事業の経過及びその成果

 当連結会計年度(2018年1月1日から2018年12月31日)における日本経済は、台風や地震などの自然災害で一時的に落ち込んだものの、緩やかな回復基調が続きました。食品業界におきましては、「時短・簡便」「健康」「個食」など生活者が求める価値の多様化が進展しております。
 このような状況の中、当社は2016年12月期から3年間を対象とする中期経営計画のもと、「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業」を目指しております。具体的には、重点課題である①既存事業・カテゴリーのバリューアップ、②イノベーションによる新たなビジネスモデルの創造、③グローバル化の推進、④働き方の改革による生産性の向上などに取組み、更なる企業価値の向上に努めております。
 売上高につきましては、国内主力の飲料事業が堅調に推移した一方、国内農事業、国際事業は環境変化への対応が遅れたことにより想定を下回る成長となりました。その結果、前連結会計年度に当社の連結子会社であったPreferred Brands International, Inc.(以下、PBI社)の株式を売却したことによる同社売上高の純減を補うことができず、前期から減収となりました。
 営業利益につきましては、主に国内事業において、広告宣伝費や物流費が増加したこと、国際事業において、米国、ポルトガル各子会社が不振だったものの、国内加工食品事業の原価低減などの収益構造改革の推進により増益となりました。
 なお、資産効率を含めたコーポレート・ガバナンス向上の一環として、遊休資産及び政策保有株式の売却を推進した結果、固定資産売却益14億82百万円、投資有価証券売却益45億74百万円を特別利益に計上しました。また、2018年8月から9月に発生した台風により、甚大な被害を受けた加太菜園㈱について、事業の再開は不可能と判断し、2018年11月30日を以って解散いたしました。国際事業において種子事業を中心に事業構造改革に着手し、採算性の悪い販売拠点の閉鎖や販売戦略の見直しによる棚卸資産の廃棄をいたします。この結果、災害による損失12億71百万円、事業構造改善費用4億71百万円を特別損失に計上しました。
 以上により、当連結会計年度の売上高は、前期比2.0%減の2,098億65百万円、営業利益は前期比0.3%増の120億円、経常利益は前期比4.5%減の120億51百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比14.1%増の115億27百万円となりました。

●売上高・営業利益


●1株当たり当期純利益・1株当たり純資産


セグメント別の業績の概況は、次の通りであります。

国内事業売上高 1,704億2百万円(前期比0.1%増)

各事業別の売上高の状況は以下の通りであります。

 1  加工食品 

主要製品及び商品等 野菜ジュース トマトジュース トマトケチャップ トマト系調味料 など

売上高1,577億25百万円(前期比0.1%増)

 加工食品事業では、飲料や調味料等の製造・販売を手掛けております。
[飲料]
 飲料カテゴリーにつきましては、生活者の健康期待に貢献できる「生涯健康飲料」を目指しております。「野菜を手軽においしく提供すること」をキーワードに、様々な健康ニーズと飲用シーンに対応した商品の拡充や、機能性の強化など多面的・習慣的な飲用の開拓を図っております。
 トマトジュースにつきましては、2016年より機能性表示食品として販売しております。2018年からは、「善玉コレステロールを増やす」、「高めの血圧を下げる」という二つの機能性を表示した商品としてリニューアル発売し、好調に推移しました。
 「野菜生活100」シリーズにつきましては、「野菜生活100 Smoothie」について、間食だけでなく食事代替にもなるソイポタージュを関東限定で発売するなど新たなシーンの獲得を図り、20~40代の女性を中心に飲用領域の拡張が進んでおります。

[食品他]
 トマトケチャップにつきましては、家庭用では、ナポリタンなどの洋食メニューに加え、エビチリなど中華メニューへの活用をプロモーション提案いたしました。業務用では、主にホテルなどの朝食、ビュッフェに最適なディスペンサーによる需要喚起策等に注力し、堅調に推移いたしました。
 トマトケチャップを除いたトマト調味料につきましては、「基本のトマトソース」を使用した「10分トマトメニュー」の広告や店頭での提案を強化することにより、30~40代の主婦を中心に共感の声を頂き、好調に推移いたしました。また、家庭用と業務用のカテゴリーを超えた統合的な提案ができる営業体制を整え、拡大する中食市場に向けてベジタブル・ソリューションをテーマとして提案を強化してまいりました。その他、贈答用製品は、健康・おいしさ・思いやり・限定感といった当社ならではの価値を持つ商品の販売に注力し、好調に推移しました。通販製品は、主力の飲料である「つぶより野菜」やサプリメントが順調に拡大しています。

 2  農事業 

主要製品及び商品等 生鮮トマト(高リコピントマト、β-カロテントマト、ラウンドレッド など) ベビーリーフ パックサラダ など

売上高 114億64百万円(前期比0.5%増)

 生鮮トマトにつきましては、野菜に期待される成分への注目が高まるなか、高リコピン、βカロテン、GABAなど特定の成分を豊富に含む高付加価値商品のラインナップを広げました。2018年12月には、機能性表示食品として「GABAセレクト」を発売しました。しかし、低迷していた生鮮トマトの市況が春から夏にかけて一段と悪化したことに加え、供給過剰な市場構造への対応が遅れたことにより、売上高は増加したものの、前期に引き続き営業損失となりました。なお、生鮮トマトに次ぐ新たな柱として育成しているベビーリーフは、首都圏にて販売している「Green Vege Bowlベビーリーフミックス」、「Green Vege Bowlベビースピナッチ」について、洗わずにそのまま使える価値を評価され、販売が拡大いたしました。

