対処すべき課題

 2021年度から2023年度までの3年間を対象とする新中期経営計画「SHIFT 2023」においては、当社の事業ポートフォリオ固有の弱点を克服し、当社業績をV字回復させるべく、昨年度からの取組に加え、課題の背景にある真因を取り除くため、事業戦略を遂行する組織単位(Strategic Business Unit(以下、略して「SBU」という。)の強化と全社最適の資源配分を実現する仕組みを導入して、徹底的な構造改革を行います。

 「SHIFT 2023」は、2020年度の「危機対応モード」のモメンタムを維持しており、これまで構造改革として実行してきた取組をより具体的かつ中期的な目線で引き直した内容となっています。全社で総力をあげてこの「SHIFT 2023」を着実に実行することにより、当社の足元の状況を早急に改善させ、一日も早く株主の皆様の信頼を回復すべく、業績面で結果を示していきます。

新中期経営計画「SHIFT 2023」

「SHIFT 2023」では、「事業ポートフォリオのシフト」を掲げて、現行の事業ポートフォリオをより高い収益性と環境変化への耐性を兼ね備えたポートフォリオに移行していきます。そして、この「ポートフォリオのシフト」の実効性を担保するために「仕組みのシフト」を導入します。また、「経営基盤のシフト」のため、「ガバナンスの強化」、「人材マネジメントの強化」、「財務健全性の維持・向上」を行います。


① 事業ポートフォリオのシフト

(a)事業戦略ごとの位置づけの明確化

 当社のすべての事業をSBUごとに括り直したうえで、「バリュー実現」、「バリューアップ」、「注力事業」及び「シーディング」の4つのカテゴリーに分類し、各事業について位置づけを整理し、目指す方向・果たす役割を明確にします。各SBUがそれぞれの位置づけに応じた目標の達成を実現し、より市場の魅力度が高く、当社の強みが十分に発揮できる「注力事業」となることを目指すことで、より高い収益性と環境変化への耐性を兼ね備えた事業ポートフォリオの構築に繋げます。また、各事業のカテゴリー分類は、市場の変化や当社の持つ強みの変化により、随時見直しながら、事業ポートフォリオの強化を図り、当社の企業価値向上に努めていきます。

 なお、かかるシフトの実現にあたっては、社会的な要請であるデジタル化とサステナビリティという2つの大きな潮流をしっかりと捉えることを意識して、取り組んでいきます。


(b)事業戦略分類ごとの定量イメージ

 4つのカテゴリー別の定量イメージは、次のとおりです。3つのカテゴリーで資産入替による資金の回収をしっかりと行いながら、市場の成長が期待でき、かつ、既に当社の強みが実証されている「注力事業」のカテゴリーを中心に、新中期経営計画期間中に1兆1,000億円程度の投融資を行う計画です。具体的には、国内不動産事業や建機レンタル事業、再生可能エネルギー関連事業等での投資拡大を計画しています。


(c)次世代成長戦略テーマの設定

 次世代のコアビジネスを育成すべく、6つの分野を「次世代成長戦略テーマ」として設定し、同分野における事業を全社で中長期的に強化・育成していきます。「中期経営計画2020」において取り組んできた、「デジタルトランスフォーメーション」、「社会インフラ」、「ヘルスケア」の3分野に、当社の強みが発揮できる可能性の高い分野である、「次世代エネルギー」、「リテイル・コンシューマー」、「農業」の3分野を新たに加えました。当社の事業ポートフォリオを、持続可能な社会に整合した形にシフトしていくことも重要な要素と捉え、サステナビリティ経営の高度化という観点からもこれらのテーマに取り組んでいきます。


② 仕組みのシフト

 事業ポートフォリオのシフトの実効性を担保するため、以下4つの新たな仕組みを導入します。

(a)事業戦略管理の進化

 当社のすべての事業をSBUごとに括り、事業戦略上の位置づけ・方向性を明確化して、スピード感をもった資産入替の判断や、戦略水準の向上により投資先事業のバリューアップに繋げます。その実効性を確実にすべく、各SBU単位で具体的目標を設定し、PDCA管理を徹底します。

(b)投資の厳選/投資後のバリューアップ強化

 個別事業の選定・投資判断、投資実行後の事業管理、更にはその投資のパフォーマンスに応じた評価等、投資の各ステージにおいて、過去の失敗を繰り返さないための打ち手を実行します。具体的には、案件を厳選するための厳格な投資規律の設定、投資先に対する最適なリソースの投入、ガバナンス体制の構築、不採算事業のモニタリングの強化等により、投資案件のバリューアップを実現させていきます。

(c)全社最適での取組体制強化

 特定テーマに関し、事業構想から事業化まで一つの組織で推進し、将来的に当社コア事業を創出することを狙いとして、新たな営業組織であるイニシアチブの枠組みを導入しました。イニシアチブは、部門の枠を超えた全社視点で、ビジネス全体を俯瞰したうえでグランドデザインを描き、中長期目線で次世代のビジネスの創造に取り組みます。本年4月にはその第一弾となる「エネルギーイノベーション・イニシアチブ(Energy Innovation Initiative。(EII))」を設立し、従来の組織の枠を超えて、グループの知見を結集し、エネルギー分野での新たな価値創造に挑みます。

