第44回定時株主総会招集ご通知 証券コード : 9984

対処すべき課題

 世界の株式市場は米国・欧州中央銀行による金融引き締めや地政学リスクの高まりの影響で前年度に下落したものの、多くの市場が2023年度は上昇基調で推移しました。2023年度において、上期は、米国景気の先行きを巡って見方が分かれる中でも、生成AIへの期待の高まりを背景に米国半導体企業および大型テクノロジー企業の株価が上昇しました。その後、利上げ打ち止めとその後の利下げ期待、米国景気が軟着陸するとの見方が広がったことで、2023年10月後半には米国長期金利が低下に転じ、下期は米国株式市場全般が上昇基調で推移しました。米国以外では、香港や上海に上場する中国企業の株価は厳しい状況が続いたものの、株高の流れが日本やインドをはじめ世界的に広がりを見せました。ベンチャー・キャピタル市場においては、2023年の米国の投資総額は依然として2021年の水準を大幅に下回ったものの(注1)、生成AIを手掛ける有力企業に対して活発に投資が行われました。新規株式公開(IPO)市場においては、2023年の米国のIPO件数は引き続き前年を下回ったものの(注1)、2023年末から本格的な再開の機運が高まっていると考えられます。
 かかる経営環境において、当社グループは中長期的にNAV(Net Asset Value:保有株式価値−調整後純有利子負債で算出(注2))を最大化させるために以下1〜3に注力しています。また、保有株式価値に占める割合が大きく、最重要資産と位置付けられるアーム、SVFおよびソフトバンク㈱はそれぞれの株式価値の拡大を図るため以下4〜6に挙げた取り組みを行っています。

(注)

1.CBインサイツ『State of Venture 2023 Report』による。
2.保有株式価値および調整後純有利子負債は、いずれもアセットバック・ファイナンスにおける満期決済金額または借入金を除く。また、調整後純有利子負債の算出からは、当社グループのうち、上場子会社であるソフトバンク㈱(LINEヤフー㈱およびPayPay㈱をはじめとする子会社を含む)およびアーム、ならびにSVF1、SVF2、LatAmファンドなど独立採算で運営される事業体に帰属する有利子負債および現預金等(債券投資を含む)を除く。なお、SB Northstarの有利子負債(ただし、特定の有利子負債を除く)および現預金等(債券投資を含む)は調整後純有利子負債の算出に含む。

1 既存投資先の価値拡大と新規投資の実行

 2023年9月にIPOを果たしたアームの株価が2023年度末までに大幅に上昇したことにより、保有株式価値およびNAVは前年度末から大幅に増加しました。アームを中核とした現在のポートフォリオは、主にAIの進化を支えるハードウエアレイヤーからAIを活用したアプリケーションレイヤーまで幅広い投資先で構成されており、AIによって生まれつつある新潮流を捉えるための基盤が整っています。その上で将来の成長をより着実なものにするため、当社グループは既存投資先のさらなる価値拡大に取り組むとともに、成長性の高いAI関連企業への新規投資を進めています。
 既存投資先のうちアームおよびソフトバンク㈱については、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下でそれぞれが後述の成長戦略を着実に遂行することで、当社保有株式価値の拡大につながると期待しています。SVFについては、今後、IPO市場の本格的な再開にともない投資先の株式公開とその後のエグジットが順次進んでいくと期待しています。また、ストラテジックバイヤーや他のアセットマネージャーへの売却の機会も引き続き探っていきます。
 新規投資については、エグジットによる回収資金も活用しつつ、AIという投資テーマに基づき投資案件を厳選し、経営に深く関わることで付加価値を提供できるような戦略投資についてはソフトバンクグループ㈱または100%子会社から行い、それ以外はSVFを通じた投資を行うことを想定しています。

