三菱商事グループの事業概要等

事業内容

 三菱商事グループは、国内外のネットワークを通じて、生活、モビリティ・インフラ、エネルギー・電力といった各種産業分野において、川上の天然資源開発から川中での多種多様な商品の売買や製造、川下でのコンシューマー向け商品・サービスの提供を行うほか、金融・物流事業といったサービス分野を含めて全産業を俯瞰する総合力を活かした新しいビジネスモデルや新技術の事業化、新たなサービスの開発・提供等、広範な分野で多角的に事業を展開しています。

連結業績

1. 概況

 2021年度の収益は、市況好転による価格上昇及び取引数量の増加等により、前年度を4兆3,803億円(34%)上回る17兆2,648億円となりました。
 売上総利益は、豪州原料炭事業や鮭鱒養殖事業における市況好転、及び自動車関連事業における生産・販売台数増加、鉄鋼製品事業における販売価格の上昇等により、前年度を5,457億円(34%)上回る2兆1,508億円となりました。
 販売費及び一般管理費は、売却や持分減少に伴う子会社からの除外の影響による減少の一方で、経済活動の正常化に伴う増加等により、前年度から343億円(2%)増加し、1兆4,320億円となりました。
 有価証券損益は、航空機リース事業会社売却に伴う減損損失の一方、海外電力事業の売却やファンド評価益の改善等により、前年度を132億円(21%)上回る753億円(利益)となりました。
 固定資産減損損失は、前年度に計上した(株)ローソンあてのれん及び無形資産の減損損失の反動等により、前年度から1,395億円(68%)改善し645億円となりました。
 その他の損益は、デリバティブ評価損益の変動等により、前年度を53億円(29%)上回る233億円(利益)となりました。
 金融収益は、資源関連投資先からの受取配当金の増加等により、前年度を687億円(58%)上回る1,865億円となりました。
 金融費用は、前年度からほぼ横ばいの467億円となりました。
 持分法による投資損益は、三菱自動車工業(株)における採算改善や前年度の減損損失の反動、及び幅広い事業における市況好転による持分損益の改善等により、前年度を2,967億円(306%)上回る3,938億円(利益)となりました。
 これらの結果、税引前利益は、前年度を1兆396億円(410%)上回る1兆2,931億円となりました。
 以上により、当期純利益は、前年度を7,649億円(443%)上回る9,375億円となりました。

2.セグメント別の状況


天然ガスグループ

天然ガスグループは、北米、東南アジア、豪州、ロシア等において、天然ガス・原油の開発・生産事業、液化天然ガス(LNG)事業等を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈増加〉

・LNG関連事業や北米シェールガス事業における持分利益の増加

・LNG関連事業における受取配当金の増加

TOPICS米国キャメロンLNGプロジェクト及びLNGカナダプロジェクトに最新鋭LNG船を採用
最新鋭の推進システムを採用したLNG船

当社は、参画する米国キャメロンLNGプロジェクト及びLNGカナダプロジェクト向けに他社とLNG船を共同保有の上、傭船しております。これまでの4隻に加え、2021年に新たに2隻が竣工しました。これらのLNG船は最新鋭の推進システムを採用することでLNGの輸送効率を向上させ、CO2排出量削減を実現しました。本船団で両プロジェクトから生産されるLNGを世界各国へ長期安定供給すると同時に、LNGサプライチェーンの排出量削減に貢献していきます。

総合素材グループ

総合素材グループは、自動車・モビリティや建設・インフラ等の対面業界において、鉄鋼製品、硅砂、セメント・生コン、炭素材、塩ビ・化成品等、多岐にわたる素材の販売取引、事業投資、事業開発を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈増加〉

・北米樹脂建材事業や鉄鋼製品事業における持分利益の増加

TOPICS豪州で硅砂採掘事業を展開
Cape Flattery Silica Mines鉱山での硅砂の採掘

Cape Flattery Silica Mines(当社100%出資、在豪州)は、太陽光パネル、ディスプレイ等に使用される、ガラス等の原料となる高品位硅砂の採掘・製造を行う世界最大級の硅砂鉱山を保有しています。当社は鉱山から需要地まで独自の物流・販売ネットワークを持ち、一気通貫したサプライチェ―ンを構築しています。同社は日本やアジア各国に向け年間約300万トンの硅砂を出荷しており、今後も自然環境の保全、地域との共生、事業活動の低炭素化等に努め、堅調な需要拡大が見込まれる硅砂の安定供給に貢献していきます。