(d)全社最適視点からの経営資源配分の強化

 人材や資金といった経営資源を、全社最適の観点から部門の枠を超えて再配分していきます。また、市場の成長が期待できる分野で、既に当社が強みを発揮している事業領域に対して、経営資源を優先的に配分することにより、全社の意思で当社の新たなコア事業を育成・拡大していきます。この取組を加速するために、全社視点での事業推進役として、グローバルイノベーション推進委員会や、全社経営戦略推進サポート委員会といった全社委員会の機能を強化・拡大します。

③ 経営基盤のシフト

 経営基盤の強化として、ガバナンスの強化、人材マネジメントの強化、財務健全性の維持・向上に継続的に取り組んでいきます。

(a)ガバナンスの強化

 当社のコーポレートガバナンスの更なる充実に向けて取締役会の機能の強化を図ります。このため、新中期経営計画に基づく経営資源の配分や事業ポートフォリオに関する戦略、サステナビリティ経営等の諸施策などの重要な経営方針・戦略についての実効的な監督やその更なる客観性の強化のための体制整備に取り組んでいきます。

(b)人材マネジメントの強化

 2020年度に制定したグローバル人材マネジメントポリシーを具現化するため、人材マネジメント改革を推進していきます。本年4月には「Pay for Job, Pay for Performance」、「世界Top Tierのプロフェッショナル育成」などをキーワードに、人事制度改定を実施しました。この改訂を梃子に、「Diversity & Inclusion」をさらに推し進め、グローバルでの適所適材をより実現することを目指します。また、コロナ禍が長期化するニューノーマルの時代においても、組織と個人双方のパフォーマンスの最大化を目指し、健康経営の推進と働き方改革に継続して取り組んでいきます。

(c)財務健全性の維持・向上

 有利子負債に過度に依存しない投資規律を維持すべく、3年合計の配当後フリー・キャッシュ・フローの黒字を確保します。また、リスクアセットをリスクバッファーの範囲内に抑えるべく、引き続きそのバランスの維持に努めます。

④ サステナビリティ経営の高度化

 当社グループでは、住友の事業精神、住友商事グループの経営理念(注1)を踏まえ、事業活動を通じて自らの強みを生かして優先的に取り組むべき課題を「社会とともに持続的に成長するための6つのマテリアリティ(重要課題)」として特定し、サステナビリティ経営を実践しています。2020年6月には、持続可能な社会の実現のために、当社グループが取り組むべき6つの「重要社会課題」と「長期目標」を設定し、2021年5月には、その具体的なアクションプランを示す「中期目標」を定めました。各課題の長期目標・中期目標の達成状況や具体的な取組については、今後毎年改訂する「ESGコミュニケーションブック」(注2)や統合報告書などにおいて開示していきます。

 「重要社会課題」の中でも、特に「気候変動緩和」については、気候変動をめぐる世界的な情勢を踏まえ、2021年5月に「気候変動問題に対する方針」の見直しを行い対外発表しました。新方針では、当社の石炭火力発電事業及び一般炭鉱山開発事業の方針やカーボンニュートラル化に向けた道筋を具体的に示しており、より環境への負荷が少ない事業ポートフォリオとすることを明確に謳っています。

 当社は、気候変動問題に関するリスクを適切に管理して企業価値の毀損を防止しつつ、変化を機会と捉えて持続的成長につなげていく観点から、この新方針を含めた諸施策に取り組み、さらにその努力を続けてまいります。

(*1)2020年現在:石炭50%、ガス30%、再エネ20%(*2)他者のエネルギー資源使用に伴う間接排出量(*3)個別事業で目標を設定し削減に注力(*4)2020年現在:1.5GW(1GW=10億W)(*5)サプライチェーンを含む事業活動全体に関し、人権侵害等に関する、従業員・地域住民等ステークホルダーからの訴えを受け付け、問題解決につなげる仕組み(*6)住友商事グループの社員参加型の社会貢献プロジェクト


 そのほか、社会課題に対する包括的方針として、「環境方針」及び「サプライチェーンCSR行動指針」を定めていますが、これらに加え、2020年5月には「住友商事グループ人権方針」を策定し、企業に求められる社会的責任の一つとして人権を尊重する方針を明らかにしました。2020年度からは人権デュー・デリジェンス(注3)を開始し、当社グループの事業に関わる人権リスクの評価と人権課題の特定を行っています。今後も人権尊重を推進するためのステークホルダーとの対話、社内啓発、情報開示等を継続していきます。

⑤ 業績見通し定量計画

 新中期経営計画の初年度である2021年度は2,300億円、2年目である2022年度は2,600億円の連結純利益を計画しています。3年目である2023年度については、どのような環境であっても3,000億円以上の連結純利益を出せるポートフォリオに強化していきます。

⑥ 株主還元(配当方針)と2021年度の年間配当金予想額

 当社は、株主の皆様に対して長期にわたり安定した配当を行うことを基本方針としつつ、中長期的な利益成長による配当額の増加を目指して取り組んでいます。新中期経営計画「SHIFT 2023」においては、事業ポートフォリオのシフトを通じ、早期の収益力の回復を目指しながら、長期安定配当という基本方針を踏まえ、2020年度の年間配当金と同額の1株当たり70円以上を維持したうえで、連結配当性向30%を目安に、基礎的な収益力やキャッシュ・フローの条件を勘案のうえ、決定することといたします。2021年度通期連結業績予想は2,300億円としており、上記方針を踏まえ、2021年度の年間配当金予想額は、普通配当を1株当たり70円(中間35円、期末35円)としています。

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2021/06/22 11:00:00 +0900
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