2 財務方針の堅持

 ソフトバンクグループ㈱は、LTV(Loan to Value:調整後純有利子負債÷保有株式価値で算出(注2))を金融市場の平時は25%未満、異常時でも35%を上限として管理するとともに、2年分の社債償還資金以上の手元流動性を確保することを財務方針として掲げています。
 前年度は新規投資を大幅に抑制するとともに資産の資金化や負債の返済を進める「守り」を徹底し、財務基盤を大幅に強化しました。2023年度は投資を徐々に再開しましたが、LTVは依然として25%を大幅に下回る水準で推移しました。2年分の社債償還資金を大きく上回る潤沢な手元流動性とあわせて、ソフトバンクグループ㈱の財務は極めて安全な状態にあると考えており、今後の成長投資に向けて十分な調達余力を有していると認識しています。
 2024年度以降、NAVのさらなる拡大に向けて継続的に新規投資を実行する中で、LTVは市場環境に合わせた適切な水準に回帰していくことが見込まれますが、新規投資や保有株式価値の状況に応じて適切に純有利子負債をコントロールするとともに、資産の資金化や子会社を含む投資先からの配当収入および分配金なども得ることで、財務方針を遵守していきます。

3 サステナビリティの推進

 当社グループは、社会の持続的な発展と当社グループの中長期的な成長の両立を実現するために、企業活動においてサステナビリティを推進することが重要だと考えています。こうした考えの下、サステナビリティに関するリスクおよび機会を認識した上で、それぞれのリスクの軽減と機会の追求に取り組んでいます。

4 アーム:AI革命を捉えた成長戦略の遂行

 アームは、半導体技術が世界で最も重要な資源の一つとなった現在、半導体技術開発のグローバル・リーダーとしてこれからのコンピューティングの在り方を左右する存在になりつつあると当社グループでは認識しています。アームのプロセッサー・テクノロジーは、高機能プロセッサーとしては世界で最も広くライセンス供与・採用されており、スマートフォンではほぼ全て、タブレットとデジタルテレビのほとんどで使用されているほか、組込プロセッサー用チップでも高い割合で搭載されています。
 世界中の2,800億台以上のデジタル機器に採用されているアームのアーキテクチャーは、高性能と高エネルギー効率を両立しており、クラウドからエッジ、エンドポイントに至るまで、現在そして未来のAIワークロードを実行するために一貫性がありセキュアな基盤を提供しています。当社グループは、アームはAIが築く未来の根幹を支えていくと考えています。
 現在、生成AIや大規模言語モデルをはじめとするAI技術の進展・普及が、アームの技術に対する需要を加速度的に後押ししています。多くのAIアルゴリズムは非常に計算量が多く、質問に対する答えを迅速に提供するために高性能な中央演算処理装置(CPU)を必要とします。現在AI処理の多くはクラウド上で行われていますが、スマートフォンや自動車等の端末側でリアルタイムにデータを処理するエッジAI(注3)へのシフトが着実に進んでいます。アームが提供する高性能かつエネルギー効率に優れたCPUは、エッジAIにおける推論を実行するために最適なソリューションであり、エッジ・コンピューティング(注3)の進化とともに、AI時代におけるアームの存在感は高まっていると認識しています。
 アームは持続的な成長のため、以下に挙げた市場シェアの維持・拡大、ロイヤルティー単価の増加、およびエコシステムの強化に継続的に取り組んでいます。

(注)

3.スマートフォンや防犯カメラ等の利用者側の端末(エンドポイント)やその近くに設置するサーバーなどのネットワーク周縁(エッジ)部分でデータを処理するコンピューティング手法をエッジ・コンピューティングといい、データをクラウドに集約しクラウド上の高性能サーバーで処理を行うクラウド・コンピューティングに対し、不要な通信を避けることで通信遅延やネットワーク負荷の低減などを実現する。この仕組みをAI処理に応用・発展させたものをエッジAIという。


