当社は、『中期経営戦略2024』にて「MC Shared Value(共創価値)の創出」を目標に掲げており、これは当社の持つ多様性、総合力、社会・産業とのつながりを活かし、脱炭素・地域創生等の社会課題の解決を通じて、スケールのある共創価値を継続的に生み出すことを目指すものです。カーボンニュートラル社会への移行を全産業が解決すべき共通の社会課題として捉え、当社の強みである総合力を活かしこの課題に正面から取り組むことで、持続的な成長を実現していきます。
当社は、ステークホルダーの皆様との対話内容も勘案し、取締役会や社長室会等において審議のうえで、TCFD※の枠組みに沿って、気候変動に対する取組強化を進めています。2022年度における取組の進捗は以下のとおりです。
当社では、気候変動に係る基本方針や重要事項につき、社長室会にて審議・決定するとともに、取締役会規則に基づき、定期的に、取締役会(環境・社会分野の経験・見識・専門性を有する取締役・監査役を含む)に報告し、取締役会の監督が適切に図られるようガバナンス体制を整えています。
2022年度は、取締役会でのサステナビリティ関連施策に係る審議を充実化(審議回数を年1回から年2回に増加)するとともに、下記のとおり取締役会にて審議をしています。
Scope3カテゴリー11の開示方針を中心に審議を行いました。社外役員からは、国際的に統一的な算定方法が定まっていないなかにおいても、当社としてScope3カテゴリー11に係る排出量実績を透明性高く開示することについて賛同を得るとともに、当社の総合力を活かし、社会課題の解決を通じて社会全体での脱炭素に向けて取り組んでいくことの重要性につき意見がありました。
『中期経営戦略2024』で掲げたEX戦略の取組方針について審議し、水素等の次世代エネルギー事業に関する当社戦略について、社外役員を含む取締役会メンバー間で活発な意見交換を行いました。社外役員から、次世代エネルギー事業に対する政策や規制の影響、水素の特性や当社が有する強みを踏まえた戦略立案・実行の重要性につき意見がありました。
また、社長室会の審議に先立ち、①サステナビリティアドバイザリーコミッティーにおいて社外有識者より助言・提言を受けることに加え、②全ての営業グループCEOが参画するサステナビリティ・CSR委員会(社長室会の下部委員会)にて十分な審議を行っています。
当社は、ステークホルダーの皆様との対話等を通じ、本総会の決議事項第4号議案として取締役報酬制度の改定を付議し、役員報酬の一項目である業績連動賞与(中長期)について、①『中期経営戦略2024』に基づく「人的資本の価値最大化」、及び②当社が掲げるマテリアリティの一つである「脱炭素社会への貢献」に関する取組状況の評価結果に応じて、支給額を変動させる仕組みを新たに導入予定です(詳細は取締役報酬改定の件ご参照)。当該仕組みの導入により、役員に対し、サステナビリティへの取組を通じた企業価値の向上を更に強く意識付け、GHG削減目標達成に向けた取組をより一層推進していきます。
当社は、ステークホルダーエンゲージメントの更なる強化のため、2023年4月にCSEOを新たに任命しました。当社によるカーボンニュートラル社会実現に向けた取組について、幅広いステークホルダーの皆様と継続的に対話を実施しています。
当社は、2018年度からTCFD提言に基づく事業の強靭性評価を開始し、2021年度は国際エネルギー機関が公表する2050年ネットゼロシナリオ(以下「IEA NZE」)を用いた1.5℃シナリオ分析を実施しました。
一方、IEA NZEでは分析に必要となる十分な粒度のデータが提供されておらず、当社事業の特性や地域戦略等を踏まえた定量面も含む詳細な分析が困難でした。これを踏まえ、2022年度は外部の第三者機関と協働し、可能な限り主要な前提をIEA NZEと整合させたうえで、地域別・商材別の需要といったより細かい粒度のデータを含む1.5℃シナリオを策定しました。これに基づき、気候変動の移行リスク・機会が相対的に大きく当社にとっての資産規模が大きい等の理由から「天然ガス/LNG」「原料炭」「再生可能エネルギー」を分析対象として選定し、1.5℃シナリオ分析を実施しました。結果として、社会全体の脱炭素化が急速に進行する前提での1.5℃シナリオ下においても、上記事業は強靭性を有するものと評価しています(詳細はサステナビリティ・ウェブサイトをご参照ください)。