石油・化学ソリューショングループ

石油・化学ソリューショングループは、原油、石油製品、LPG、エチレン、メタノール、塩、アンモニア、プラスチック、肥料等、幅広い石油・化学関連分野において、販売取引、事業開発、投資等を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈増加〉

・石油化学事業における取引利益の増加

・LPG事業における持分利益の増加

TOPICS二酸化炭素の回収・貯留(CCS)を活用したクリーンエネルギー製造を推進
インドネシアにおけるアンモニアプラント

当社では、製造過程で発生する二酸化炭素の回収・貯留(CCS)を活用したクリーンエネルギー製造を推進しています。2021年3月に、インドネシアにおけるクリーン燃料アンモニア生産に係る共同調査をパートナーと開始。同年9月には、Shell Canadaとの間で、カナダにおけるCCSを活用した水素製造に向けた覚書を締結し、日本への輸出を目指しています。今後も、水素・アンモニアのサプライチェーン構築を通じ、脱炭素社会の実現と日本のエネルギー安定供給へ貢献していきます。

金属資源グループ

金属資源グループは、原料炭、銅、鉄鉱石、アルミといった金属資源への投資・開発等を通じて事業経営に携わるとともに、グローバルネットワークを通じた鉄鋼原料、非鉄原料・製品における質の高いサービスや機能を活かし、供給体制を強化しています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈増加〉

・豪州原料炭事業における市況上昇による影響

・銅事業における受取配当金の増加

・鉄鉱石事業における持分利益の増加

TOPICSペルー・ケジャベコ銅鉱山の生産開始に向け開発を推進
生産開始に向けて開発中のケジャベコ銅鉱山

当社は再生可能エネルギー・EV普及等、脱炭素社会実現の鍵を握る銅事業を中核事業の一つに位置付け、資源量・品位等において世界的に優位性の高い複数の銅鉱山を保有しています。中でも、英Anglo American plcと開発しているケジャベコ銅鉱山(当社40%出資)は、2022年央の生産開始に向けた最終段階を迎えています。本格的な生産立上げ後、当社持分生産量は従来の20万トン超から約1.5倍に拡大する見通しです。引き続き堅調な需要増が見込まれる銅の安定供給を通じEXに貢献していきます。

産業インフラグループ

産業インフラグループは、エネルギーインフラ、産業プラント、建設機械、工作機械、農業機械、エレベーター、エスカレーター、ファシリティマネジメント、船舶、宇宙航空関連機器等、幅広い分野における事業及び関連する取引等を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈減少〉

・千代田化工建設(株)あて投資に関する無形資産の減損損失

TOPICS水素サプライチェーン事業のグローバル推進
SPERA水素を活用した貯蔵・輸送

当社はSPERA水素を活用した水素サプライチェーンの構築に取り組んでいます。シンガポールでは同国政府が推進する低炭素技術の導入の一環として、官民連携の上、水素の社会実装に向けた共同開発を進めています。欧州ではオランダのロッテルダム港を水素輸入の玄関口とする開発を進めています。供給元から需要先まで俯瞰した一気通貫型の事業実現による長期CO2排出量削減等を通じて、地球環境の保全・持続可能な未来に向け世界の脱炭素化に貢献していきます。

※水素を常温・常圧の液体として扱うことを可能にする千代田化工建設(株)の大規模水素貯蔵・輸送技術

自動車・モビリティグループ

自動車・モビリティグループは、乗用車・商用車の販売や販売金融を中心に、生産、アフターサービスも含め一連のバリューチェーン事業に深く関与しています。また、ヒトやモノの移動に関する課題を解決するモビリティ関連事業に取り組んでいます。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈増加〉

