当期の国内および海外経済は、緩やかに持ち直しつつも、中国経済の停滞継続や人手不足の影響等もあり、一部に足踏みがみられました。加えて、物価上昇や、アメリカの通商政策による影響等により、先行きの不透明感が強まっております。
このような状況のもと、JFEグループでは、構造改革の完遂、高付加価値品比率の引き上げ、販売価格体系の見直しにより、収益基盤の強化を進めてまいりましたが、国内需要の低迷、中国による周辺国への廉価での輸出拡大により、事業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益ともに前期に比べ減益となりました。
JFEスチール株式会社では、国内外の需要や海外鋼材市況の低迷等を背景に、当期の連結粗鋼生産量は2,320万トンと前期と比べ減少しました。売上収益については、販売数量の減少や海外鋼材市況の悪化等を受け、3兆3,651億円と前期に比べ減収となりました。セグメント利益については、構造改革の効果発現および継続的な販売価格の改善やコスト削減に取り組んだものの、海外鋼材市況の悪化や販売数量の減少に加え、棚卸資産評価差等の一過性の減益要因等により、前期に比べ大幅な減益となる363億円となりました。
JFEエンジニアリング株式会社は、受注済プロジェクトを着実に遂行した結果、売上収益は5,698億円と前期に比べ増収となり、過去最高を更新しました。セグメント利益については、洋上風力案件(モノパイル)発注時期遅れ等により、前期に比べ減益となる193億円となりました。
受注の状況に関し、当期から、自治体等から受託したごみ処理施設等の長期O&M契約につき受注計上方法を変更しております。旧計上方法で計算した場合の当期の受注実績は5,585億円です。
JFE商事株式会社は、2024年5月に買収した米豪Studco社からの収益貢献等があったものの、国内建設分野の需要低迷継続等により、売上収益は1兆4,385億円、セグメント利益は479億円となり、前期に比べ減収減益となりました。
<当期の配当>
剰余金の配当につきましては、株主の皆様への利益還元を経営の最重要課題の一つと位置付けております。当期末の配当は、1株当たり50円で株主総会にお諮りすることといたしました。中間配当金50円と合わせ、年間では1株当たり100円としております。何卒ご了承賜りますようお願い申しあげます。
<第7次中期経営計画(振り返り)>
第7次中期経営計画期間においては、安定した収益力の確立や企業価値向上を目指し、掲げた施策を着実に遂行してまいりましたが、想定を大幅に超える鉄鋼の事業環境悪化を主要因として、2024年度連結事業利益は、中期計画目標の3,200億円に対して1,353億円に留まり、大幅な未達成となりました。
【対処すべき課題】
国内における需要の減少や中国材の廉価での輸出拡大による海外市場の混乱など足元の厳しい状況が継続することが見込まれ、さらに、保護主義の流れが加速するなど、これまで以上に環境悪化のリスクが高まることが想定されます。このような厳しい環境において、「JFE グループの目指す姿」に向かっていくために、「JFEビジョン2035」および「第8 次中期経営計画」(対象:2025〜2027 年度)を策定いたしました。
<JFEビジョン2035・第8次中期経営計画(収益目標)>
当社グループの第8次中期経営計画の詳細については、当社ウェブサイトに掲載しています。
(https://www.jfe-holdings.co.jp/investor/management/plan/)
<第8次中期経営計画(鉄鋼事業)>
徹底的に強靭化した国内体制において、競争優位性の源泉であるCNを含めた革新技術や高付加価値品を生み出し、海外成長地域において優位性のある技術・商品・人材を活かして事業を拡大してまいります。
【国内生産体制の再編】
