています。
こうして、「カーボンフリー社会の実現」や「交通事故ゼロ社会の実現」などを、モビリティカンパニーとして優先的に取り組むべき重要課題として可視化することができました。これらは、SDGsの目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」、目標7「すべての人々に手頃で信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」や目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」などの達成に貢献するものと考えています。このようにステークホルダーの視点を踏まえて特定された重要課題は、ビジョン達成のための全社戦略に反映され各事業活動へ織り込まれていきます。
※1 SDGs:Sustainable Development Goalsの略。2015年に国連持続可能な開発サミットにおいて採択された貧困や飢餓、エネルギー、 気候変動、平和的社会などに関する国際目標。
※2 ESG:Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の略。
※3 モビリティデバイド:移動手段の違いによる人の生活の格差。