三菱商事グループは、国内外のネットワークを通じて、天然資源開発から多種多様な商品の売買や製造、コンシューマー向け商品やサービスの提供を行うほか、広い産業接地面やグローバルインテリジェンスによる総合力を活かし、新しいビジネスモデルや新技術の事業化、新たなサービスの開発・提供等、広範な分野で多角的に事業を展開しています。
2022年度の収益は、市況上昇及び取引数量増加等により、前年度を4兆3,072億円(25%)上回る21兆5,720億円となりました。
売上総利益は、豪州原料炭事業における市況上昇、及び欧州総合エネルギー事業における市況変化への機動的な対応等により、前年度を4,092億円(19%)上回る2兆5,600億円となりました。
販売費及び一般管理費は、円安に伴う為替換算の影響等により、前年度から1,755億円(12%)増加し、1兆6,075億円となりました。
有価証券損益は、不動産運用会社あて投資の売却益等により、前年度を1,217億円(162%)上回る1,970億円(利益)となりました。
固定資産除・売却損益は、前年度に計上した海外現地法人におけるオフィス売却益の反動等により、前年度を70億円下回る3億円(損失)となりました。
固定資産減損損失は、前年度に計上した千代田化工建設(株)あて投資に関する無形資産の減損損失の反動等により、前年度から329億円(51%)改善し316億円となりました。
その他の損益は、生物資産評価損益の変動等により、前年度を487億円下回る254億円(損失)となりました。
金融収益は、資源関連投資先からの受取配当金の減少の一方、米ドル金利上昇による受取利息の増加等により、前年度を171億円(9%)上回る2,036億円となりました。
金融費用は、米ドル金利上昇等により、前年度から687億円(147%)増加し1,154億円となりました。
持分法による投資損益は、天然ガス・原油価格上昇による持分損益の増加等により、前年度を1,064億円(27%)上回る5,002億円(利益)となりました。
これらの結果、税引前利益は、前年度を3,875億円(30%)上回る1兆6,806億円となりました。
以上により、当期純利益は、前年度を2,432億円(26%)上回る1兆1,807億円となりました。
天然ガスグループは、北米、東南アジア、豪州等において、天然ガス・原油の開発・生産事業、液化天然ガス(LNG)事業等を行っています。
【主な変動要因】 | |
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〈増加〉 |
・LNG関連事業や北米シェールガス事業における持分利益の増加 |
〈減少〉 |
・LNG販売事業における取引損失 |
当社がブルネイ政府、Shell plc.と共に参画するブルネイLNGプロジェクトが、2022年に日本へのLNG供給50周年を迎えました。同プロジェクトは1972年の操業開始から約50年にわたり日本向けにLNGを受け渡しており、エネルギーの安定供給に大きく貢献してきました。当社は、ブルネイにおいて液化設備のみならずLNG船舶保有会社や上流ガス鉱区等、バリューチェーン全体への参画を通じ、引き続きエネルギーの安定供給に努めていきます。
総合素材グループは、自動車・モビリティや建設・インフラ等の対面業界において、鉄鋼製品、硅砂、セメント・生コン、炭素材、塩ビ・化成品等多岐にわたる素材の販売取引、事業投資、事業開発を行っています。
【主な変動要因】 | |
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〈増加〉 |
・北米樹脂建材事業や鉄鋼製品事業における持分利益の増加 |
当社と東洋紡(株)の合弁会社である東洋紡エムシー(株)(当社49%出資)は、モビリティの軽量化・電動化や環境問題への対応等を支える機能素材を開発・製造・販売しています。脱炭素化の進展や産業構造の変化、技術革新の加速等、機能素材を取り巻く事業環境が大きく変化しているなか、東洋紡(株)の製品・技術開発力と当社の幅広い産業知見・経営力を掛け合わせることで、産業課題の解決と持続可能な社会の実現に貢献していきます。
石油・化学ソリューショングループは、原油、石油製品、LPG、エチレン、メタノール、塩、アンモニア、プラスチック、肥料等、幅広い石油・化学関連分野において、販売取引、事業開発、投資等を行っています。
【主な変動要因】 | |
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〈増加〉 |
・化学品製造事業における繰延税金負債の取崩し |
タイにおいて飲料用ボトルや食品容器用途の素材となるPET※1樹脂製造事業を展開するThai Shinkong Industry Corporation Ltd.(当社34%出資)は、循環型社会の実現・海洋プラスチック問題への対処に向けて導入が期待される、ケミカルリサイクル技術※2を活用したリサイクルPET樹脂の製造を計画しています。当社は、同事業を通じたリサイクル率の向上や、代替素材の開発等を通じて、循環型社会の実現に取り組んでいきます。
金属資源グループは、銅、原料炭、鉄鉱石、アルミといった金属資源への投資・開発等を通じて事業経営に携わるとともに、グローバルネットワークを通じた鉄鋼原料、非鉄原料・製品における質の高いサービスや機能を活かし、供給体制を強化しています。
