企業集団の事業の経過及び成果等

1. 当社の現況に関する事項

(1)企業集団の事業の経過及び成果等

イ.企業集団の主要な事業内容
 当社グループは、当社、子会社166社、子法人等87社及び関連法人等53社により構成される企業集団であり、「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」をめざし、銀行業務、信託銀行業務、証券業務を中心に、クレジットカード・貸金業務、リース業務、資産運用業務、その他業務を行っております。


ロ.金融経済環境
 当年度の金融経済環境でありますが、世界経済は、数次に及ぶ新型コロナウイルス感染症拡大の波に直面しつつも、ワクチンの普及等を受けた経済活動正常化の動きや各国政府の対策等を背景に、総じて回復を続けました。一方で、コロナ禍の行動制限が残るなかでの需要回復は、各種の供給制約を通じて、世界的なインフレ圧力の高まりをもたらしました。第4四半期に入ると、ロシア・ウクライナ情勢の急転に起因して主要先進国中心に厳しい対露経済制裁措置が導入され、ロシアの生産シェアが高い原油や天然ガス、小麦等の資源・穀物価格急騰や経済の先行き不透明感の高まりにより企業や家計のマインドが世界的に悪化しました。わが国では、新型コロナウイルス感染症拡大時に緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置の適用といった感染対策が講じられ、経済活動正常化との両立が模索されました。
 金融情勢に目を転じますと、株価は、景気の回復基調等を背景に概ね高値圏で推移しましたが、期末にかけてはロシア・ウクライナ情勢を受け大きく値を下げる場面もみられました。金利については、景気回復やインフレ率の高まりを受け、米欧では金融政策正常化に向けた動きが明確化し、市中金利は上昇傾向で推移しました。わが国では日本銀行が大規模な金融緩和政策を維持しており、短期金利は低水準を続けましたが、米欧での金利上昇に連れ長期金利は期末にかけてやや上昇しました。ドル円相場は、日米金利差の拡大を背景に円が売られやすい展開が続き、年度末には一時1ドル125円台となるなど円安・ドル高の動きが大きく加速しました。


ハ.企業集団の事業の経過及び成果
(2021年度決算)

このような環境下、当社グループの2021年度連結業績は、経常利益が1兆5,376億円、親会社株主に帰属する当期純利益は1兆1,308億円となりました。
 業務粗利益は、前年度比430億円増加の3兆9,640億円となりました。資金利益については、国内外貸出の利ざや改善や外貨投資信託解約益などにより、前年度比1,385億円増加し2兆436億円となりました。信託報酬・役務取引等利益は、国内の資産運用ビジネスやファースト・センティア・インベスターズ*1の手数料収益、海外手数料などの増加により、前年度比1,765億円増加の1兆5,747億円となりました。特定取引等利益・その他業務利益は、前年度比2,720億円減少の3,456億円となりました。営業費は、国内の経費は減少しましたが、為替影響により、前年度比746億円増加の2兆7,472億円となりました。
 以上の結果、業務純益は前年度比316億円減少し1兆2,167億円となりました。与信関係費用総額は、ロシア関連引当金約1,400億円を計上したものの、米国の経済環境見通し改善に伴う引当金の戻りやMUFGユニオンバンク株式の売却決定に伴う貸倒引当金の戻入れ等により前年度比1,840億円減少の3,314億円となりました。株式等関係損益は、堅調な株式相場を背景に政策保有株式の売却益の増加やETF売却損益の計上により、前年度比2,023億円増加し3,326億円の利益、持分法による投資損益は4,415億円の利益となりました。特別損益は、477億円の損失となりました。
 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前年度比3,538億円増加し、1兆1,308億円となりました。


 自己資本規制(バーゼルⅢ)の下での連結普通株式等Tier1( 中核的自己資本) 比率は、11.06%、連結Tier1比率は12.38%、連結総自己資本比率は14.29%となりました。いずれも2021年度末時点で求められる水準を充足しています。流動性カバレッジ比率*2も、170.4%と、規制で求められる水準を充足しています。
 また、貸出資産の健全性を表す不良債権比率は、1.18%と低水準を維持しています。
 2021年度の普通株式1株当たりの年間配当金 につきましては、前年度比3円増額の28円を予定しています*3
*1 豪州を本拠とする資産運用会社
*2 ストレス下において30日間に流出すると見込まれる資金(分母)を賄うために、短期間に資金化可能な資産(分子)を十分に保有しているかを表す指標
*3 2021年度期末配当については、2022年6月29日に開催予定の定時株主総会において承認されることを前提としています。



