事業活動の取り組み状況

 グローバルでのデジタルトランスフォーメーション等の加速や、ニーズの多様化・高度化に対応するため、グローバル市場でビジネス拡大を図るとともに、市場の変化に対応したデジタルオファリング、システムインテグレーション等の多様なITサービスの拡大と安定的な提供に取り組みました。



 セグメント別の取り組みについては、以下のとおりです。



(注)

中国・APAC分野はその他セグメントに含まれています。


 当連結会計年度末における主な海外拠点の状況は以下のとおりです。

53カ国・地域、225都市、約94,300人体制を確立(日本国内を含むと約133,000人体制) 

(2020年3月31日現在)


公共・社会基盤


 中央府省及びテレコム、ユーティリティ向けサービスの規模拡大等により増収となりました。また、増収及び不採算額の減少等により増益となりました。

 政府・インフラ企業の基幹業務のシステム更改を確実に獲得しつつ、これまでの当社グループの実績や培ってきたノウハウを活用した案件創出、Society 5.0に基づく未来投資戦略やデジタル・ガバメント実行計画に沿った官民融合の新たな社会システム実現に向けた新規ビジネス等により事業拡大をめざしました。

<特許庁向け基幹システムのサービス開始>

経済産業省デジタル・ガバメント中長期計画に基づく「特許庁における業務・システム最適化」の中で最も重要な特許等の審査に関するシステムのうち、公開特許公報等に掲載する特許分類を付与する機能について2020年1月にサービスを開始しました。

<高度な地図情報を活用したデジタルビジネスを推進>

高度な地図情報の多様な用途での活用に向けてビジネスを推進しました。

一般財団法人リモート・センシング技術センターとともに、衛星画像を活用した世界最高精度の「AW3D全世界デジタル3D地図」について、全世界をカバーする2.5m解像度の3D地図の提供を2019年7月に開始しました。本サービスにより、世界規模での都市計画や自然災害の被害予測等において、より正確なシミュレーションや分析業務が可能となります。

当社の高精度3D地図制作・更新システムや自動運転車の走行中に収集される車両プローブ情報(注10)の処理に係る高い技術力やノウハウが評価され、内閣府が実施する戦略的イノベーション創造プログラムに参画しました。

<ヘルスケア領域のデジタルビジネスを推進>

医療機関における業務の迅速化・効率化をサポートすることを目的に、最先端のIT技術を活用した医療情報基盤の構築を推進しました。

各種医療材料にRFIDタグ(注11)を貼付し個体識別IDを記録することで、医療材料の物流情報や利用情報を一元的に管理する医療材料IoTプラットフォーム「MD-TraC」を、2019年4月より提供開始しました。本サービスにより、製造販売業者の在庫・廃棄ロスの削減や、販売代理店の受発注業務等の効率化をサポートします。

医療機関と臨床検査会社との間で行われる検査依頼・結果報告をオンライン上でセキュアに実施可能とする共同利用型サービス「L-AXeS」を、2019年6月より中外製薬㈱に提供しました。また、医療機関が新たな回線や設備を用意することなく、セキュアなネットワークによって臨床検査会社との検査データの授受が可能となるよう、「L-AXeS」と主要な電子カルテサービスとの連携サービスを2020年1月に提供開始しました。



金融


 金融機関向けサービスの規模拡大等により増収となりました。また、増収による増益はあるものの、不採算案件の発生等により減益となりました。

 規制緩和と技術革新により金融機関の事業環境は大きく変化しつつあり、デジタル技術を活用した金融サービスが登場するなど、金融事業に参画するプレイヤーが多様化する中、当社は引き続きお客様へ高信頼で高品質なサービスを提供し続けるとともに、時代の変化を先取りしたデジタル時代のTrusted金融ITプラットフォーマーとしてビジネス拡大をめざしました。

<共同利用システムの更改に向けた取り組みを推進>

㈱横浜銀行、㈱北陸銀行、㈱北海道銀行、㈱七十七銀行、㈱東日本銀行の5行との間で、当社がサービス提供をしている共同利用システム「MEJAR」の次期システムに関して、よりスピーディーに新たなサービスを提供するために、柔軟性の高いオープン基盤を第一候補として検討を行うことを2019年5月に合意しました。

<デジタル時代における金融サービスの提供に向け、最先端技術を活用した様々な取り組みを推進>

デジタル技術を用いた情報の蓄積や利活用による新しい金融関連事業の創発に向け、様々なデジタルビジネスを推進しました。

㈱山口銀行のコールセンター業務において、コンタクトチャネル統合ソリューション「Customer Engagement Hub」を2019年6月より提供開始しました。本ソリューションは、AIがオペレーター業務を支援するとともに、コールセンターやWebサイト等、多様な問い合わせチャネルから集まるデータを統合・分析することで、生産性向上とお客様満足度向上を支援します。