a. 市場シェアの維持・拡大
 アームは、99%以上のシェアを持つモバイル・アプリケーション分野に加えて、自動車やクラウド・サーバー分野を中心に市場シェアを拡大しています。アームの顧客は、未来のAIアルゴリズムを実行するために欠かせない高性能かつ高エネルギー効率のチップを開発するための投資を加速しており、アームのテクノロジーに対する需要が増加しています。アームは、各エンドマーケットに特化した幅広いコンピュート・テクノロジー・ポートフォリオの提供に加えて、顧客がより高いライセンス料を支払うことでより広範なアームのテクノロジーにアクセス可能となるサブスクリプション型のライセンス契約を導入するなど、市場シェアの拡大に向けた柔軟な取り組みを行っています。アームは今後も、技術革新の最前線で、次世代のコンピューティング・デバイスのために必要な半導体IP(回路の設計情報などの知的財産)を提供していくことを企図しています。

b. ロイヤルティー単価の増加
 AIが急速に進化を遂げる中、高性能かつ高エネルギー効率のチップへの需要が高まり、チップ設計はますます複雑化しています。近年、アームの最新世代テクノロジーである「Armv9」や、アームの複数のIPを組み合わせたコンピュート・サブシステム(CSS)の採用が、ハイエンドのスマートフォン向けチップやサーバー向けチップを中心に進んでいます。CSSはアームのCPUと他のオンチップ・テクノロジーを組み合わせたもので、事前に統合・検証され、主要なファウンドリー(半導体受託生産事業者)の製造プロセスのために最適化されています。CSSの採用により、顧客はより短い期間でより簡単にチップを設計し、市場投入までの時間を短縮することが可能になります。アームは、「Armv9」やCSSといったより高度な技術のチップ当たりのロイヤルティー単価を高く設定しており、ロイヤルティー収入を牽引役とした中長期的な売上高の拡大を実現するため、これらの技術の普及・拡大を推し進めています。

c. エコシステムの強化
 アームの成長は、アームベースの製品向けにソフトウエアを開発する1,500万人を超えるエンジニアから成るエコシステムにより下支えされています。プログラムやアプリケーションは特定のCPUアーキテクチャー上で最適に動作するように作られるため、より多くのソフトウエアと互換性があることがCPUの成功を左右します。アームは過去30年以上にわたり、ソフトウエアエンジニアがアームベースのチップ向けにプログラムやアプリケーションを効率的に開発するために必要なツールやライブラリーを提供するなど、エコシステムの構築・醸成に注力してきました。今後も、あらゆる場所でAIがアームの基盤上で動作するために必要なエコシステムへの投資を継続していきます。

5 SVF:投資リターンの最大化

 SVF1、SVF2およびLatAmファンドは、主にAIを活用した成長可能性の大きなテクノロジー企業への投資を目的としたファンドです。各投資ファンドを運営する当社100%子会社(SVF1を運営するSBIAおよびSVF2とLatAmファンドを運営するSBGA、以下総称して「ファンド運営子会社」)は、以下の取り組みを通じてそれぞれの存続期間の中で各投資ファンドのリターンの最大化を目指しています。

a. さまざまな地域やセクター、テクノロジーへの分散投資
 SVF1、SVF2およびLatAmファンドはいずれも、存続期間が設立から10年超の長期にわたる私募投資ファンドです。AIという投資テーマの下、中長期的な視点からさまざまな地域やセクター、テクノロジーに分散投資を行うことで、株式市場の変動を乗り越えながら、中長期的なリターンの創出に取り組んでいます。

b. 投資先価値向上の追求
 ファンド運営子会社は、既存投資先の中で株式価値の大きい会社またはその向上の余地の大きい会社を選定し、さまざまな戦略的支援やネットワークを通じて投資先の持続的な成長を促すことにより、SVFの保有株式価値の最大化を追求しています。具体的には、当社グループおよびその投資先、取引先までを含めたエコシステムを通じてパートナーシップや協力関係を築くことにより、収益性と成長性を高める機会を捉え、実行することを目指しています。また、投資先の経営陣が成長を模索する中、クロスボーダーでの事業拡大や収益性改善のための助言を提供するとともにガバナンス体制のモニタリングを行い、投資先の健全な成長を支援しています。