【主な変動要因】 | |
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〈増加〉 |
・豪州原料炭事業における市況上昇 |
〈減少〉 |
・チリ銅事業における減損 |
2022年7月、Anglo American plc.と共にペルー共和国で開発を進めてきたケジャベコ銅鉱山が生産を開始しました。年間生産量は約30万トン※(当社持分は約12万トン)で、これにより当社の持分銅生産量は40万トン程度に拡大する見通しです。EVや再生可能エネルギーの普及に欠かせない銅は、世界的に需要が拡大しており、安定供給が大きな課題となっています。当社は、カーボンニュートラル社会の実現に向け、銅資源の確保と安定供給に取り組んでいきます。
産業インフラグループは、エネルギーインフラ、産業プラント、建設機械、工作機械、農業機械、エレベーター、エスカレーター、ファシリティマネジメント、船舶、宇宙航空関連機器等、幅広い分野における事業及び関連する取引等を行っています。
【主な変動要因】 | |
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〈増加〉 |
・前年度に計上した千代田化工建設(株)関連損失の反動 |
当社は、長年にわたり国際物流の要である海運に携わり、安定的・効率的な物流の実現に貢献してきました。この実績を活かして、輸送船や港湾の設計・整備に初期段階から関与し、次世代エネルギーやCC(U)S※の社会実装に向けた海上ロジスティクス確立に取り組んでいます。同時に、世界中のパートナー企業と連携し、最新技術の導入による海上輸送の低・脱炭素化、及び海上輸送DX推進による船員不足・海上労務環境等の社会課題解決も進めていきます。
自動車・モビリティグループは、乗用車・商用車の販売や販売金融を中心に、生産、アフターサービスも含め一連のバリューチェーン事業に深く関与しています。また、ヒトやモノの移動に関する課題を解決するモビリティ関連事業に取り組んでいます。
【主な変動要因】 | |
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〈増加〉 |
・アセアン自動車事業や三菱自動車工業(株)における持分利益の増加 |
当社は将来の自動運転化時代を見据え、自動運転実装をワンストップで支援するA-Drive(株)(当社40%出資)をアイサンテクノロジー(株)と合弁で設立しました。既に開始しているAI活用型オンデマンドバス事業の取組とともに、デジタルや先進技術を活かし、地域交通DXを推進していきます。また、社会課題である温室効果ガスの削減に向け、電動車両や蓄電池の普及、EVのフリートマネジメント事業等を通じて、持続可能なモビリティ社会の実現に向けて取り組んでいきます。
食品産業グループは、食糧、生鮮品、生活消費財、食品素材等の「食」に関わる分野で、原料の生産・調達から製品製造に至るまでの幅広い領域において、販売取引、事業開発等を行っています。
【主な変動要因】 | |
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〈減少〉 |
・海外事業における固定資産の減損 |
当社とマルハニチロ(株)の合弁会社であるアトランド(株)(当社51%出資)は、豊かな水資源で知られる富山県入善町で、国内最大級となるサーモンの陸上養殖事業に取り組みます。同社は、サーモンの需要が世界的に拡大するなか、当社が海外の養殖事業で培った知見も活用し、外部環境の影響が少ない陸上養殖による安定的・効率的な生産を実現することで、サーモンの国内需要を支えるとともに、輸送距離短縮による低・脱炭素化に貢献することを目指しています。
コンシューマー産業グループは、小売・流通、物流、ヘルスケア、衣料、タイヤほかの各領域において、商品・サービスの提供、事業開発等を行っています。
【主な変動要因】 | |
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〈増加〉 |
・CVS事業における持分利益の増加 |
当社が出資する(株)トランザクション・メディア・ネットワークス(TMN社)は、国内で初めてクラウド型電子決済サービス※を商用化し、安価な端末導入コスト、決済手段の優れた拡張性等の競争優位性により、小売店舗における利用シェアを拡大(国内クラウド型決済においてトップシェア)、2023年4月に東京証券取引所への上場を果たしました。当社は、今後も便利な消費社会の創出を目指し、デジタル社会を支えるインフラ整備に貢献していきます。
電力ソリューショングループは、国内外の産業の基盤である電力・水関連事業における幅広い分野に取り組んでいます。具体的には、発・送電事業、電力トレーディング、電力小売事業等に加え、水素エネルギー開発等を行っています。
【主な変動要因】 | |
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〈増加〉 |
・海外電力事業における発電資産の売却益や持分利益の増加 |
〈減少〉 |
