三菱商事グループの事業概要等

事業内容

 三菱商事グループは、国内外のネットワークを通じて、生活、モビリティ・インフラ、エネルギー・電力といった各種産業分野において、川上の天然資源開発から川中での多種多様な商品の売買や製造、川下でのコンシューマー向け商品・サービスの提供を行うほか、金融・物流事業といったサービス分野を含めて全産業を俯瞰する総合力を活かした新しいビジネスモデルや新技術の事業化、新たなサービスの開発・提供等、広範な分野で多角的に事業を展開しています。

連結業績

1. 概況

 2020年度の収益は、石油事業における取引減少等により、前年度を1兆8,952億円(13%)下回る12兆8,845億円となりました。
 売上総利益は、豪州原料炭事業における市況下落やCVS事業における加盟店収入の減少等により、前年度を1,840億円(10%)下回る1兆6,051億円となりました。
 販売費及び一般管理費は、新型コロナウイルスの影響による営業活動の縮小等により、前年度から335億円(2%)減少し、1兆3,977億円となりました。
 有価証券損益は、前年度に計上した食品産業事業における関係会社株式の売却益及び評価益の反動等により、前年度を48億円(7%)下回る621億円(利益)となりました。
 固定資産減損損失は、(株)ローソンあてのれん及び無形資産の減損損失等により、前年度から1,711億円(520%)悪化し、2,040億円となりました。
 その他の損益は、為替関連損益の変動等により、前年度から436億円改善し、180億円(利益)となりました。
 金融収益は、資源関連投資先からの受取配当金の減少や米ドル金利の低下による受取利息の減少等により、前年度を555億円(32%)下回る1,178億円となりました。
 金融費用は、米ドル金利の低下等により、前年度から237億円(34%)減少し、463億円となりました。
 持分法による投資損益は、三菱自動車工業(株)における減損損失等の取り込みや持分利益の減少等により、前年度を822億円(46%)下回る971億円(利益)となりました。
 この結果、税引前利益は、前年度を3,954億円(61%)下回る2,535億円となりました。
 以上の結果、当期純利益は、前年度を3,628億円(68%)下回る1,726億円となりました。

2.セグメント別の状況


天然ガスグループ

天然ガスグループは、北米、東南アジア、豪州、ロシア等において、天然ガス・原油の生産・開発事業、液化天然ガス(LNG)事業等を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈減少〉

・LNG関連事業における受取配当金や持分利益の減少

TOPICS米国キャメロンLNGプロジェクトの商業生産開始
キャメロンLNGプロジェクト

パートナー企業と共に参画する米国キャメロンLNGプロジェクトが、2020年8月にLNG生産設備の第3系列において商業生産を開始し、年間生産量が1,200万トンとなりました。当社はCameron LNG, LLCの事業運営への参画に加え、使用権を有する生産設備(年間約400万トン)への原料ガス供給、及び生産されたLNGの販売を行っております。本事業を通じ、日本をはじめとする世界各地へ環境負荷の低いLNGの長期安定的供給を実現します。

総合素材グループ

総合素材グループは、自動車・モビリティや建設・インフラ等といった対面業界において、炭素、鉄鋼製品、機能素材等多岐にわたる素材の販売取引、事業開発、事業投資を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈減少〉

・鉄鋼製品事業における持分利益の減少

・炭素事業における事業利益の減少

TOPICS豪州で硅砂採掘事業を展開
Cape Flattery Silica Minesの硅砂の採掘

Cape Flattery Silica Mines(当社100%出資、在豪州)は、太陽光パネル用を含むガラス等の原料となる高品位硅砂の採掘・製造を行う世界最大級の硅砂鉱山。当社は独自の物流・販売ネットワークを活かし、同社から出荷された硅砂の輸送・販売も手掛けており、一貫したサプライチェーンを構築しています。同社は日本やアジア各国に向け年間約300万トンの硅砂を出荷しており、今後も自然環境の保全、地域との共生に努めながら、堅調な需要拡大が見込まれる硅砂の安定供給に貢献していきます。

