第20期 定時株主総会招集ご通知 証券コード : 8306
1.提案内容
以下の条項を、当会社の定款に追加的に規定する。
第 章 気候変動関連リスク管理
第 条 移行計画(顧客の気候変動移行計画の評価に関する情報開示)
当会社が重大な気候関連財務リスクに直面していることを踏まえ、当会社は以下の情報を開示する。
1. 高排出セクターにおける顧客の気候変動移行計画とパリ協定1.5度目標との整合性1についての評価基準その他の評価方法
2. 当該顧客がパリ協定に沿った信頼性のある移行計画を作成しなかった場合の対応措置(新規資金提供2の制限を含む)
3. 当会社の顧客がパリ協定に沿った信頼性ある移行計画を持たないことに伴う当会社の財務リスクに係る評価
2.提案理由
当社は気候変動を「トップリスク」と認定し、2050年ネットゼロを公約し3、高排出セクター顧客の移行評価フレームワークを定め、当該顧客の移行状況を「1.5℃整合の中間目標、ガバナンス、排出実績」等につき評価を行うとしている4。
しかしこれら方針が、当社の高排出顧客向け投融資に与えている実質的影響は示されていない。また当該方針は、顧客がパリ協定1.5度目標と整合する信頼性ある移行計画を提示する期限や、移行を促すための投融資条件を設けておらず、むしろ当該移行計画を有しない顧客に多額の支援を続けている。これにより移行支援策の実効性が損なわれ、海外競合他社に遅れを取り、増大する移行リスクと気候変動による物理的リスクに株主を晒している。
本提案は当社が表明するリスク管理を適切に行い、ネットゼロ公約と整合させるために不可欠である。広く投資家の期待とも合致し、当社の長期的な企業価値の維持向上に資する。
1 気候変動移行計画の信頼性を判断するための基準には、以下が含まれるが、これらに限定されるものではない。
● 短期、中期、長期のスコープ1、2、3の排出削減目標
● これらの目標に沿った戦略(資本支出計画を含む)
● 排出オフセットやネガティブ・エミッション技術に過度に依存していないこと
2「新規資金提供」とは、顧客に対する新規の企業融資、プロジェクト・ファイナンス及びトレード・ファイナンスの提供(これらのリファイナンスを含む。)、及び顧客に対する資本市場取引のアレンジ又は引受をいう。
3 MUFGサステナビリティレポート2024
4 MUFG気候変動レポート2024
(会社注)株主から提出された書面に記載された提案内容及び提案理由を原文のまま記載しております。
3.取締役会の意見
本議案に反対いたします。
お客さまの気候変動リスクについては、信用リスク等への波及を通じてMUFGの財務リスクに繋がり得るリスクドライバーであるとの認識のもと、リスク管理の一環としてお客さまの移行状況の評価を行い、その方法と基準をMUFG Climate Report 2025で開示しています。ただし、資金提供の判断や当社財務リスクの評価は、お客さまの「信頼性ある移行計画」の有無だけで決まるものではないと考えています。
1.高排出セクターにおけるお客さまの気候変動移行計画とパリ協定1.5度目標との整合性については、トランジション評価フレームワークにおいて、高排出セクターのお客さまの移行状況を、1.5℃整合の中間目標や移行計画、気候関連のガバナンス体制、排出削減実績などにより確認しています。これに、エンゲージメント活動を通じて得た情報も反映し、お客さまの移行状況を6分類で評価しており、これらの評価基準その他の評価方法を開示しています。
2.お客さまがパリ協定に沿った「信頼性のある移行計画」を作成しなかった場合の対応措置(新規資金提供の制限を含む)については、具体的なプランや方向性を確認できないお客さまへのエンゲージメントを重視したエスカレーション・プロセスを導入しています。ただし、「信頼性ある移行計画」の有無だけを理由に、資金提供を制限することはしていません。資金提供の判断において、専門的なトランジション性評価を要する取引が発生した場合には、複数の専門部署によるスクリーニングを実施し、個社の計画の内容に加え、国家レベルの脱炭素計画との整合性、導入設備の排出量計測・削減への取り組み状況、技術蓋然性・社会実装性等を確認しており、その枠組みを開示しています。
3.お客さまがパリ協定に沿った「信頼性ある移行計画」を持たないことに伴う当社の財務リスクに係る評価については、財務リスクは「信頼性ある移行計画」の有無だけで決まるものではないため、「信頼性ある移行計画」を持たないことに伴う財務リスクを切り出した評価及び開示は実施していません。ただし、気候変動リスクは信用リスク等への波及を通じて財務リスクに繋がり得るリスクドライバーであると認識しており、トランジション評価フレームワークを通じて高排出セクター顧客の移行状況を確認し、その評価結果を開示しています。また、短期的に顧客の財務リスク悪化や信用リスク増大に影響を及ぼすと判断される情報を得た場合は、それを考慮したうえで、信用格付に適切に反映しています。なお、移行リスク及び物理的リスクを起因とした信用リスクの顕在化(与信費用増加)は現時点で発生していませんが、将来的に移行リスク及び物理的リスクが波及することによるリスク顕在化の可能性があることは十分に認識しています。そのうえで、気候変動リスク管理の枠組みを通じ、与信ポートフォリオ全体・セクター・顧客・案件、それぞれの軸でリスク管理施策に取り組んでおり、適切なリスク管理態勢を構築できていると考えています。
また、会社の定款は、商号、目的、機関、発行可能株式総数等、会社法に従って会社を運営する上での基本的な事項を定めるものです。
経営戦略の策定にかかる個別的な方針、気候変動問題等の特定の経営課題への対応等を定款に定めることは、方針の機動的な変更及びその速やかな実行の制約となる虞もあり適切ではありません。
加えて、多岐にわたる経営課題を有する当社にとって、気候変動関連にのみ焦点を当てた内容を定款に組み入れることは、安定した金融決済機能の提供や少子高齢化等の社会課題対応等を含む、当社の経営戦略の全体的なバランスを損ね、その効果的な実行に制約を加え、ひいては会社の企業価値の毀損に繋がる虞もあります。
従って、定款に本議案のような規定を設ける必要はないと考えます。