事業の経過及びその成果

当連結会計年度(2017年1月1日から2017年12月31日)における日本経済は、政府や日銀の経済対策により、緩やかな回復基調が続きました。食品業界におきましては、「時短・簡便」「健康」「個食」など生活者が求める価値の多様化が進展する中、個人消費は堅調に推移いたしました。

このような状況の中、当社は、7年後にありたい姿として「食を通じて社会問題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業」になることを掲げております。2016年12月期からの3年間を対象とする中期経営計画では、ありたい姿の実現を目指し、重点課題である、①既存事業・カテゴリーのバリューアップ、②イノベーションによる新たなビジネスモデルの創造、③グローバル化の推進、④働き方の改革による生産性の向上などに取組み、更なる企業価値の向上に努めております。

売上高につきましては、主に国内事業において、主力の飲料事業の販売が好調に推移したことなどにより増収となりました。

営業利益につきましては、主に国内事業において、売上高の増加に加えて、販売促進費の効率的な活用など、収益構造の改革に取り組んだことなどにより、増益となりました。

なお、当社の連結子会社であったPreferred Brands International,Inc(以下、PBI社)の株式、及び投資有価証券の売却により、それぞれ21億71百万円、17億21百万円を特別利益に計上しました。

また、当社の連結子会社であるKagome Australia Pty Ltd.において減損損失12億97百万円を特別損失に計上しております。

この結果、当連結会計年度の売上高は、前期比5.8%増の2,142億10百万円、営業利益は前期比9.3%増の119億68百万円、経常利益は前期比11.5%増の126億18百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比49.3%増の101億円となりました。

セグメント別の業績の概況は、次の通りであります。

なお、当連結会計年度より、国内事業の事業セグメント間の連携強化や国際事業の垂直統合型ビジネスの確立などの経営戦略方針に基づく管理区分への見直しに伴い、「飲料」「食品」「ギフト」「通販」「業務用」を集約し、「加工食品」へ、「国際業務用」「種子・育苗」「コンシューマー事業」を集約し、「国際事業」へ変更しております。

国内事業
売上高
1,702億73百万円
(前期比6.6%増)

各事業別の売上高の状況は以下の通りであります。

加工食品
売上高:1,576億42百万円
(前期比7.3%増)

主要製品及び商品等

野菜ジュース 
トマトジュース 
トマトケチャップ 
トマト系調味料 など

加工食品事業では、飲料や調味料等の製造・販売を手掛けております。

[飲料]

飲料カテゴリーにつきましては、生活者の健康期待に対応できる「生涯健康飲料」を目指し、「ひとりひとりに、野菜をおいしく、かしこく」をキーワードに、新しい提供価値の開拓を図ることで野菜飲料全体の需要を喚起する活動に注力いたしました。

トマトジュースにつきましては、2016年2月に日本初のHDL(善玉)コレステロールを増やす機能性表示食品として発売した「カゴメトマトジュース」に対してお客様より好評を頂いております。血中コレステロール対策として継続飲用頂くお客様が増え、売上は好調に推移しております。

野菜ジュースにつきましては、2017年10月に血圧を下げる働きが報告されているGABAを含む機能性表示食品として発売した「カゴメ野菜ジュース」の売上が、好調に推移しております。

「野菜生活100」シリーズにつきましては、朝食における野菜不足の解決を目指す「朝ベジ」の提案に注力いたしました。また、野菜飲料の新しい飲用シーンを開拓するために「野菜生活100 Smoothie」シリーズの拡販に注力いたしました。お客様からは、今までの野菜飲料にはない飲みごたえや、間食に適した容器に高い評価を頂き、好調に推移しております。

「野菜一日これ一本」シリーズにつきましては、食前に野菜ジュースを飲むことで、食後の血糖値上昇を抑制できる「野菜ジュースファースト」の価値伝達活動を強化したことにより、堅調に推移いたしました。

[食品他]

トマトケチャップにつきましては、家庭用では、「トマトで塩分コントロール」をキーワードに、トマトケチャップの価値伝達やプロモーションを強化し、業務用では、ホテル朝食など、ビュッフェに最適なディスペンサーによる需要喚起策などに注力した結果、販売が堅調に推移いたしました。また、全国各地のご当地ナポリタンの中から、日本一を決める「カゴメ ナポリタンスタジアム 2017」を2017年5月に開催し、トマトケチャップ全体の需要を喚起する活動にも注力いたしました。

トマトケチャップを除いたトマト系調味料につきましては、お好みの魚介と野菜をトマトソースで蒸し煮するメニュー「トマトパッツァ」が、「野菜が摂れる魚介メニュー」として高い評価を頂いており、内食、中食、外食でのメニュー化など育成に注力いたしました。

その他、贈答向け商品は、健康・おいしさ・思いやり・限定感といった当社ならではの価値を持つ商品の販売に注力いたしました。また、通販向け商品は、主力の飲料である「つぶより野菜」や飲料に次ぐ柱として育成に注力しているサプリメントが好調に推移いたしました。

農事業
売上高:114億9百万円
(前期比0.7%減)

主要製品及び商品等

生鮮トマト(高リコピントマト、β-カロテントマト、ラウンドレッド など) 
ベビーリーフ 
パックサラダ など

主力である生鮮トマトにつきましては、トマトの栄養素であるリコピンを豊富に含む「高リコピントマト」やβ-カロテンを多く含む「β-カロテントマト」など、高付加価値商品の販売に注力いたしました。