JFEスチール株式会社における粗鋼生産能力2,600万トン(高炉7基体制*)に対し、高炉休止により2027年度粗鋼生産能力2,100万トン程度へとスリム化を実施します。2028年度には倉敷地区で高品質・高機能鋼材を製造可能な高効率・大型電気炉(革新電気炉)を稼働させ、高炉5基+革新電気炉1基体制とします。
【海外有望地域トップ有力パートナーとのインサイダー型事業拡大】
グローバルな成長機会を求め、海外トップクラスのパートナーとのインサイダー型事業を推進します。既存事業での利益拡大に加え、引き続き技術優位性がある分野・領域(電磁鋼板/自動車用鋼板・グリーン鉄源等)の事業に注力し、ポートフォリオの最適化を図るとともに、インドにおける電磁鋼板拡販等の前中期投資案件の早期立ち上げに経営資源を集中させていきます。
<第8次中期経営計画(エンジニアリング事業)>
多様な事業によるポートフォリオを強みとして収益基盤を強化しつつ、「サーキュラーエコノミーの実現」を通じて事業を拡大するとともに気候変動問題の解決を図ってまいります。
<第8次中期経営計画(商社事業)>
国内は数量・案件数に拘り存在感を高め、海外では需要が伸張するエリアにおいてM&Aも含めた加工拠点の増強等によりインサイダー化による現地完結型ビジネスを推進してまいります。
<第8次中期経営計画(京浜地区の土地活用)>
「OHGISHIMA2050」の推進にあたり、公共・公益性の高い土地利用転換を図っております。土地事業では、2027年度での累積事業収支は850億円、2035年度に1,000億円を達成いたします。加えて、京浜地区の立地とJFEグループが持つリソースを活用した新規事業の立上げにより企業価値の向上を図り、2035年度に土地事業(賃貸)および事業利用による利益100億円/年を目指してまいります。
<第8次中期経営計画(環境的持続性に向けた取り組み)>
「気候変動問題」を中心に、JFEグループ全体で積極的に取り組んでまいります。
<第8次中期経営計画(株主還元方針)>
第8次中期経営計画期間中のキャッシュアロケーション(3ヵ年総額)は以下のとおりです。
<第8次中期経営計画(株主還元方針)>
当社は株主の皆様への利益還元を最重要経営課題の一つと考えており、グループ全体として持続性のある企業体質の確立を図りつつ、積極的に配当を実施していく方針としております。本中期計画においては、引き続き配当性向30%程度といたしますが、安定的に配当を実施する観点から80円/株を下限とする方針といたします。
<第8次中期経営計画(企業価値向上に向けた取り組み)>
当社は、株価を重要な経営指標の一つとして認識しており、現状当社のPBR(株価純資産倍率)が1倍を大きく下回っていることを重要な課題として認識しております。株主資本コストを上回るROE(自己資本利益率)を安定的に実現し、市場からの信頼性を向上させていくことで、企業価値を向上させ、資本市場の評価を高めてまいります。
<第8次中期経営計画(主要財務目標・収益目標と株主還元方針)>
〇コンプライアンス
JFEエンジニアリング株式会社は、同社が2017年6月および2020年6月に沖縄県竹富町と契約した海底送水管更新工事に関して、入札談合等関与行為防止法違反および公契約関係競売入札妨害罪により同社元社員が有罪判決を受けたことから、建設業法に基づき、本年5月に国土交通省より全国における水道施設工事業に関する営業のうち公共工事に係るものについて、営業停止命令を受けました。
本事案を厳粛かつ真摯に受け止め、再発防止策を引き続き実行することにより、早期の信頼回復に努めてまいります。
JFEグループは、社会との信頼関係の基本である、コンプライアンスの徹底、環境課題への取り組み、安全の確立について、グループをあげて真摯な努力を継続してまいります。
また、当社グループは、「第8次中期経営計画」に沿って諸施策を着実に実行し、社会の持続的発展と人々の安全で快適な暮らしに寄り添う「なくてはならない」存在であり続けることを目指してまいります。株主の皆様におかれましては、JFEグループに対し、なお一層のご理解をいただくとともに、ご指導ご支援を賜りますようお願い申しあげます。