 なお、経営資源の最適配置の観点から、2021年9月に米子会社のMUFGユニオンバンクの株式を米国大手銀行U.S. Bancorp社に譲渡することを発表しました。本件後も米国は重要な市場であり、MUFGの強みを活かせる法人取引を中心とする事業に集中して成長をめざします。また、本件によって得られる資本は、MUFGの資本政策の基本方針に沿った形で、株主還元の一層の充実やデジタル・AM/IS*4などの成長領域への戦略投資にバランスよく活用していく方針です。
*4 Asset Management / Investor Services

決算の詳細は、当社ウェブサイトをご参照ください。
https://www.mufg.jp/ir/

(事業本部別の経過及び成果)
 当社グループは、総合金融グループの強みを発揮するため、グループ各社が緊密な連携のもと、一元的に戦略を定め事業を推進する事業本部制を導入しています。各事業本部は、お客さまの幅広いニーズにお応えするため、グループ各社それぞれの強みを融合させた戦略の立案や施策の運営を行っています。
 2021年4月に、デジタルを活用した金融サービスの提供と全社的なデジタルトランスフォーメーションをより一層推進するため、「デジタルサービス事業本部」を新設しました。
 当年度における事業本部別の事業の経過及び成果は次のとおりです。


新 設 デジタルサービス

<事業内容>
デジタルサービス事業本部では、国内の個人・法人の非対面取引を中心とするお客さまを対象に、デジタルでの取引接点の拡大や利便性向上を通じたデジタル金融サービスを提供するとともに、全社のデジタルトランスフォーメーションを推進し、ビジネス基盤を強靭化します。

 口座開設や住所変更手続き等のスマートフォンアプリの利用率増加や、インターネットバンキングの利用者数増加など、お客さま接点のデジタルシフトが進展しました。また、米Ripcord社の技術を活用した紙帳票の電子化や、監査法人の残高確認の電子化など、業務のデジタルトランスフォーメーションに取り組みました。
 新たなデジタル金融サービスとして、個人のお客さま向けの資産運用プラットフォーム「Money Canvas」の提供を開始したほか、マネーフォワード社と合弁でBiz Forward社を設立し、中小企業のお客さま向けのオンラインファクタリング事業等を開始しました。


法人・リテール

<事業内容>
法人・リテール事業本部では、国内の個人や法人のお客さまを対象に、貸出、資金決済、資産運用や相続・不動産など幅広い金融サービスの提供、事業・資産承継といったソリューション提供などを通じて、多様なニーズにグループ一体でお応えしています。

 お客さまの資産に関する多様な課題に対応するため、銀行・信託・証券のグループ一体でのビジネスモデルを推進するとともに、お客さま接点の変化を捉え、チャネル再編を主軸とした組織構造改革を継続しました。
 特に、ウェルスマネジメント(WM)ビジネスでは、グループ一体でお客さまの資産やニーズを把握するデジタルツール「WMデジタルプラットフォーム」の運用を全拠点で開始しました。これにより、お客さまが抱えるさまざまな課題に対し、グループ一体で包括的なソリューションを提供する体制を整備しました。


コーポレートバンキング

<事業内容>
コーポレートバンキング事業本部では、日系大企業のお客さまを対象に、貸出や資金決済、外国為替などのサービスや、M&Aや不動産関連ビジネスなどグループ各社の専門性を活かした総合的なソリューション提供を通じて、お客さまの企業価値 向上に貢献しています。

 ROE重視のビジネスモデル確立に向けて、低採算貸出の削減に取り組むとともに、高採算が見込める案件のリスクテイクを進めたことで、貸出利ざやが着実に改善しました。また、政策保有株式の削減を加速させ、中期経営計画の削減目標の達成に向けて大きく進捗しました。
 環境・社会課題や複雑化・多様化するお客さまの経営課題解決に向けて、お客さまとのエンゲージメント(対話)を深め、事業リスクをともにする取り組みを強化しています。新たに立ち上げたサステナブルビジネス部では脱炭素化に向けた対話に取り組むとともに、将来の社会課題解決に資する複数の事業に対して、お客さまとともに投資を実行しました。


グローバルコマーシャルバンキング

<事業内容>
グローバルコマーシャルバンキング事業本部では、出資先である米国のMUFGユニオンバンクやタイのクルンシィ(アユタヤ銀行)、インドネシアのダナモン銀行などのパートナーバンク*1を通じて、米国と東南アジアにて、現地の中小企業や個人のお客さま向けに金融サービスを提供しています。