国際経済フォーラム(ダボス会議2020)と併催されたフォーラムにおいて、「貿易のデジタル化推進に関する覚書」に2020年1月に署名しました。貿易関係企業において、各貿易プラットフォーム間の相互接続性の確保が課題となっている中、相互接続性に関する国際的な標準化の議論に参画、貢献していきます。

地域活性プロジェクトとして、㈱横浜銀行とシェアリングエコノミーに関する実証実験を2020年2月より開始しました。本実証実験では、個人のスキル・経験・知識等を提供しあう「スキルシェアリング」に焦点を当てて当社と同行が参加し、その効果を検証しました。



法人・ソリューション


 製造業及びM&Aを含むペイメント向けサービスの規模拡大等により増収増益となりました。

 デジタルを活用する流れの更なる加速や、グローバル競争力強化の要請の高まり等、製造業、流通業、サービス業等における事業環境が大きく変化しています。この変化に対応するとともに、業務と先進テクノロジーの専門性を掛け合わせた高い付加価値を提供し続け、お客様事業の成長を支援することで、ビジネス拡大を更に進めました。

<決済関連事業を推進し、顧客体験を新たにデザイン>

キャッシュレス決済に関連する分野で、消費者にとってより便利で新しいサービスの提供を推進しました。

手に取った商品をレジでの支払い無しでそのまま持ち帰ることができるデジタル店舗出店サービス「Catch&Go」を2019年9月より提供開始しました。加えて、同サービスに顔パスでの入店が可能になる顔認証機能と、店頭在庫情報と連動して価格変更が可能になるダイナミックプライシングの機能を2020年1月に導入しました。レジ無しデジタル店舗の実現により、消費者は便利でお得な購買体験が得られ、店舗や店舗経営企業は業務効率化や購買機会の最大化だけでなくマーケティングへの情報活用等が可能となります。

日本郵便㈱のキャッシュレス決済導入に関して、三井住友カード㈱及びパナソニックシステムソリューションズジャパン㈱とともに、2020年2月より全面サポートを開始しました。8,500局の各郵便局窓口へ14,000台の決済端末を導入し、日本郵便㈱のキャッシュレス化推進をサポートします。決済インフラには当社が提供するクラウド型総合決済プラットフォーム「CAFIS Arch」(注12)が採用されました。

<キリンビール工場へAIを活用した濾過計画システムを導入>

 当社とキリンビール㈱は、AIを活用して最適なビール濾過計画を立案するシステムを開発し、2019年4月よりキリンビール福岡工場で本格稼動させるとともに、同システムを標準化し、2020年1月より横浜工場と滋賀工場にて試運用を開始しました。
 ビール工場における濾過計画業務は熟練者の知見に頼る部分が多く、様々な条件を勘案しながら立案するものですが、本システムは、熟練者へヒアリングを行うことで様々な制約を洗い出し、制約プログラミング技術(注13)を活用することで、熟練者の知見を標準化したものです。福岡工場、横浜工場・滋賀工場の3工場合計で、年間最大約2,500時間の作業時間の短縮を見込んでいます。


北米


 為替影響による減収はあるものの、M&Aによる規模拡大等により増収となりました。また、営業利益は、事業拡大に向けた費用及びPPA償却費等の増加はあるものの、PMI費用の減少及びM&Aによる規模拡大等により前年並みとなりました。

 世界最大のITサービス市場である北米における持続的成長に向けて、先端技術を活用したイノベーションの加速やデジタル領域のオファリング強化により、お客様ニーズへの対応力を更に高めるとともに、M&Aも推進し、事業の拡大及びプレゼンスの向上と収益性の改善を図りました。

<米国の大手銀行、医療保険会社のデジタルトランスフォーメーションを支援する案件を複数受注>

当社子会社であるNTT DATA Servicesは、イノベーション投資を通じたデジタルオファリング強化の成果として新たな案件を受注しました。

大手銀行より、お客様との長期的な関係を活かし、決済やオンラインバンキング等のアプリケーションをサポートするマイクロサービス・アーキテクチャ(注14)、クラウドへの移行支援及びユーザーエクスペリエンスデザイン(注15)等に関するデジタルトランスフォーメーション支援案件を受注しました。

医療保険会社より、同分野での専門的知見を活かして、お客様の開発から実装・検証までのサイクルにおけるデータ生成・管理、テストの自動実行等に関する案件を受注し、より迅速なサービス提供を実現しています。

<新型コロナウイルス感染症対応を支援するソリューションを新たに提供開始>

当社子会社であるNTT DATA Servicesは、新型コロナウイルス感染症の拡がりが医療全体に大きな負担をかけている中、医療機関、政府機関等を支援する新たなソリューションを提供しました。

