社会を取り巻く環境は日々大きく変化しており、SDGs(持続可能な開発目標)に代表される社会課題の解決・地球環境への貢献と、新しい価値創造をはじめとした経済価値向上の両立等、企業経営に求められる要素は多様化しております。テクノロジーの進化を背景に様々なモノ・ヒトがつながることで、企業活動から人々の消費・生活スタイルまであらゆる社会トレンドが変化しており、各業種における事業成長のためのデジタル関連投資が加速しております。
一方、IT市場における競争環境は激化しており、様々なプレイヤーが社会・テクノロジーの変化に合わせてサービス・ラインナップを拡大させる中、当社がお客様へ貢献し続けるために、更なるグローバルレベルでの事業競争力強化の必要性が高まっております。
前中期経営計画(2019年度~2021年度)では、グローバルで質を伴った成長をめざし、海外事業の収益性改善とデジタルへの取り組みの更なる加速を推進してきました。
海外事業の収益性改善については、事業構造改革の成果により北米が2021年度にEBITA率7%を達成しました。しかしながら、国内事業に比べると未だ収益性が低く、海外事業の更なる成長に向けて、引き続き収益性改善とデジタルシフトの推進に取り組んでいく必要があると認識しております。
デジタルへの取り組みの更なる加速では、グローバルオファリングによるグローバルビジネスの拡大や各リージョンにおける様々なデジタルビジネスの獲得など様々な成果を創出することができました。一方で、経営環境の見通しにもあるとおり、社会課題の解決・地球環境の貢献に向けてデジタルトランスフォーメーションは加速しており、更なる競争力の強化に向けた取り組みが必要と認識しております。
Global 3rd Stageに向けては、海外事業の質を伴った成長とデジタル領域における競争力の強化が継続課題であり、加えて、世界的に人財獲得競争が激化していることを踏まえ、多様な人財が長期に活躍できる環境・文化へ変革していくとともに、真のグローバル企業へと成長していくことが課題であると認識しております。
上記のような経営環境の見通し及び課題を踏まえ、当社グループは2022年度~2025年度の新中期経営計画を以下のとおり策定しました。
1.基本方針
Trusted Global Innovatorとして、未来に向けた価値をつくり、様々な人々をテクノロジーでつなぐことでお客様とともにサステナブルな社会を実現することをめざしていきます。
2.中期戦略
お客様事業の成長を支え、お客様とともにサステナブルな社会を実現していくために、これまで培ってきた顧客理解と高度な技術力でシステムをつくる力と、様々な企業システムや業界インフラを支え、人と企業・社会をつなぐ力を更に高めていきます。
具体的には、業界・技術のフォーサイトを起点とした変革提案と、高いアジリティを実現するアセットベースの価値提供により、経営変革・事業変革の構想策定から実現まで、End to Endの対応力を強化していくとともに、様々なモノやデータをつなぐEdge to Cloudサービス(注1)により、業界を超えて企業をつなぐ業際連携を実現し、企業・業界の枠を超えた新たな社会プラットフォームや革新的なサービスの創出をめざしていきます。
これらの取り組みをグローバル全体で推進していくため、NTTグループ傘下のNTT株式会社と海外事業を統合し、ITとConnectivityを融合したサービスをトータルで提供する企業へ進化していきます。コンサルティングやアプリケーション開発に留まらず、Connectivity領域までを含むデジタルトランスフォーメーションに必要なサービスラインナップを一元的に整備し、複雑化・多様化するお客様のニーズにグローバルレベルで対応していきます。
▶図1 新中期経営計画 戦略全体像 下記参照
戦略1.ITとConnectivityの融合による新たなサービスの創出
NTTグループとの更なる連携強化により、Edge to Cloud(注1)のサービス提供力を強化していきます。幅広い業界にシステムを提供する強みと組み合わせ、様々な顧客接点やデータをセキュアにつなぎ合わせることで、企業・業界の枠を超えた業際連携を実現し、新たな社会プラットフォームや革新的なサービスを創出していきます。
国内においてはソーシャルデザイン推進室を中心に各分野間の連携を強化し、海外ではSmart City(注2)分野や5G関連のビジネスを中心として、業際連携ビジネスの創出・拡大に取り組んでいきます。
戦略2.フォーサイト起点のコンサルティング力強化
各分野にコンサルティング専門組織を立ち上げるとともに、お客様や業界の未来(フォーサイト)を構想する方法論の整備とその実践の支援、コンサルティング人財の育成等、分野を横断的にサポートする機能を設置します。加えて、世界各地の業界・業務のスペシャリストが持つ様々な知見を集めて活用するネットワークを立ち上げます。これらの取り組みにより、お客様・業界の未来を構想するインダストリーコンサルティング力と、テクノロジー起点で未来を構想するテクノロジーコンサルティング力を強化し、共創パートナーとしてお客様の成長を支え、ビジネス変革を実現していきます。
戦略3.アセットベースのビジネスモデルへの進化
業界・業務のフォーサイト・ベストプラクティス、ソフトウェア、自社ツール等、お客様に提供できる価値を再利用可能な状態で集約化し、それらを活用したコンサルティングから、デリバリー・マネージドサービス(注3)をグローバル全体で推進していきます。これまでの受託SIを主体としたビジネスモデルから自ら提案・発信するビジネスモデルへと変革し、デジタル時代にふさわしいビジネスアジリティを備え、お客様への提供価値を最大化していきます。