 MUFGユニオンバンクは、U.S. Bancorp社への売却に向けた対応を進めつつ、中堅中小法人向け取引の強化等に取り組みました。クルンシィ(アユタヤ銀行)は、営業基盤の拡大に向けベトナムのエスエイチビーファイナンス*2の買収を発表したほか、カーボンニュートラルビジョンを宣言するなど脱炭素化への取り組みを進めました。ダナモン銀行は、低コスト預金の積み上げ等、調達コストの削減を進めたほか、MUFGグループの機能や顧客基盤を活用した法人向けビジネスの拡大を実現しました。
 Grab社*3との協働では、ダナモン銀行が共同ブランドのクレジットカードの提供を開始しました。パートナーバンク間の協働では、リスク管理等の知見共有により業務運営基盤を強化しました。
*1 当事業本部は、MUFGユニオンバンク、クルンシィ(アユタヤ銀行)、ダナモン銀行、ヴィエティンバンク、セキュリティバンクなどを所管
*2 個人向けの無担保ローンを取り扱う、コンシューマーファイナンス会社。2021年8月に買収契約を締結
*3 ASEAN最大級のスーパーアプリ事業者。2020年2月にMUFGとの資本・業務提携契約を締結


受託財産

<事業内容>
受託財産事業本部では、資産運用(AM*1)、資産管理(IS*2)、年金の各事業において、高度かつ専門的なノウハウを活用したコンサルティングや、運用力と商品開発力の向上に取り組み、国内外のお客さまの多様なニーズにお応えしています。

 AM事業は、海外ではファースト・センティア・インベスターズ*3で旗艦ファンドを中心とした資産運用残高が増加しました。国内では顧客ニーズに沿った機動的な商品提供により、法人向け運用商品販売額が増加したほか、三菱UFJ国際投信の公募株式投信残高*4が業界4位から2位に浮上しました。
 IS事業は、国内外でのファンドに対する貸出や為替などの複合サービスの提供により、国内外の資産管理残高が増加しました。
 年金事業は、人事コンサルティングを起点としたソリューション提案やお客さまのニーズに応じた運用商品提供などにより、確定給付年金残高と確定拠出年金の加入者数が増加しました。
*1 Asset Management
*2 Investor Services
*3 豪州を本拠とする資産運用会社
*4 除くETF


グローバルCIB

<事業内容>
グローバルCIB事業本部では、グローバル大企業のお客さまを対象に、商業銀行機能と証券機能を中核にグループ一体で付加価値の高いソリューションを提供するコーポレート&インベストメント・バンキング(CIB)ビジネスを展開しています。

 市場事業本部と一体で進めている機関投資家ビジネスでは、セキュアードファイナンス*1やNon-IG企業*2向け貸出・債券引受業務を中心に、収益性の高い案件を着実に積み上げました。
 既存ポートフォリオにおいては、低採算資産の削減や新規貸出の厳格なスクリーニングによるバラ ンスシート運営効率化の取り組みを継続・強化しました。この結果、ROEや外貨貸出利ざやなどの収益性指標が大幅に改善しました。
 新規事業への取り組みでは、イスラエルのフィンテック企業との合弁会社であるMars Growth Capital社によるアジアのスタートアップ企業向け融資事業が順調に拡大しました。
*1 ファンド投資資産等を担保とする貸出
*2 非投資適格企業


市場

<事業内容>
市場事業本部では、金利(債券)・為替・株式のセールス&トレーディング業務*1を中心とする顧客向けビジネスと、MUFGの資産・負債や各種リスクを総合的に運営管理するトレジャリー業務*2を主に担っています。

 セールス&トレーディング業務は、市場参加者の活動量が低下し収益機会が減少しましたが、グローバルCIB事業本部との一体運営や、国内顧客への商品提供力向上などの取り組みが進展しました。
 トレジャリー業務は、インフレ懸念に伴い欧米の金融政策が緩和から正常化・引き締め方針へ転換し市場の不確実性が高まるなか、ポートフォリオの組み換えを行いながら、外貨中長期調達の削減などで収益性向上に取り組みました。
 また、金融商品取引の電子化やAIを活用した相場予測、バランスシート管理の高度化など、業務のデジタル化を進めたほか、ESG投資を拡充するとともに、長期分散型ポートフォリオの構築を開始しました。
*1 為替・デリバティブなどの金融商品・ソリューションをお客さまに提供するセールス業務と、銀行間取引や取引所などで市場性商品の売買を行うトレーディング業務の総称
*2 貸出などの資産と預金などの負債に内在する資金流動性リスクや金利リスクなどを総合的に管理するALM運営(資産・負債管理)やグローバル投資など


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2022/06/29 12:00:00 +0900
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