 3  その他事業 

主要製品及び商品等 運送・倉庫業 不動産賃貸業 業務受託事業 など

売上高 186億96百万円(前期比3.5%増)

 運送・倉庫業、不動産賃貸業、業務受託事業などは、好調に推移いたしました。
 なお、物流費高騰など深刻化する食品物流の諸課題の解決に向けて、食品メーカー協働での取り組みを一層推進することを目的として、当社を含む食品メーカー5社で物流統合会社を2019年4月に発足する契約を2018年4月に締結いたしました。

国際事業売上高 463億90百万円(前期比5.0%減)

    国際事業 

主要製品及び商品等 トマトペースト、ダイストマト ピザソース、トマトケチャップ  トマト・野菜種子 野菜飲料 など

 国際事業は、トマトの種子開発から農業生産、商品開発、加工、販売までの垂直統合型ビジネスを経営戦略の柱とし、事業を展開しております。
 2017年11月にPBI社の株式を売却した影響を除く前連結会計年度との比較では、売上高は、前期比8.1%増となります。

 主な子会社における現地通貨建業績の概要は以下の通りであります。
 KAGOME INC.(米国)は、グローバルフードサービス企業向けの販売が堅調に推移したこと、また前連結会計年度に当社との取引時期を変更したことにより増収となりましたが、新しい製造設備の導入に伴う、稼働率の一時的な悪化などにより減益となりました。
 Holding da Industria Transformadora do Tomate, SGPS S.A.(ポルトガル)は、トマトペーストの市場価格の低迷等により営業損失となりました。
 Kagome Australia Pty Ltd.(豪州)においては、主要顧客向けの販売が堅調に推移したことに加えて、前連結会計年度より取り組んでいる事業の構造改革が順調に進展していることにより増収増益となりました。
 需要が拡大する西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)域内のトマト事業開発拠点として、前連結会計年度に設立したKagome Senegal Sarl(セネガル共和国)が、当連結会計年度から同国での加工用トマトの生産、販売を開始しております。
 また、香港・マカオにおける事業拡大と中国市場への進出を目指し、野菜飲料販売の合弁会社であるKagomeNissin Foods (H.K.) Co., Ltdの事業を開始いたしました。

会社の経営上の重要な事項

 該当事項はありません。

研究開発の状況

 当社グループは、独創的でイノベーティブな製品開発や健康情報発信を行うため、品種・栽培技術、素材・加工技術、機能性エビデンスに関する研究を研究施設併設の試験圃場やパイロットプラント等で行っております。また、当社グループの事業基盤を強化するため、品質保証技術の高度化と、知的財産の保護・活用に取り組んでおります。
 また、長期経営ビジョン「トマトの会社から、野菜の会社に」の実現に向け、経営戦略と研究テーマの連動、社内外の連携・協働による新たな研究テーマやコンセプトの創出を積極的に進めております。また、外部研究機関に研究員を派遣した、ネットワーク型研究拠点を拡充することで、オープンイノベーション型研究の強化を行っており、新たな価値創りを加速させております。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、35億57百万円であります。

本年度の主な概要とその成果は、次の通りであります。
 ①昨年度より進めている国立研究開発法人産業技術総合研究所との包括的共同研究の成果として、AI(人工知能)を用いてトマト加工品の異物・トマトの皮・ヘタの跡・変色部を高精度で検出する技術の開発に成功しました。今後、生産工場での実用化を目指します。
 ②2018年1月1日付で弘前大学医学研究科に共同研究講座「野菜生命科学講座」を開設しました。本講座は、野菜摂取が健康維持および疾病予防に役立つメカニズムを明らかにすること、および野菜不足の改善を促すため「野菜の充足度」を簡単に測定出来る技術開発を目的としており、得られた研究成果は「野菜摂取の促進」へつなげて参ります。
 ③品種・栽培技術研究の分野において、おいしさを訴求した生鮮トマト品種等、計4件の品種登録出願を行いました。また、本年度は、品種開発した生鮮トマトにおいて、血管の収縮抑制や高めの血圧を下げる効果を実証し、“血圧が高めの方に”と表示した機能性表示食品を実現し、「GABAセレクト」の発売に繋げました。
 ④名古屋大学大学院との共同研究成果として、トマトに含まれるリコピンが、にんにくやたまねぎ、油と一緒に加熱することで、体内に吸収されやすい構造への変化が促進されることを明らかにしました。引き続き、トマトメニューを摂る価値に繋がる情報を発信して参ります。
 ⑤商品開発部では、飲料分野にて「野菜生活100 Smoothie」に複数の新商品・リニューアル商品を導入し、シリーズの活性化を行うとともに、ブランド拡張のために「ソイポタージュ」2品を市場投入しました。調味料・調理食品分野では、簡単に手作りで野菜がとれる「野菜がはいったおかず調味料」2品、カゴメ独自の製法で作った『野菜だし』を使った「だしまで野菜のおいしいスープ」3品を発売しました。また、株式会社ロック・フィールドとの共同開発商品、スプーンで手軽に食べられる「ベジュレサラダ」を導入しました。乳酸菌分野では、生きて腸で働く植物性乳酸菌『ラブレ菌』商品の一つとして、「カゴメラブレ発酵豆乳ミックス」を発売しました。


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2019/03/27 12:00:00 +0900
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