石油・化学グループ

石油・化学グループは、原油、石油製品、LPG、エチレン、メタノール、塩、アンモニア、プラスチック、肥料等幅広い石油・化学関連分野において、販売取引、事業開発、投資等を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈増加〉

・前年度に「原価」等に計上したシンガポールの原油・石油製品トレーディング会社における原油デリバティブ取引関連の損失343億円の反動

TOPICSクリーン燃料アンモニア生産に向けた取組
PT Panca Amara Utamaのアンモニアプラント

2021年3月、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、インドネシア国立バンドン工科大学及びPT Panca Amara Utama(在インドネシア)と、クリーン燃料アンモニア生産に向けた共同調査実施に合意しました。既存アンモニア生産拠点を活用した本調査を通じて、アンモニア製造時に発生する二酸化炭素の回収・貯留によるクリーン燃料アンモニア生産の実現可能性を追求し、脱炭素社会実現と日本のエネルギー安定供給に貢献すべく努めていきます。

※2021年4月1日付けで「石油・化学ソリューショングループ」に呼称を変更しております。

金属資源グループ

金属資源グループは、原料炭、銅、鉄鉱石、アルミといった金属資源への投資・開発等を通じて事業経営に携わるとともに、グローバルネットワークを通じた鉄鋼原料、非鉄原料・製品における質の高いサービスや機能を活かし、供給体制を強化しています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈減少〉

・豪州原料炭事業における市況下落による影響

・前年度に「法人所得税」に計上したチリ銅事業再編に伴う一過性利益767億円の反動

TOPICSペルー・ケジャベコ銅鉱山の開発を推進
生産開始に向けて開発中のケジャベコ銅鉱山プロジェクト

金属資源グループでは、再生可能エネルギーやEV普及、新興国の経済成長等により堅調な需要が見込まれる銅を中核商品の一つと位置付け、資源量、品位等において世界的に優位性の高い複数の銅鉱山に投資しています。中でも世界有数の未開発案件であるケジャベコ銅鉱山(当社40%出資)は、パートナーのAnglo American plcと共に2022年の生産開始に向け開発を行っています。今後も世界経済の成長を支える銅の安定供給に貢献していきます。

産業インフラグループ

産業インフラグループは、エネルギーインフラ、産業プラント、工作機械、農業機械、鉱山機械、エレベーター、エスカレーター、船舶、宇宙航空関連機器等幅広い分野における事業及び関連する取引等を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈減少〉

・前年度に計上した千代田化工建設(株)を会計上の連結子会社としたことに伴う一過性利益の反動

・一般商船事業における一過性損失

・レンタル事業における取引利益の減少

TOPICSファシリティマネジメント(FM)事業の推進
FM事業のイメージ図

2020年に綜合警備保障(株)(ALSOK)及び(株)ネットワーク・コーポレーション(NWC)と資本業務提携に合意し、FM事業を開始しました。当社の総合力、ALSOKのFMオペレーション力、NWCのIoT技術力を融合させ、ビル・施設のスマート化やメンテナンスの最適化、省人化・省エネを可能とする付加価値の高い管理サービスの提供等に取り組みます。人手不足の問題に直面しているFM市場においてDXを追求し、社会的・環境的な課題の解決に貢献していきます。

※ファシリティ(土地、建物、建築物、設備等)を総合的かつ最適な状態で企画、管理、活用するマネジメント業務

自動車・モビリティグループ

自動車・モビリティグループは、乗用車・商用車の販売や販売金融を中心に、生産、アフターサービスも含め一連のバリューチェーン事業に深く関与しています。また、ヒトやモノの移動に関する課題を解決するモビリティ関連事業に取り組んでいます。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈減少〉

