1.議案の要領
当社の取締役等の総額は、2024年6月11日開催の定時株主総会において現金報酬額を年額7億円以内(うち、社外取締役分1.5億円以内)、株式報酬枠を年額2億円以内と承認されているが、今般、社外取締役を含む当社の取締役に対し、上記報酬年額と別に、年額7億円以内、付与株式数の上限54,000株の譲渡制限付株式付与のための金銭報酬債権を付与することとする。具体的な支給時期及び配分については、取締役会において決定するが、ROEとTSR(株主総利回り)を含む業績連動型のインセンティブ制度として設計し、かつ、業績基準を満たす場合には累計で固定報酬の3倍相当の譲渡制限付株式を今後3年間で付与するよう設計するものとする。
2.提案の理由
弊社は日本の取締役会の最大の弱点が各取締役による株式保有の少なさ、それによる株主目線の欠如にあると考えます。当社においても取締役の経済的利益の大半は基本報酬や短期業績に紐づけられており、一部業績の達成に紐づく報酬があるものの、譲渡制限付株式報酬の目的である株主との価値共有が不十分と考えます。取締役に当社の企業価値の持続的向上を図る経済的インセンティブを持たせ、株主と利益を一体化することで企業価値向上の成果を株主とともに享受することが必要です。
そこで、今般、取締役に対し、累計で固定報酬の3倍相当の譲渡制限付株式を今後3年間かけて付与することを提案します。
また、欧米においてはほぼすべての主要上場企業において、株主との価値共有に必要と考えられる一定量の株式について一定期間の継続保有要件を定める株式保有ガイドラインが採択されています。数年間の猶予期間を経て、トップマネジメントであれば基本報酬の3~5倍、社外取締役でも報酬の1倍とするケースが大半です。弊社は当社の取締役その他の経営陣にも、過去の常識にとらわれず、世界水準に劣らないオーナーシップのレベルを目指すこと、適切な開示を通じてそのコミットメントを示すことを提案し、株式保有ガイドラインを制定すべきと考えます。
3.当社取締役会の意見
当社取締役会は、本株主提案に反対いたします。
反対の理由
当社は、公正性と透明性を確保するとともに、当社の中長期的な業績と企業価値向上や持続的成長へのインセンティブを重視するという考えに基づき、会社業績との連動性を確保し、また、職責と成果の反映を基本的な考えとした、取締役の個人別報酬等の決定方針(以下「本決定方針」といいます。)を定めております。
具体的には、当社の社外取締役等の業務執行を伴わない取締役を除く取締役の報酬は、基本報酬としての固定報酬、業績連動報酬としての賞与と譲渡制限付株式報酬で構成されております。一方、社外取締役等の業務執行を伴わない取締役は、業務執行から独立した立場であることから、固定報酬のみとしております。なお、取締役の現金報酬の限度額は年額7億円以内(うち社外取締役分1.5億円以内)としております。
また、社外取締役等の業務執行を伴わない取締役を除く取締役の固定報酬と業績連動報酬(賞与および譲渡制限付株式報酬)との比率は、40:60 を目安(会長・社長の場合)とし(ただし、当該連結営業利益額等の状況に応じて、上記と異なる比率とすることを妨げないものとしております)、また、業績連動報酬のうち、賞与と譲渡制限付株式報酬との比率は、70:30 を目安としており、譲渡制限付株式報酬の総額は年額2億円以内、総数は合計6万株以内としております。
このように、当社の本決定方針は、現時点の当社を取り巻く環境等に照らして、適切かつ健全に当社経営陣と当社株主との価値共有を図りつつ、企業価値向上や持続的成長へのインセンティブを付与するものとなっております。
加えて当社は、取締役社長、独立社外取締役より構成する「役員人事・報酬委員会」を設置しており、当該委員会の客観性および透明性を確保するため、委員長と委員の過半数を独立社外取締役としております。そして、当該「役員人事・報酬委員会」は、本決定方針、取締役の個人別報酬案、その他報酬に関する重要事項について審議しており、取締役会は、「役員人事・報酬委員会」の審議結果を踏まえ、本決定方針を決議しております。また、取締役会は、個人別報酬額の決定を、柔軟かつ機動的に行う観点から取締役社長へ委任しておりますが、取締役社長は、「役員人事・報酬委員会」の審議結果を踏まえ、本決定方針に従って、取締役の個人別の報酬額を決定しております。
以上のとおり、現行の取締役の報酬割合は、客観性・透明性が担保された「役員人事・報酬委員会」の審議を経たうえで決定されたものであります。
一方、本株主提案は、社外取締役を含む当社の取締役に対し、上記報酬年額と別に、年額7億円以内、付与株式数の上限54,000 株の譲渡制限付株式付与のための金銭報酬債権を付与することとし、業績基準を満たす場合には累計で固定報酬の3倍相当の譲渡制限付株式を今後3年間で付与するよう設計するものとする提案でありますが、当社の現状の取締役報酬制度は、その報酬割合に鑑みても、現時点の当社を取り巻く環境等に照らして、適切かつ健全に当社経営陣と当社株主の価値の共有を図る仕組みが導入されている制度であると考えており、これに加えて、取締役に対し上記の報酬を付与することは、現段階においては適切ではないと考えます。
したがいまして、当社取締役会としては本株主提案に反対いたします。
なお、当社取締役会は、本株主提案に反対いたしますが、役員報酬の構成や比率、水準、及び中長期的な視点におけるインセンティブ付与等、当社グループの更なる企業価値向上のためにあるべき報酬制度につき、お客様、取引先様、株主・投資家の皆様をはじめ、すべてのステークホルダーの皆様の利益に資する体系を継続的に検討してまいります。
以 上