・前年度に計上した三菱自動車工業(株)における一過性損失の反動

・三菱自動車工業(株)やアジア自動車事業における持分利益の増加

TOPICS交通課題解決に向けた「塩尻MaaSプロジェクト」を展開中
塩尻市で「のるーと」を展開中

当社が西日本鉄道(株)と共同出資するネクスト・モビリティ(株)(当社50%出資)が、AI活用型オンデマンドバス「のるーと」を展開している長野県塩尻市にて、2020年より「塩尻MaaSプロジェクト」を産官学連携で推進中です。「のるーと」を起点とし、次世代モビリティサービスの活用によるMaaS事業に取り組んでいます。当社が持つ幅広いネットワークを活用し、塩尻市の交通課題解決を目指していきます。

※オンデマンドバス等の次世代モビリティサービスの活用・連携を通じて塩尻市の交通課題の解決を目指すプロジェクト

食品産業グループ

食品産業グループは、食糧、生鮮品、生活消費財、食品素材等の「食」に関わる分野で、原料の生産・調達から製品製造に至るまでの幅広い領域において、販売取引、事業開発等を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈増加〉

・鮭鱒養殖事業における持分利益の改善

TOPICS穀物・飼料畜産サプライチェーンのDXを推進
DX推進によりサプライチェーンの効率化に取り組む

当社は原料調達・加工・販売・物流等広い事業領域で多くの事業会社を有し、サプライチェーン全体の効率化やフードロス等、食品産業に共通する課題に、デジタル技術を活用して取り組んでおります。伊藤ハム米久ホールディングス(株)(当社39.55%出資)では業務変革/効率化に向け多面的かつ継続的な施策を実行中です。今後は同様の施策を他の事業会社へ展開し、食品産業全体のDX推進に貢献していきます。

コンシューマー産業グループ

コンシューマー産業グループは、小売・流通、物流、ヘルスケア、衣料、タイヤほかの各領域において、商品・サービスの提供、事業開発等を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈増加〉

・前年度に「固定資産減損損失」等に計上した(株)ローソンあてのれん及び無形資産の減損損失836億円の反動

TOPICS国内最大級オフサイトPPAによる再エネをローソン店舗へ供給
ローソン店舗に再生可能エネルギーを導入

当社と(株)ローソン(当社50.12%出資)は、ローソン店舗への再生可能エネルギー供給に関する協業検討に合意しました。これは、新設の太陽光発電設備による、国内最大級のオフサイトPPAであり、当社が同設備建設の外部委託・ローソン店舗向け電力供給を担うことを検討するものです。まずは約3,600店舗を対象に、2022年度上期中からの供給開始を目指し、今後は合計約8,200店舗への導入を検討しております。店舗における再エネ利用を通じて、更なるCO2排出量削減を推進していきます。

※遠隔地に再エネ発電所を建設し、送配電ネットワークを経由して同発電所から電力を長期間供給する売電契約

電力ソリューショングループ

電力ソリューショングループは、国内外の産業の基盤である電力・水関連事業における幅広い分野に取り組んでいます。具体的には、発・送電事業、電力トレーディング、電力小売事業等に加え、リチウムイオン電池の製造や、分散電源事業等の電池サービス事業、水素エネルギー開発等を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈増加〉

・海外発電資産等の売却益の増加

TOPICS国内洋上風力発電事業3海域で発電事業者に選定
採用予定のGEリニューアブルエナジー製の風力発電設備

三菱商事エナジーソリューションズ(株)(当社100%出資)を代表とするコンソーシアムを通じて、秋田県沖及び千葉県沖の3海域の洋上風力発電事業において発電事業者の公募に応募し、2021年12月に選定事業者として選定されました。本事業は一般海域における国内初の着床式洋上風力発電事業であり、国内最大級の再生可能エネルギー由来電源となります(合計約121万世帯の電力需要に相当)。引き続き、エネルギーの安定供給と脱炭素の両立、地域との協調・共生の実現を目指します。

複合都市開発グループ

複合都市開発グループは、都市開発・不動産、企業投資、リース、インフラ等の分野において、開発事業、運用・運営を行っています。

当期純利益の推移
【主な変動要因】
〈増加〉

・北米不動産開発事業における物件売却益やファンド評価益の増加

〈減少〉

・航空機リース事業会社売却に伴う減損損失

TOPICSインドネシア・ジャカルタでスマートシティ化に向けた自動運転実証実験を開始
実証実験サイトのGreen Office Park

当社は、インドネシア・ジャカルタ郊外のBSD Cityにおいて、2022年5月から自動運転モビリティサービスの実証実験を開始しました。現地有力デベロッパーのSinar Mas Land Ltd.と共同で、都市基盤データやデジタル技術の活用による各種都市サービスや、カーボンニュートラルへ向けた再生可能エネルギーの導入等を通じ、BSD City全体のスマートシティ化を目指して取り組んでいきます。

連結財政状態

1.資産及び負債・資本の状況

 2021年度末の総資産は、前年度末より3兆2,770億円(18%)増加し、21兆9,120億円となりました。
 流動資産は、前年度末より2兆4,281億円(34%)増加し、9兆5,310億円となりました。これは、需要回復に伴う価格上昇及び取引数量増加により営業債権及びその他の債権が増加したこと等によるものです。
 非流動資産は、前年度末より8,489億円(7%)増加し、12兆3,810億円となりました。これは、円安に伴う為替換算の影響により有形固定資産や持分法で会計処理される投資が増加したこと等によるものです。

 負債は、前年度末より1兆9,582億円(16%)増加し、14兆548億円となりました。
 流動負債は、前年度末より1兆9,476億円(36%)増加し、7兆3,178億円となりました。これは、需要回復に伴う価格上昇及び取引数量増加により営業債務及びその他の債務が増加したこと等によるものです。
 非流動負債は、前年度末からほぼ横ばいの、6兆7,370億円となりました。

 資本合計は、前年度末より1兆3,188億円(20%)増加し、7兆8,572億円となりました。
 当社の所有者に帰属する持分は、前年度末より1兆2,666億円(23%)増加し、6兆8,802億円となりました。これは、主に連結純利益の積み上がりにより利益剰余金が増加したことや、円安の影響による在外営業活動体の換算差額の増加等によるものです。
 また、非支配持分は、前年度末より522億円(6%)増加し、9,769億円となりました。
 有利子負債総額から現金及び現金同等物や定期預金を控除したネット有利子負債(リース負債除く)は、前年度末より2,387億円(6%)減少し、3兆9,397億円となりました。

2.キャッシュ・フローの状況

 2021年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末に比べ2,378億円増加し、1兆5,556億円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動により資金は1兆558億円の増加となりました。運転資金負担の増加や法人所得税の支払い等がありましたが、営業収入や配当収入等により資金が増加したものです。

投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動により資金は1,676億円の減少となりました。関連会社への投資やその他の投資の売却等による収入がありましたが、設備投資、関連会社への投資や融資等による支出により、資金が減少したものです。

財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動により資金は6,934億円の減少となりました。リース負債の返済や配当金の支払い、短期借入債務の返済等により資金が減少したものです。

 配当は持続的な利益成長に合わせて増配していく「累進配当」を行う方針としています。負債による資金調達は、流動性と財務健全性の観点で適切な水準を維持する方針としています。


設備投資等の状況

 2021年度における重要な設備投資等はありません。

資金調達の状況

 三菱商事グループは、資金調達の主要な手段として機動的に社債を発行しています。
 2021年度、当社は5.0億米ドル(約612億円)のドル建て普通社債(米国・欧州・アジアを中心とする海外市場での募集)、及び1,300億円の円建て劣後特約付社債(ハイブリッド社債)を発行しました。

重要な企業結合等の状況

MV2 VIETNAM REAL ESTATE TRADING JOINT STOCK COMPANYの株式取得

 当社は、ベトナムで不動産開発事業を展開するMC URBAN DEVELOPMENT VIETNAM COMPANY LIMITED(当社100%出資、在ベトナム)とMCOP INVESTMENT PTE. LTD.(当社100%出資、在シンガポール)を通じて、ベトナム不動産投資事業会社MV2 VIETNAM REAL ESTATE TRADING JOINT STOCK COMPANY(以下、MV2)の株式を80.17%取得するため、株式取得対価の70%相当額を支払いました。これに伴い、MV2既存株主との契約に基づき実質的な支配を獲得したことから、MV2は当社の連結子会社となっております。なお、MV2を連結子会社化したことに伴い、MV2傘下子会社も当社の連結子会社となっております。

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2022/06/24 12:00:00 +0900
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