c. 最適な出口戦略による投資回収
 ファンドのリターン、ひいてはソフトバンクグループ㈱を含むリミテッド・パートナーへの分配を最大化するために、ファンド運営子会社は規律あるアプローチの下で適時・適切な保有資産のエグジットを実施する方針です。エグジットは、ストラテジックバイヤーや他のアセットマネージャーへの売却、または投資先の上場を通じて行われます。投資先の上場後は、投資時の計画に対するパフォーマンスや市場環境、株価の動向を慎重に評価しつつ、計画的に売却する仕組みを設定しています。また、株式を担保とした資金調達を行いリミテッド・パートナーへの分配を行う一方、リターンを最大化するために実際の売却は最適と考えるタイミングで行うこともあります。
 2023年度においては、SVFの投資先5社が上場を果たし、活動開始以来累計の上場社数は50社となりました。SVFは長期投資ファンドであり、ファンド運営子会社は最適なエグジットの手段・時期を見極め、短期的な市場の変動による影響を抑えながら、中長期的な視点でリターンの最大化を目指しています。

d. 適切な運用体制の構築
 投資の成功の再現性を高め、持続的にリターンを生み出すためには、それを可能にする組織体制を構築すること、特に優秀な人材の確保および維持が不可欠です。ファンド運営子会社では、投資銀行やベンチャー・キャピタルなどで豊富な経験を積んだシニア・リーダーたちが運営に当たっています。これまでに、グローバル展開およびポートフォリオ管理のためのニーズと規模を満たす投資・運用・資金調達・管理の各機能およびマネジメント陣を備えた組織を築き、継続的にその改善を行っています。こうした専門家集団によるチームアプローチを取ることにより、組織的に知見の蓄積・共有を図り各投資ファンドの持続的な成長を目指しています。

6 ソフトバンク㈱:「Beyond Carrier」戦略の遂行

 コロナ禍をきっかけとした人々の生活様式の変化や深刻化する人手不足に対応するため、テレワークやオンラインショッピング、非接触型決済の利用拡大など、企業や行政のデジタル化は必要不可欠となりました。デジタル化は、生産性向上やイノベーションの創発を促すことで今後の日本の社会を変革していく原動力となっています。加えて、文章・画像・プログラムコードなどさまざまなコンテンツを生成することができる生成AIにより、この変革のスピードは加速すると考えています。
 こうした中、当社グループで国内事業を担うソフトバンク㈱は、成長戦略「Beyond Carrier」の下、コアビジネスである通信事業の持続的な成長を図りながら、通信キャリアの枠を超え、情報・テクノロジー領域のさまざまな分野で積極的に事業を拡大することで、企業価値の最大化を目指しています。具体的には、①通信事業のさらなる成長、②エンタープライズ事業におけるDX/ソリューションビジネスの拡大、③メディア・EC事業の成長、④ファイナンス事業の成長、および⑤新規事業の創出・拡大に加え、⑥コスト効率化に取り組んでいます。
 財務戦略としては、ソフトバンク㈱は、調整後フリー・キャッシュ・フロー(注4)を重要な経営指標と考えており、高い株主還元を維持しながら、成長への投資を実施していくため、今後も同フリー・キャッシュ・フローの安定的な創出を目指しています。また、健全な財務体質を維持しつつ、適切な財務レバレッジをともなった資本効率の高い経営を行っていきます。
 なお、メデイア・EC事業の中心的な企業であるLINEヤフー㈱は、2023年11月に公表した不正アクセスによる情報漏洩に関して、2024年3月および4月に総務省から行政指導を、同年3月に個人情報保護委員会から勧告および指導を受けました。同社では、今回の行政指導および勧告・指導を真摯に受け止め、安全管理措置および委託先管理の抜本的な見直しや対策の強化、セキュリティガバナンスの本質的な見直しや強化を進めるとともに、再発防止策を順次実施していきます。ソフトバンク㈱は、同社の親会社として、実効的なセキュリティガバナンス確保の方策を検討していきます。

(注)

4.調整後フリー・キャッシュ・フロー=フリー・キャッシュ・フロー+(割賦債権の流動化による調達額―同返済額)


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2024/06/21 13:00:00 +0900
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