その結果、前期から出荷量は増加しましたが、年間を通じた市況悪化により、売上高は減少し、営業損失となりました。

生鮮トマトに次ぐ新たな柱として育成しているベビーリーフについては、2017年10月から11月にかけて洗わずにそのまま使えるベビーリーフ「Green Vege Bowlベビーリーフミックス」、「Green Vege Bowlベビースピナッチ」の発売を開始いたしました。

その他事業
売上高:180億57百万円
(前期比7.8%増)

主要製品及び商品等

運送・倉庫業 
不動産賃貸業 
業務受託事業 など

運送・倉庫業、不動産賃貸業、業務受託事業などは、好調に推移いたしました。

国際事業
売上高
488億47百万円
(前期比3.1%増)
国際事業

主要製品及び商品等

トマトペースト、ダイストマト 
ピザソース、トマトケチャップ 
トマト・野菜種子 
野菜飲料 など

国際事業は、トマトの種子開発から農業生産、商品開発、加工、販売までの垂直統合型ビジネスを経営戦略の柱とし、事業を展開しております。

当事業における売上高は円安による好影響が含まれており、この影響を除く売上高は前期比で1.1%減となります。

主な子会社における現地通貨建売上高の概要は以下の通りであります。

KAGOME INC.(米国)は、グローバルフードサービス企業向けの販売は堅調に推移しましたが、当社との取引時期を変更したことによる一時的なグループ内売上の減少があり、減収となりました。Holding da Industria Transformadora do Tomate, SGPS S.A.(ポルトガル)は、堅調に推移いたしました。Kagome Australia Pty Ltd.(豪州)は、主要原材料である生トマトの収穫期に発生した記録的な降雨など、天候不良の影響を受け、収穫量が大幅に減少したことにより、減収となりました。

なお、PBI社(米国)は、2017年11月に株式を売却し、連結の範囲から除外したことに伴い、当連結会計年度は同社の10ヶ月間の売上高を連結しております。

会社の経営上の重要な事項

該当事項はありません。

研究開発の状況

当社グループは、独創的でイノベーティブな製品開発や健康情報発信を行うため、品種・栽培技術、素材・加工技術、機能性エビデンスに関する研究を研究施設併設の試験圃場やパイロットプラント等で行っております。また、当社グループの事業基盤を強化するため、品質保証技術の高度化と、技術知的財産の保護・活用に取り組んでおります。

また、長期経営ビジョン「トマトの会社から、野菜の会社に」の実現に向け、経営戦略と研究テーマの連動、社内外の連携・協働による新たな研究テーマやコンセプトの創出を積極的に進めております。2017年10月に国立研究開発法人 産業技術総合研究所との間で包括的な共同型研究契約を締結し、研究者を派遣しました。異業種も含めたオープンイノベーションによる新たな価値創りを加速させ、長期ビジョンの達成を目指しております。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、33億46百万円であります。

本年度の主な概要とその成果は、次の通りであります。

①品種・栽培技術研究の分野においては、トマトの遺伝資源の蓄積と新品種開発、栽培技術研究を推進し、温暖化対策としての病害抵抗性を有する生鮮トマト品種や、農作業労働者の負荷の軽減に対応した機械収穫適性の高い加工用トマト品種など、計4件の品種登録出願を行いました。また、子会社のUnited Genetics社との連携を強化し、トマト品種開発のスピード・効率の向上に努めています。加えて、野菜の会社に向けて、野菜の分野における研究を拡充、推進しております。

②素材・加工技術研究の分野においては、トマト・野菜本来の香味、性状や栄養価値・機能を最大限引き出した新規素材の開発、及び加工技術の高度化を行い、商品の価値を高めるための活動を推進しております。本分野は特に、自社開発技術のみならず、他社技術との連携を積極的に進めております。

③機能性エビデンス研究の分野においては、緑黄色野菜を主とした機能性研究を推進し、機能性表示食品の届出や健康情報の発信を行っております。本年度、「カゴメ野菜ジュース」において血管の収縮抑制や高めの血圧降下の効果を実証し、“血圧が高めの方に” と表示した機能性表示食品を実現いたしました。また、「ブロッコリースプラウトの成分“スルフォラファン” の肥満抑制」に関するリリースを行っております。加えて、産官学連携の弘前大学のセンターオブイノベーション(COI)に参画し、超多項目の健康ビッグデータの解析を通じて、健康長寿に役立つ食や食習慣の解明に取り組んでおります。

④食品安全部では、当社グループの事業を支えるため、「畑から一貫して安全を保証する基盤技術」を強化しております。本年度は特に、事業拡大分野である生鮮野菜・生鮮飲料の微生物管理技術の高度化に取り組んで参りました。

⑤商品開発部では、飲料分野で、野菜由来のGABAを含み“血圧が高めの方に”と表示した「カゴメ野菜ジュース」の導入により、機能性表示食品を拡充しました。また、『野菜生活100』と『GREENS』ブランドでスムージー新商品を導入し、スムージーバーを展開しました。調味料・調理食品分野では、糖度14の贅沢な甘さとコクがある味わいの「濃厚あらごしトマト」や、国産押し麦を使用したロカボ対応型の「糖質想いの」シリーズを、ギフト分野では、だしまで野菜にこだわった、野菜本来のおいしさを楽しめる「だしまで野菜のポタージュギフト」を市場導入しました。通販分野では、『農園応援』商品として希少な紅大豆をお届けする「山形かわにし紅大豆」を導入いたしました。

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