・三菱自動車工業(株)における持分利益の減少

・海外投資先における固定資産減損損失

TOPICSAI 活用型オンデマンドバス「のるーと」が日経産業新聞賞を受賞
日経産業新聞賞を受賞

当社と西日本鉄道(株)が共同出資するネクスト・モビリティ(株)が運行するAI活用型オンデマンドバス「のるーと」が、(株)日本経済新聞社の2020年日経優秀製品・サービス賞 日経産業新聞賞を受賞しました。人口減少・乗務員不足等の社会課題解決を目指している点が評価されたものです。2019年度に福岡県で始まった「のるーと」は、2020年度に長野県塩尻市等、4地域で運行を開始しており、2021年度には同市で本格実装に向けた有償実証運行を開始する予定です。

食品産業グループ

食品産業グループは、食糧、生鮮品、生活消費財、食品素材等の「食」に関わる分野で、原料の生産・調達から製品製造に至るまでの幅広い領域において、販売取引、事業開発等を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈減少〉

・前年度に計上した海外食品事業における一過性利益の反動

TOPICSimperfectの取組
Well Food Market & Cafe imperfect表参道

imperfect(株)(当社100%出資)は、社会・環境的価値の高い取組を通じて生産された原料を掛け合わせた商品を販売する等、実業を通じて、世界の食と農を取り巻く社会課題を解決することを目指しています。また、売上の一部を活用して消費者が農家の自立支援及び環境保全の取組に参加できる等の「Do well by doing good.」(いいことをして世界と社会をよくしていこう)活動にも取り組んでおり、これらを通じて持続可能な社会の実現に貢献していきます。

コンシューマー産業グループ

コンシューマー産業グループは、小売・流通、物流、ヘルスケア、衣料、タイヤ他の各領域において、商品・サービスの提供、事業開発等を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈減少〉

・(株)ローソンあてのれん及び無形資産の減損損失

TOPICS日本電信電話(株)(NTT)とデジタルトランスフォーメーション(DX)新会社の設立を発表
物流施設等の在庫最適化に取り組む

DXサービスを提供する(株)インダストリー・ワンをNTTと共に設立することを発表しました。同社は、当社の産業知見とNTTの情報通信技術(ICT)を融合し、日本の産業や企業の成長を支える変革実行パートナーとして、DXの土台づくりからデジタルビジネスの創造までを一気通貫で提供します。まずは、三菱食品(株)が運営する物流センターの在庫最適化による食品ロスや人手不足等の課題解決を図り、SDGsの達成に向けた食品流通産業の持続的な発展への寄与を目指します。

電力ソリューショングループ

電力ソリューショングループは、国内外の産業の基盤である電力・水関連事業における幅広い分野に取り組んでいます。具体的には、発・送電事業、電力トレーディング・小売事業に加え、リチウムイオン電池関連事業や、分散電源事業等の電池サービス事業、水素事業への取組等を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈減少〉

・前年度に計上したEneco Groep N.V.子会社化による評価益の反動

TOPICSEneco、Amazonに再生可能エネルギー100%の電⼒を供給
Enecoは低・脱炭素社会構築への貢献を目指す

2020年3月に中部電力(株)と共同で買収したオランダの総合エネルギー事業会社Eneco(当社80%出資)は、Amazonの欧州におけるデータセンター等施設向けに再生可能エネルギー100%の電力を供給する契約を締結しました。2023年に稼働するオランダのホランドクスト・ノード洋上風力発電所で発電される電力を供給します。今後も、再生可能エネルギー由来のグリーンエネルギーを家庭や企業に安定的に供給するとともに、低・脱炭素社会構築への貢献を目指します。

複合都市開発グループ

複合都市開発グループは、都市開発・不動産、企業投資、リース、インフラ等の分野において、開発事業、運用・運営を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈減少〉