当社は、当社の強みである総合力を活かして、全産業が解決すべき共通の社会課題であるカーボンニュートラル社会への移行に正面から向き合っていきます。エネルギーの安定供給責任を果たしつつ、EVの普及等電化に欠かせない銅資源、再生可能エネルギー、そして水素やアンモニアといった次世代エネルギー事業の拡大等を通じ実行に移していきます。『中期経営戦略2024』では、EX戦略を中核に据え、2030年度までのEX関連投資総額2兆円規模のうち、2024年度までの3年間で約1.2兆円の投資を計画し、EX関連ポートフォリオを拡充することを示しました。なお、2022年度は以下のとおり約0.3兆円のEX関連投資を実施済みです。これにコミット済み投資案件が約0.5兆円あることに加え、新規投資パイプラインも積みあがっており、案件を厳選して順次実行に移していく予定です。
当社は、上記EX戦略の進捗を定量化する指標として、2023年2月末に削減貢献量を開示しました。これはGHG排出量がより低い商品・サービスを提供することで、それが提供されない場合と比較して、どれだけGHG排出量が削減できるのかを定量化したものであり、当社が脱炭素社会への移行における事業機会をどの程度取り込めているか、そしてその結果、当社が世の中のGHG排出量削減にどの程度貢献しているかを示すものです。様々なパートナー・顧客等の皆様とのつながりを大切にしながら、事業を通じて社会課題を解決し、MC Shared Value(共創価値)を創出していくという方針のもと、今後もEX戦略を力強く推進し、削減貢献量を生み出す事業を共創して、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
当社は『中期経営戦略2024』にて、GHG削減目標の達成に向け、気候変動に対応するサステナビリティ施策を、ポートフォリオの脱炭素化と強靭化を両立させるメカニズムとして導入しました。このメカニズムを下図のフローのとおり運用することで、気候変動リスクの高い事業の特定から個別案件の採算影響評価に至るまで、リスク管理を機能的に行い、当社事業が個別案件・全社事業戦略の両面において2050年ネットゼロに向けたシナリオとの整合を確認するためのリスク管理体制としています。
気候変動に伴うリスクを管理し事業機会を適切に捉えるため、今後も継続的に脱炭素シナリオをはじめとした各施策のアップデートを進め、これを事業環境分析に活用しながら事業戦略を策定・実行し、事業ポートフォリオの脱炭素化と強靭化を両立させていきます。
Scope1/2及びScope3カテゴリー15の排出量については、ロードマップにて「当社と当社の子会社・関連会社(当社の出資比率持分相当分)の基準年度GHG排出量2,530万トンを2030年度に半減し、2050年にネットゼロとする」削減目標を開示しました。2021年度の実績は下記のとおりです。
『中期経営戦略2024』で公表したとおり、今後も毎年度の投資計画策定時に短中期のGHG削減計画を確認して目標達成を目指していきます。
当社は、ステークホルダーの皆様との対話等を通じ、当社のScope3排出量の大半を占めるカテゴリー11の排出量の2021年度実績値を2023年2月末に以下のとおり新たに開示しました。カテゴリー11を含むScope3排出量は他社による排出のため、その削減という社会課題に取り組むに当たっては、当社を取り巻くサプライチェーン上の幅広いパートナーとの協業が必要です。当社は、「EX・DXの一体推進」(再エネ・次世代エネルギーの開発・供給、Breakthrough Energy Catalystを通じた脱炭素新技術への投資等)を通じてこの課題に取り組み、各種ステークホルダーの皆様と共に社会・経済活動の脱炭素化の実現に向けて挑戦していきます。