第4号議案から第6号議案は、株主様からのご提案によるものであります。なお、以下の議案の要領および提案の理由は、提案株主様から提出されたものを原文のまま記載しておりますが、議案番号の削除・追加、表記の統一等の形式的な修正を行っております。
1.議案の要領
現行の定款に「第8章 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を新設し、第40条として、以下の条文を新設する。なお、本株主総会における他の議案(会社提案に係る議案を含む。)の可決により、本議案として記載した条文に形式的な調整(条文番号のずれの修正を含むが、これらに限られない)が必要となる場合は、本議案に係る条文を、必要な調整を行った後の条文に読み替えるものとする。
(資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応)
第40条 当社は、上場会社である限り、東京証券取引所が要請する「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の精神に則り、下記を実践する。
1.株主・投資家の視点から資本コストを捉え、開示する
2.株主・投資家の視点を踏まえて自社の株価を多面的に分析・評価する
3.バランスシートが資本コストや資本収益性の観点から効率的な状態となっているか点検し、改善が必要と考えられる場合にはその計画を開示・実践する
4.資本コストや資本収益性を意識した上で、事業ポートフォリオの見直しを含む経営資源の適切な配分を意識した抜本的な取り組みを行い、適切な経営資源の配分に基づくキャピタルアロケーション方針を開示する
5.資本コストを低減させるという意識を持ち、改善が可能と考えられる場合にはその計画を開示・実践する
6.中長期的な企業価値向上のインセンティブとなる役員報酬制度の設計を行う
7.中長期的に目指す姿の実現に向けて、どのような意図で各取り組みを実施するのか、各取り組みがどのように課題解決につながるのか、分かりやすく開示する
8.経営陣や取締役会が、株主・投資家との対話に主体的に関与する
2.提案の理由
弊社は2023年3月31日に東京証券取引所がプライム市場及びスタンダード市場の全上場会社を対象として要請している「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」(以下、「東証要請」といいます)の主旨に賛同しております。また、その対応が形式面にとどまらず、実効性の高いものであるために、2024年2月に東証が発表した「投資者の視点を踏まえた『資本コストや株価を意識した経営』のポイントと事例」(以下、「ポイントと事例」)に基づく、取り組みの継続的な検証が有効であると考えます。
当社においては、2024年5月に「企業価値向上の取り組み」を発表し、その中で公表された株主還元や政策保有株式売却の金額規模は、当社経営陣・取締役会による企業価値向上への取り組みが本気である事を印象付けるものでした。弊社は株主提案に込めた考えと大枠において整合的と考え、2024年の株主提案を撤回しました。一方、併せて2024年に弊社が当社取締役会に提案した下記3つの改善点については現状、対応が確認できていません。
1.資本コストや株価の「意識」を定量的に行う事。東証要請において一番肝心な点は上場企業が自社の資本コストや株価を分析し見解を持つ事です。弊社が拝見する限り、貴社は現時点で自社の資本コストやあるべき株価水準を(少なくとも定量的には)明確にされておられません。
2.投資判断基準としての投下資本利益率(ROIC)を採用し、その目標をコミットする事。原則として個別投資案件の評価・意思決定はROICが(加重平均)資本コストを超えるかどうかによって判断されるべきです。資本収益性が資本コストを満たさない投資は企業価値を棄損するものです。当社「企業価値向上の取り組み」はROE改善目標へのコミットを示しているものの、「R」の改善は既存事業が中心となってけん引すると理解しています。1.5兆円もの成長・基盤投資がそれぞれどの程度のリターンを生み出すのかは現時点で不透明感が強く、これらが資本コストを下回るものであれば長期的に企業価値の棄損につながる事を懸念します。
3.トップマネジメントによる株主・投資家との対話の機会を一層充実する事。トップマネジメントと投資家・株主との対話は企業価値向上プロセスのエンジンであり、私共はこれを少なくとも四半期に1回程度の頻度を確保して頂くことを希望します。
上記はいずれも「ポイントと事例」に内包されております。定款の記載事項にふさわしく普遍的な内容とするため、要領は「ポイントと事例」の大半を網羅するものとしました。
3.当社取締役会の意見
当社取締役会は、本株主提案に反対いたします。
反対の理由
本株主提案は、東京証券取引所が2023年3月31日に要請した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を踏まえて、同所が2024年2月1日に公表した「投資者の視点を踏まえた「資本コストや株価を意識した経営」のポイントと事例」に記載された取り組みを実践する旨を定款に新設することを求めるものです。
ご提案いただいた取り組みは今後の会社運営において考慮・検討すべき事項であると考えられます。しかしながら、当社が中長期的な企業価値向上のために実践すべき事項は、当社の経営戦略や経営環境といった柔軟性・流動性が高い事項を踏まえて、適時適切に都度決定していくべきものであり、会社を運営する上での根本規範を定める定款に、本株主提案のような定めを設けることは適切ではないと考えております。
当社は、創業の精神である「豊田綱領」を社是とし、創立以来の事業「繊維機械」に加え、「ソリューション(産業車両・物流)」「モビリティ関連」事業を両輪に、様々な産業に貢献し、広く社会に役立つことを原点として、社会と調和した持続的成長の実現を経営方針の根幹においています。当該経営方針の下、中長期的な企業価値向上に向け「2030年ビジョン」を見据え、2024年5月13日に「企業価値向上の取り組み」を公表し、資本コストや株価を意識した投資判断に基づいた経営に注力しています。具体的には、保有の合理性が認められる場合を除き政策保有株式を保有しない方針に基づいた政策保有株式の大幅削減による自己資本の圧縮、持続的な成長のための基盤投資、次世代の成長を加速させるR&D及びM&Aへの積極投資と収益性の改善、更には、安定的な配当及び自己株式取得を含めた株主還元を、バランスを取りながら行っております。
今後も、資本コストや株価を意識した経営の重要性を踏まえながら、株主・投資家との対話を一層充実させ、株主の皆様をはじめとしたステークホルダーの皆様に対する適時適切な情報開示に努め、企業価値向上に取り組んでまいります。
以上から、当社取締役会は、本株主提案に反対いたします。