また、戦略2、戦略3における取り組みを全社横串で連携させ変革を加速していくために、社長直轄の本社組織として「コンサルティング&アセットビジネス変革本部」を2022年7月に設置します。
戦略4.先進技術活用力とシステム開発技術力の強化
Emerging、Growth、Mainstreamの技術の成熟度に応じた3つ領域における活動を推進し、未来の競争力獲得に向けた先進技術活用力の強化と生産性の向上に向けたシステム開発技術力の強化を両輪で進めていきます。
(Emerging領域)
先進技術に対する感度が高い世界7カ国にInnovation Centerを立ち上げ、各地域にチームを組成し、イノベータ顧客との共創R&Dを実施することで、未来の競争力獲得に向けた技術やノウハウを獲得していきます。
(Growth領域)
前中期経営計画で取り組んだCoE活動を発展させたCompetency Centerの施策に基づき、今後成長が見込まれる技術のビジネス仮説の立案検証、認知度拡大、プリセールス・デリバリ支援を推進し、次の注力技術領域を育てていきます。
(Mainstream領域)
グローバルビジネスの拡大に向けて、テクノロジーの注力領域を定め、主流となるグローバルテクノロジーのアセット開発・展開を推進していきます。
戦略5.人財・組織力の最大化
グローバルで最先端技術が学べる育成システムや、高い専門性に応じた処遇の実現等、社員の自律的な成長を促す制度を整備するとともに、業務の特性等に応じて働く時間と場所を柔軟に設定できる環境を実現することで、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(注4)を推進し、従業員エンゲージメントを向上していきます。
多様な人財一人ひとりが自分自身を表現し、活躍できる組織機能・カルチャーを持った、働く人にとって魅力的な企業へと変革し、各戦略の実行を支える人財・組織力を最大化するとともに、将来にわたっての企業価値を高めていきます。
事業成長に向けたグローバル連携機能の強化と戦略投資
これらの5つの戦略を支える仕組みとして、グローバルを前提としたMarketing、Innovation、Governanceの機能を強化し、事業環境の変化に迅速に対応していくとともに、投資と成長の好循環を確立し、Global 3rd Stageに向けた事業成長を実現していきます。
具体的には、Industry、Technologyの注力領域に加え、サステナビリティやIOWN(注5)といった社会変革を実現するテーマに対する投資枠を新設し、将来のビジネス創出に向けた戦略的な投資をグローバル全体で推進していきます。
サステナビリティ経営
経営環境の見通しで示したとおり、社会を取り巻く環境は日々大きく変化しています。当社は、この大きな変化の局面を更なる成長の機会と捉え、これまでのESG経営の取り組みを拡大し、長期的な視点を持ったサステナビリティ経営として推進していきます。
新中期経営計画では、「Realizing a Sustainable Future」というスローガンのもと、以下の3つの軸を定め、9つのマテリアリティを設定しました。
「Clients’Growth サステナブルな社会を支える企業の成長」
「Regenerating Ecosystems 未来に向けた地球環境の保全」
「Inclusive Society 誰もが健康で幸福に暮らせる社会の実現」
これらマテリアリティを元に、企業活動と事業活動を通じてサステナブルな社会の実現に取り組んでいきます。
▶図2 NTTデータのサステナビリティ経営 下記参照
なお、サステナビリティ経営の推進に向けて、2022年7月に非財務指標を中心とした事業戦略を統括するサステナビリティ経営推進部を設置します。
NTTデータの企業理念「情報技術で、新しい『しくみ』や『価値』を創造し、より豊かで調和のとれた社会の実現に貢献する」は、大きな変化を迎える時代においても、当社の存在意義そのものです。今後もこの企業理念のもと、当社は未来に向けた価値をつくり、様々な人々をテクノロジーでつなぐことでお客様とともにサステナブルな社会を実現していきます。
3.新中期経営目標※1
連結売上高 4兆円超
連結営業利益率※2 10%
海外EBITA率※2 10%
顧客基盤※3 120社
※1 当社とNTT株式会社(以下、NTT, Inc.)との事業統合を前提とした数値であり、当社第34回定時株主総会の第2号議案が承認されることを前提とする。
なお、NTT, Inc.の業績予想値については、現時点で把握可能かつ一定の前提に基づく数値。
※2 M&A・構造改革等の一時的なコストを除く
※3 年間売上高50億円以上(日本)、もしくは50百万ドル以上(日本以外)のお客様。
(注1)Edge to Cloudサービス
IoT端末やスマートデバイス、その近くに設置されたサーバでデータ処理・分析を行うエッジコンピューティングと、データを集中管理・処理するクラウドコンピューティングを組み合わせたアーキテクチャのことです。
(注2)Smart City
IT技術をインフラ等の運用に活用する次世代型の都市のことです。
(注3)デリバリー・マネージドサービス
ITサービスに付随するハードウェア、ソフトウェア等の導入などの環境構築から管理運用までを一体型で提供するサービスのことです。
(注4)ダイバーシティ, エクイティ & インクルージョン
持続可能な社会の実現のために取り組むべき多様性、公平性、包摂性のことです。
(注5)IOWN
Innovative Optical and Wireless Networkの略称で、光を中心とした革新的技術を活用した、これまでのインフラの限界を超えた高速大容量通信ならびに膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤のことです。