1)「中期経営計画2026」の位置づけ“Set for Next Stage”
「中期経営計画2023」の進捗・成果を踏まえ、2030年の目指す姿「事業や人材を創造し続ける総合商社」を見据えて向かう先を“Next Stage(企業価値2倍成長)”とし、具体的なターゲットを「当期利益2,000億円、ROE15%、時価総額2兆円」と定めました。
「中期経営計画2026」は、このNext Stageを見据えて、成長基盤と人的資本の強化に取り組む中期経営計画と位置づけ、副題を“Set for Next Stage”としました。Next Stageに到達するためのキーメッセージとなる「双日らしい成長ストーリー」の実現に向け、成長基盤と人材への積極投資を行っていきます。
2)定量目標
「中期経営計画2026」における定量目標として以下を掲げています。
将来の成長に向けて、財務規律を堅持した上で6,000億円の投資を実行します。ROEについては、当社が認識する株主資本コスト9~10%を超える12%超を確保し、企業価値と株主価値の向上を図ります。株主還元については、基礎的営業キャッシュフローの3割程度を充当するというキャッシュアロケーション方針に基づき行っていきます。
※株主資本:その他の資本の構成要素(為替換算調整勘定、その他評価差額金、繰延ヘッジ損益等)を除外した前期末自己資本
※株主資本DOE:支払配当÷株主資本
3)Next Stageへの基本方針
双日らしい成長ストーリーの実現に向け、成長基盤と人的資本を強化するために、以下の基本方針に沿って独自性・強みをさらに磨き上げることで、競争優位を確立します。
“競争優位・成長の追求‒ 双日らしさ”
双日はこれまで100年以上にわたり、「先読み」「変革」「挑戦」を通じて、必要なモノ・サービスを必要なところに届けることを一貫して使命・ミッションとしてきました。
「中期経営計画2026」においてはそれらを踏襲しつつ、「スピード」、「共創・共有」、「マーケットイン “Glocal”」、「パートナーシップ」、「ヒトの魅力(ちから)」を新たな要素として再定義しました。双日DNAから生まれる独自性・双日らしさを常に進化させ、当社競争力の源泉とし、持続的な成長を実現します。
4)成長基盤の強化
(a)戦略的強化領域
「中期経営計画2023」で定めた3つの注力領域における実績・進捗を踏まえ、以下を戦略的強化領域として再設定しました。それらの横串しとして、全ての事業領域に必要不可欠な要素としての「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「GX(グリーントランスフォーメーション)」領域を強化します。
また成長市場・面展開では、ベトナムで確立されつつあるような強みのある成長市場におけるビジネスの面展開を、さらに他地域にも拡大していきます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)については、「中期経営計画2023」でのDigital開拓期を経て、以下の3つの柱を通じ“Digital in All”による価値創造を図ります。
・デジタルビジネスの収益化
-さくらインターネットとの戦略的提携と協業による成長の取り込み
-双日グループのデジタル事業会社である日商エレクトロニクスのさらなる機能強化・収益力の向上
などによるデジタルビジネスの収益の塊化
・既存ビジネスとデジタルの掛け合わせによる稼ぐ力、価値・競争力の向上
・デジタル人材の拡充、データ・AI活用のためのデジタル基盤の整備・構築
GX(グリーントランスフォーメーション)に関しては、2050年に向けた長期ビジョン「サステナビリティチャレンジ」での脱炭素目標に向けた取り組みを加速させます。(詳細は招集通知P.60~61を参照)
GX分野の技術革新や社会への普及速度を見極め、そのステージに合ったソリューションを自ら創造・提供することを目的とし、2024年1月に経営直轄の専門組織を設置しました。GXに資する事業に積極的に資源配分することで、カーボンニュートラル社会の実現と当社の企業価値拡大の両立を目指します。
(b)双日らしい成長ストーリー
当社の示す双日らしい成長ストーリーの事例としては、以下が挙げられます。
“成長市場 面展開”
当社に知見があり、成長が期待できる市場において、関連性のある事業・領域に集中的に投資を行うことで、点から線に、線から面に展開し、市場ニーズ・成長を取り込みます。そのような事業をベトナム以外においても早期に形成し、その国・地域と共に成長していくストーリーの実現を目指します。現場に密着した事業運営を行い、創意工夫をこらしてビジネスを作り続け、パートナーと共に成長していきます。
“ビジネスモデルの変革・深化”
当社はマーケットインの徹底により、社会ニーズに合わせて、様々なビジネスを変革してきました。
例えば、エネルギー事業においては石油ガスの輸入トレードから始まり、発電プラントの輸出、大型発電所の開発・運営、近年では再エネや省エネを掛け合わせたEnergy as a Serviceといった事業を開始するなど、時代と共に変革を遂げてきました。
当社の事業創造DNAである「先読み力」、「変革」、「挑戦」に加え、双日らしさを構成するマーケットイン、パートナーシップといった強みを活かした成長ストーリーの事例であり、今後も各事業領域・市場において変革と成長を続けていきます。
“バリューチェーン上の事業領域の拡大”
情報技術の進展やグローバル化により、様々なバリューチェーンにおいて中間業種の機能が低下し、付加価値の源泉が川上と川下に移行してきました。当社は従来より川中であるトレードビジネスを中心に営んできましたが、幅広い業界での知見・接点を活かし、付加価値の高い領域に積極展開することで、自らの事業ポートフォリオを変革し、事業価値の最大化を図っていきます。
(c)新規投資の方針
新規投資に関しては、3ヶ年6,000億円の成長投資並びにヒトへの投資を計画しています。
ポートフォリオを強化する成長投資においては競争優位性や独自性を追求し、既存領域を核とした事業の「塊」を構築することに重点を置いた最適なリソース配分・成長戦略を実行していきます。
また、ポートフォリオをトランスフォームする成長投資においては、十分な収益性を確保できる500億円超の規模感ある投資を実行します。
5)人的資本の強化
(a)人材戦略の考え方
「中期経営計画2026」では、2030年の目指す姿である「事業や人材を創造し続ける総合商社」に向け、「自らの意思で挑戦・成長し続ける多様な個」「多様な個の力を最大化するミドルマネジメントの強化」「環境変化を先読みした機動的な人材配置・抜擢」の3点の人材戦略基本方針を掲げ、双日らしい成長ストーリーの実現に向けた「事業創出力」と「事業経営力」の強化を目指します。
人的資本の強化を支える土台として、「双日らしいカルチャーの醸成」、「Digital in All」、「データを活用した対話」により、挑戦や思考の柔軟さといった双日らしい独自の風土・文化を深化させ、事業創出力、事業経営力の最大化を図っていきます。
2024年4月より、役割等級・評価・報酬などを見直した、新たな人事制度をスタートさせました。社員一人ひとりの成長、組織の成長・活性化、会社の成長・企業価値向上を実現させることで、当社らしい人的資本経営を加速させていきます。
(b)人材KPI(動的)
2030年の目指す姿に向けて双日らしい成長ストーリーを実現するためには、事業創出力、事業経営力を備えるとともに、Digital in Allを実践できるヒト(組織・人材)の育成・強化が必要となることから、次に掲げる人材KPIを設定し、各種施策の効果を測っていきます。
6)キャッシュフロー・マネジメント
基礎的営業キャッシュフローと資産入替を原資に、さらなる成長に向けた成長・ヒト投資と株主還元を実行します。基礎的営業キャッシュフローの7割程度を成長・ヒト投資に、3割程度を株主還元に充当します。
7)利益配分に関する基本方針
「中期経営計画2026」期間累計の基礎的営業キャッシュフローの3割程度を株主還元する方針です。
(a)配当
・安定的かつ継続的な配当を行うため株主資本DOE4.5%を配当方針とし、業績変動や株価・為替による影響を最小限に抑える
・当期純利益による株主資本の積み上げが、株主還元による株主資本の減少幅を上回る限りにおいて、累進的に増配となる配当方針
(b)自己株式取得
・キャッシュフロー・マネジメント方針に基づき、「中期経営計画2026」期間を通じて機動的に自己株式取得を実施
これを踏まえ、2025年3月期の配当については、1株当たり年間150円(中間75円、期末75円)を予定しています。当該年度の当期純利益(当社株主帰属)に基づく連結配当性向(予想)は29.6%となります。