第203回 定時株主総会招集ご通知 証券コード : 5801
当期の世界経済については、米国では、インフレの鈍化および所得環境の改善、雇用者数の緩やかな増加があったものの、追加関税措置によるインフレ懸念を受け個人消費に減速感が生じるなど、景気の先行きに不透明感が高まりました。欧州では、金融緩和やインフレの落ち着き、所得環境の改善があったものの、個人消費、設備投資の伸び悩みや輸出の減速により、景気の回復は限定的なものとなりました。中国では、政府による景気刺激策の効果が見られましたが、不動産市場停滞の長期化等の影響から個人消費は低迷し、景気は伸び悩みました。さらに、ロシア・ウクライナ情勢や中東での軍事衝突など不安定な経済環境が継続しました。
わが国の経済においては、高水準の企業収益を背景に、主としてIT関連の需要に基づく設備投資が底堅く推移したものの、賃金・所得の伸びが物価上昇を安定的に上回る状況には至らず個人消費は力強さに欠け、景気の回復ペースは緩やかなものとなりました。
このような環境の下、当社グループでは、2030年におけるありたい姿を描き、そこへ向けての時間軸と領域を明確にした「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、「ビジョン2030」という)からバックキャストして2025年に目指す姿の達成を見据えて策定した中期経営計画「Road to Vision2030-変革と挑戦-」(以下、「25中計」という)に基づき、「資本効率重視による既存事業の収益最大化」および「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」を推進してまいりました。また、これらを下支えする「ESG経営の基盤強化」に取り組んでまいりました。
「資本効率重視による既存事業の収益最大化」については、事業ポートフォリオ最適化の取組みを進めることで、利益創出を図ってまいりました。主な取組みとして、統一された戦略による事業運営の効率化およびリソースの効率的な配分による競争力強化などを目的とした光ファイバ・ケーブル事業およびメタル電線事業の再編のほか、シナジーの発揮により成長市場における当社の優位性を確立するため、光コネクタにおいて開発力・コスト競争力に強みを持つ会社や高速光変調器において世界トップレベルのシェアを有する会社の子会社化を決定いたしました。また、データセンタ・AI関連市場においては、機能製品関連事業などにおいて製品供給体制を強化し売上拡大を図ってまいりました。特に放熱・冷却製品について、競合他社との差別化を図り、より高機能な製品を顧客に対して提供することによって収益基盤の拡大に取り組んでまいりました。
「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」については、日本国内において道路や鉄道等の社会インフラの老朽化と労働人口の減少が進行するなか、社会インフラ維持管理向けデジタルソリューションの提供により省人化・省力化に貢献してまいりました。また、環境負荷や労働衛生の観点から課題の多い薬品等を使用することなく錆・塗膜を除去できるレーザ施工システムの開発を進めてまいりました。加えて、ライフサイエンスを中心とするフォトニクス技術の非通信領域に関する事業の強化を図るため、医療・産業機器向け光ファイバおよび光関連部品を製造する会社を子会社化いたしました。
「ESG経営の基盤強化」については、脱炭素社会実現に向けた更なる貢献のためバリューチェーン全体で温室効果ガスの排出量ネットゼロを目指すべく「古河電工グループ 環境ビジョン2050」を改定いたしました。また、当社グループの存在意義を表す古河電工グループ パーパス「『つづく』をつくり、世界を明るくする。」(以下、「パーパス」という。2024年3月制定)について、従業員の理解促進および共感の醸成を目的とした活動を実施してまいりました。これにより、従業員が当社グループで働くことへの誇りをもつことにつなげて従業員エンゲージメントの向上に取り組んでまいりました。加えて、従業員およびサプライチェーンにおける人権リスクの再評価により新たに特定したリスクについてそれらを低減させる施策に取り組むとともに、責任ある鉱物調達に関する対応ルールを策定いたしました。
当期の業績につきましては、電装エレクトロニクス事業におけるワイヤハーネス等の自動車部品での増収や機能製品事業におけるデータセンタ関連製品での増収、また銅地金価格・為替の変動の影響により、グループ全体の売上は増加しました。損益面では、高付加価値製品のラインナップ拡充や生産性の改善、販売価格の適正化に取り組んだことにより増益となりました。
その結果、連結売上高は1兆2,018億円(前期比13.7%増)、連結営業利益は471億円(前期比321.6%増)、連結経常利益は486億円(前期比373.1%増)となりました。投資有価証券売却益104億円などを特別利益に、製品補償引当金繰入額61億円などを特別損失として計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は334億円(前期比412.7%増)となりました。なお、海外売上高は6,378億円(前期比17.0%増)で、海外売上高比率は53.1%(前期比1.5ポイント増)となりました。
単独の業績につきましては、売上高は3,535億円(前期比19.1%増)、営業利益は15億円(前期比106億円改善)、経常利益は130億円(前期比3,853.9%増)、当期純利益は324億円(前期比1,593.2%増)となりました。