・航空機リース事業における減損損失等の取り込みや持分利益の減少

・空港関連事業における持分利益の減少

TOPICSインドネシア/ジャカルタ郊外
BSD 地区でのスマートシティ開発
プロジェクトイメージ

2020年9月、インドネシア不動産デベロッパー最大手の1社であるSinar Mas Land Ltd.と共同で、BSD City内にある100ha超の土地を対象に、大規模都市開発案件を推進することに合意しました。同国初となる公共交通指向型スマートシティ開発(TOD: Transit Oriented Development)をコンセプトに、住宅・商業施設・学校・病院・公園・交通結節点等の都市機能を組み合わせた開発を推進する計画です。デジタル技術を導入し、同国の社会課題である渋滞の緩和対策を講じる等、社会面や環境面への貢献も実現していきます。

※ 公共交通機関に基盤を置き、自動車に依存しない社会を目指した都市開発

連結財政状態

1.資産及び負債・資本の状況

 2020年度末の総資産は、前年度末より6,016億円(3%)増加し、18兆6,350億円となりました。
 流動資産は、前年度末より1,655億円(2%)増加し、7兆1,029億円となりました。これは、石油化学事業及び金属資源トレーディング事業における販売価格の上昇や取引数量の増加により営業債権及びその他の債権が増加したこと等によるものです。
 非流動資産は、前年度末より4,361億円(4%)増加し、11兆5,321億円となりました。これは、豪州原料炭事業において豪ドル高に伴う為替換算の影響により有形固定資産が増加したこと等によるものです。
 負債は、前年度末より2,801億円(2%)増加し、12兆966億円となりました。
 流動負債は、前年度末からほぼ横ばいの5兆3,702億円となりました。これは、石油化学事業及び金属資源トレーディング事業における販売価格の上昇や取引数量の増加により営業債務及びその他の債務が増加した一方、返済に伴い社債及び借入金が減少したこと等によるものです。
 非流動負債は、前年度末より2,561億円(4%)増加し、6兆7,264億円となりました。これは、新規資金調達に伴い社債及び借入金が増加したこと等によるものです。
 資本合計は、前年度末より3,215億円(5%)増加し、6兆5,384億円となりました。
 当社の所有者に帰属する持分は、前年度末より3,862億円(7%)増加し、5兆6,136億円となりました。これは、主に配当の支払いにより利益剰余金が減少した一方、豪ドル高の影響による在外営業活動体の換算差額の増加や、連結純利益の積み上がりにより利益剰余金が増加したこと等によるものです。
 また、非支配持分は、前年度末より648億円(7%)減少し、9,247億円となりました。
 有利子負債総額から現金及び現金同等物や定期預金を控除したネット有利子負債(リース負債除く)は、前年度末より1,579億円(4%)減少し、4兆1,784億円となりました。

2.キャッシュ・フローの状況

 2020年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末より50億円減少し、1兆3,178億円となりました。


営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動により資金は1兆176億円の増加となりました。法人所得税や利息の支払い等がありましたが、営業収入や配当収入、新型コロナウイルスの影響等による取引減少に伴う運転資金の負担減等により資金が増加したものです。

投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動により資金は3,573億円の減少となりました。その他の投資や関連会社への投資の売却等による収入がありましたが、設備投資、関連会社への投資や融資等による支出により、資金が減少したものです。

財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動により資金は6,912億円の減少となりました。リース負債の返済や配当金の支払い、短期借入債務の返済等により資金が減少したものです。

 配当は持続的な利益成長に合わせて増配していく「累進配当」を行う方針としています。自己株式の取得は、『中期経営戦略2018』期間中のキャッシュ・フローや適切な資本水準等を考慮の上、資本効率の向上を図るために実施したものです。負債による資金調達は、流動性と財務健全性の観点で適切な水準を維持する方針としています。

設備投資等の状況

 2020年度における重要な設備投資等はありません。

資金調達の状況

 三菱商事グループは、資金調達の主要な手段として機動的に社債を発行しています。
 2020年度、Mitsubishi Corporation Finance PLC(当社100%出資、在英国)はEuro Medium Term Note Programmeに基づく50百万米ドル(約54億円)の社債を発行しました。

重要な企業結合等の状況

 2020年度における重要な企業結合等はありません。

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2021/06/25 12:00:00 +0900
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