・国内発電事業における設備不具合等による損失発生や持分利益の減少 |
当社は、子会社のN.V. Enecoを通じてShell plc.と共に、オランダ北西部沖合約50kmに位置するHollandse Kust West Site VI洋上風力発電所の事業権を獲得しました。発電容量は、オランダ国内の電力需要の約3%に当たる76万kWで、2026年に商業運転開始を予定しています。同プロジェクトは環境との共生に配慮し、渡り鳥の飛行ルートを考慮したタービンのレイアウト、海洋生態系への影響を抑える土台を取り入れており、洋上風力発電の継続的な拡大に資するプロジェクトになると評価されています。
複合都市開発グループは、都市開発・不動産、企業投資、リース、インフラ等の分野において、開発事業、運用・運営を行っています。
【主な変動要因】 | |
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〈増加〉 |
・不動産運用会社の売却益 |
当社は、鎌倉市深沢地区/藤沢市村岡地区において、日本最大級のライフサイエンス研究施設である湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)、日本屈指の医療機関である湘南鎌倉総合病院、地元行政等と連携し、ヘルスイノベーションを核とした街づくりを目指しています。自動運転と医療を組み合わせた「ヘルスケアMaaS」※に係る実証実験の実施や、湘南アイパークを運営する新会社への参画等を通じて、同地区の価値向上に取り組んでいます。
2022年度末の総資産は、前年度末より2,409億円(1%)増加し、22兆1,529億円となりました。
流動資産は、前年度末より4,217億円(4%)減少し、9兆1,093億円となりました。これは、市況変動及び数量減少に伴う商品デリバティブ資産の減少によりその他の金融資産が減少したこと等によるものです。
非流動資産は、前年度末より6,626億円(5%)増加し、13兆436億円となりました。これは、持分利益の増加や円安に伴う為替換算の影響により持分法で会計処理される投資が増加したこと等によるものです。
負債は、前年度末より1兆263億円(7%)減少し、13兆285億円となりました。
流動負債は、前年度末より6,231億円(9%)減少し、6兆6,947億円となりました。これは、市況変動及び数量減少に伴う商品デリバティブ負債の減少によりその他の金融負債が減少したこと等によるものです。
非流動負債は、前年度末より4,032億円(6%)減少し、6兆3,338億円となりました。これは、流動負債への振替により社債及び借入金が減少したこと等によるものです。
資本合計は、前年度末より1兆2,672億円(16%)増加し、9兆1,244億円となりました。
当社の所有者に帰属する持分は、前年度末より1兆1,908億円(17%)増加し、8兆710億円となりました。これは、当期純利益の積み上がりによる利益剰余金の増加や、円安に伴う為替換算の影響により在外営業活動体の換算差額が増加したこと等によるものです。
また、非支配持分は、前年度末より765億円(8%)増加し、1兆534億円となりました。
有利子負債総額から現金及び現金同等物や定期預金を控除したネット有利子負債(リース負債除く)は、前年度末より7,021億円(18%)減少し、3兆2,376億円となりました。
2022年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末に比べ14億円増加し、1兆5,570億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動により資金は1兆9,301億円の増加となりました。法人所得税の支払い等がありましたが、営業収入や配当収入のほか、運転資金負担の減少等により、資金が増加したものです。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動により資金は1,775億円の減少となりました。不動産運用会社あて投資の売却や関連会社への投資の売却等による収入がありましたが、設備投資、関連会社への投資や融資等の支出により、資金が減少したものです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動により資金は1兆7,666億円の減少となりました。借入債務の返済やリース負債の返済、配当金の支払い及び自己株式の取得等により資金が減少したものです。
配当は持続的な利益成長に合わせて増配していく「累進配当」を行う方針としています。自己株式の取得は、総還元性向の水準及び資本構成の適正化のために実施したものです。負債による資金調達は、流動性と財務健全性の観点で適切な水準を維持する方針としています。
2022年度における重要な設備投資等はありません。
三菱商事グループは、資金調達の主要な手段として機動的に社債を発行していますが、2022年度は社債調達環境を考慮した結果、社債発行による重要な資金調達は実施しておりません。
当社は、不動産運用会社三菱商事・ユービーエス・リアルティ(株)の全株式(発行済株式数の51%)を、KKR & CO. INC.の間接子会社である76(株)へ売却しました。