ヘルスケア関連ソフトウェアのEnli社とともに、医療機関に対して罹患者の初期診断や定期的な経過確認、自宅隔離の解除判断等を支援するソリューションを提供しました。NTT DATA Servicesはシステムインテグレーターとして医療機関への導入支援やコンサルティングを担当します。

ヘルスケア関連サービスのSharecare社と連携し、新型コロナウイルス感染症の自己診断を誰でも匿名で行える対話型セルフスクリーニング・サービスを提供しました。本サービスは、IPsoft社のAIエンジン「Amelia」(注16)を融合し、症状・必要な措置等の判断を迅速にサポートすることで、医療機関の負担軽減と感染拡大防止に貢献します。

テキサス州オースティン市に検査のオンライン予約を可能にするデジタルツールを提供しました。本ツールはセキュリティを確保したプラットフォームで運用し、匿名化した検査結果の追跡が可能です。また検査需要や感染リスクの高い地域の把握、医療リソースの最適な配置等を支援します。


EMEA・中南米


 為替影響による減収はあるものの、スペインやイタリアを中心とした規模拡大等により増収となりました。また、営業利益は、増収による増益はあるものの、低採算事業の見直しを加えた事業構造改革の費用増加やブラジルにおける一部事業の見直し等により減益となりました。

 グループ各社がそれぞれの持つ強みを結集すると同時に、リソースの最適化を図ることで更なる事業の一体的運営を推進し、シナジー効果の発現をめざしました。また、デジタル領域でのいっそうのサービス提供力強化に向けて、M&A及び新たなソリューション開発への投資に注力しました。

<ドイツ鉄道とSAPサービスに係る大型契約を締結>
 

当社子会社であるNTT DATA EMEA LTD.は、同じく当社子会社であるitelligence AGと連携し、Deutsche Bahn AG(ドイツ鉄道)とSAPサービスに係る契約を2020年2月に締結しました。本契約は契約期間3年の大型契約であり、コンサルティング、アプリケーション開発等のサービスを提供し、「SAP S/4 HANA」(注17)を最大限活用するためのサポートを通じて、お客様のデジタルトランスフォーメーションをパートナーとして推進します。受注にあたっては、長年にわたってSAP関連サービスを提供してきた実績と信頼性、高い専門的知見を持つ豊富な人財といった当社グループの強みに加え、お客様の多様な要望への柔軟な対応姿勢が高く評価されました。

<お客様事業のデジタル化をパートナーとして推進>

お客様との長期的な信頼関係に加え、お客様事業のデジタルトランスフォーメーションにおける豊富な実績や先進技術を活用する姿勢が高く評価され、複数の案件において戦略パートナーに選定されました。

当社子会社であるeveris Groupは、欧州・中南米を中心にガス・電力事業を行うNaturgy Energy Group, SAよりデジタルトランスフォーメーションにおける戦略パートナーに選定され、2020年3月にサービス契約を締結しました。ガスの導管や電力の送配電に関するシステムの維持・運用等において先進的なIT技術を活用したサービスを提供します。今後10年間の売上総額は約5億ユーロとなる見込みです。

当社子会社であるNTT DATA UK Ltd.は、公認会計士の国際団体であるThe Association of Chartered Certified Accountants(以下、ACCA)と、契約期間5年、総額約5千万ポンドとなるデジタルトランスフォーメーションに係るパートナー契約を2019年11月に新たに締結しました。デジタルに対応したグローバルな組織への変化をめざすACCAに対して、全世界での会計士資格認定等の業務効率化を図ると同時に、会員のキャリア開発をサポートします。


(注10)車両プローブ情報
実際に走行する車両のセンサから収集される位置情報や交通情報のことです。

(注11)RFIDタグ
近距離の無線通信によってID等の情報を伝達することができるタグのことです。

(注12)「CAFIS Arch」
クレジット決済からインバウンド向け決済やQRコード決済までのあらゆる決済シーンに対応可能な、国内で最も利用されているクラウド型キャッシュレス決済プラットフォームです。

(注13)制約プログラミング技術
生産計画や配送のスケジュールに関する問題等に対して、制約条件を満たす答えをコンピューターで効率的に見つける技法のことであり、AIとして定義しています。

(注14)マイクロサービス・アーキテクチャ
機能ごとに分割した小さなサービスの組み合わせにより、変化に強く柔軟性の高いシステムを設計する手法のことです。

(注15)ユーザーエクスペリエンスデザイン
サービス等を利用するユーザーが得る体験を高めるように、機能や仕様、インターフェース等をデザインするアプローチのことです。

(注16)「Amelia」
米国IPsoft社が開発した、自然言語を認識できる最先端のAIのことです。

(注17)「SAP S/4 HANA」
豊富な機能やカスタイマイズへの自由度・拡張性を兼ね備え、統合的なデータベースによりスピーディーに最新情報が参照できる、法人向けデジタルソリューションのことです。


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2020/06/17 12:00:00 +0900
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