事業の経過及びその成果

(1)企業環境

 当期の世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)により、戦後最悪となる深刻な景気後退に直面しました。このパンデミックの収束が各国当局の最重要課題となり、厳しい移動制限が課されたことで、社会活動は前例がないほどの制約を受けました。その結果、消費者マインドは著しく減退し、生産活動も大きく停滞しました。
 期中には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の一時的な鈍化や各国当局による積極的かつ大規模な財政・金融支援の効果により、急速な景気回復基調が強まりましたが、期末になると、多くの地域で再び感染が拡大し、経済活動へ悪影響を及ぼしました。
 国際商品市況では、特に米国産の原油が大幅な供給過剰となり、価格がマイナスに陥るなど、需給バランスの悪化による不安定な価格推移が目立ちました。
 国内経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により著しく停滞しました。また、世界経済の景気後退の影響を受け、輸出入は大幅に抑制されました。しかし、感染拡大状況が徐々に落ち着くにつれ、地域・産業にばらつきは見られるものの、日本の内外需は回復基調となりました。

(2)全体業績及び財政状態

① 全体業績

 当期の親会社の所有者に帰属する当期利益又は損失(注1)は1,531億円の損失となり、前期に比べ3,244億円の減益となりました。一過性損益については、複数の案件において減損損失などを計上したことから約3,510億円の損失となり、前期に比べ約2,740億円損失が増加しました。一過性損失を計上した主な案件は下記のとおりです。

(注)EPCについては、(3)セグメント別の状況の②セグメント別の業績概要のインフラ事業部門の業績概要に記載している注2をご参照下さい。

 一過性を除く業績は約1,980億円となり、前期に比べ約500億円の減益となりました。非資源ビジネス(注2)は、メディア・デジタル事業部門の国内主要事業会社が堅調に推移した一方で、電力EPC案件のピークアウトや、北米鋼管事業や自動車関連事業が減益となりました。また、資源ビジネス(注3)は、操業停止の影響によりマダガスカルニッケル事業が減益となったほか、資源価格の下落及び販売数量の減少などにより豪州石炭事業が減益となりました。

② 財政状態

(a)資産、負債及び資本の状況

 当期末の資産合計は、円安の影響により増加した一方、営業資産が減少したことに加え、複数の案件で減損損失を計上したことなどから、前期末に比べ486億円減少し、8兆800億円となりました。
 資本のうち親会社の所有者に帰属する持分(注6)は、円安の影響により増加した一方、親会社の所有者に帰属する当期損失を認識したことや配当金の支払があったことなどから、前期末に比べ162億円減少し、2兆5,280億円となりました。
 現預金ネット後の有利子負債(注7)は、前期末に比べ1,684億円減少し2兆3,004億円となりました。
 この結果、ネットのデット・エクイティ・レシオ(注8)は、0.9倍となりました。

(b)キャッシュ・フローの状況

 営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金の減少に加え、コアビジネスが資金を創出し、基礎収益キャッシュ・フローが1,308億円のキャッシュ・インとなったことなどから、合計で4,671億円のキャッシュ・インとなりました。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、メキシコ完成車製造事業や米国タイトオイル・シェールガス事業の売却など、資産入替による回収が約1,100億円あった一方で、三井住友ファイナンス&リース株式会社への追加出資やSCSK株式会社における設備投資など、約2,600億円の投融資を行ったことなどから、1,201億円のキャッシュ・アウトとなりました。
 これらの結果、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加えたフリー・キャッシュ・フローは、3,470億円のキャッシュ・インとなりました。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払などにより、4,664億円のキャッシュ・アウトとなりました。
 以上の結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、前期末に比べ1,114億円減少し5,990億円となりました。

③ 2020年度年間配当金

 当社は、株主の皆様に対して長期にわたり安定した配当を行うことを基本方針としつつ、中長期的な利益成長による配当額の増加を目指して取り組んでいます。
 2020年度の親会社に帰属する当期損益は1,531億円の損失となりましたが、危機対応モードのもと、コスト削減やキャッシュ・フローマネジメントを通じた有利子負債の削減やリスクアセットとコア・リスクバッファーのバランスの維持により、財務健全性は計画どおり維持しています。また、今後は収益力の回復とともに、財務健全性の維持・向上の見通しが立っていることから、2020年度の年間配当金は、1株当たり70円としています。中間配当金は35円でしたので、当期の期末配当金として、1株当たり35円を本年6月に開催予定の定時株主総会にてお諮りすることとします。
 なお、2021年度の年間配当金予想額は、連結業績の見通し2,300億円を踏まえ、1株当たり70円としています。詳細については、後記の『2.対処すべき課題 新中期経営計画「SHIFT 2023」』の「⑥株主還元(配当方針)と2021年度の年間配当金予想額」に記載のとおりです。

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2021/06/22 11:00:00 +0900
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