企業集団の事業の経過及び成果等

1. 当社の現況に関する事項

(1)企業集団の事業の経過及び成果等

 企業集団の主要な事業内容
 当社グループは、当社、子会社159社、子法人等87社及び関連法人等46社により構成される企業集団であり、「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」をめざし、銀行業務、信託銀行業務、証券業務を中心に、クレジットカード・貸金業務、リース業務、資産運用業務、その他業務を行っております。


 金融経済環境
 当年度の金融経済環境でありますが、世界経済は、コロナ禍に起因する各種の供給制約やウクライナ紛争によるエネルギー価格高騰が招いた世界的なインフレの高進、それを受けた各国での大幅な金融引き締めが景気を下押ししたものの、「ウィズコロナ」を前提に経済活動の正常化が進んだことで、全体としては緩やかながら回復を続けました。もっとも、ウクライナ紛争は長期化の様相を呈しているほか、これまでの金融引き締めの累積的な効果により世界経済への下押し圧力は一段と強まってきており、昨年末以降、景気の減速基調が明確化してきています。また、3月以降に発生した欧米の金融システム不安については、今後、実体経済への影響が顕在化してくるリスクも否定できません。わが国では、昨年3月にまん延防止等重点措置が解除されて以降、経済活動の正常化とコロナ対策の両立が着実に進展しており、景気は緩やかな回復を続けています。
 金融市場に目を転じますと、株価は、ウクライナ紛争など地政学リスクを巡る緊張が高まり、更に各国中銀が金融引き締め姿勢を強める中で値を下げる局面もありましたが、概ね高値圏で推移しました。金利については、欧米での急速な利上げを受け、年後半にかけて市中金利は上昇基調で推移しましたが、その後は、途中上下しつつも、徐々に水準を切り下げてきています。わが国では、短期金利は低水準での推移が続きましたが、長期金利は、昨年12月の日銀によるイールドカーブ・コントロールの一部見直しによりやや上昇しました。ドル円相場は、昨年10月には32年ぶりに151円台まで円安が進行しました。その後は政府・日銀の為替介入や米国の利上げペース鈍化、日銀の政策見直しなどにより、円安進行には歯止めが掛かり、円高・ドル安方向にやや水準調整された形で推移しています。


 企業集団の事業の経過及び成果(2022年度決算)
 このような環境下、当社グループの2022年度連結業績は、経常利益が1兆207億円、親会社株主に帰属する当期純利益は1兆1,164億円となりました。
 業務粗利益は、前年度比5,390億円増加の4兆5,030億円となりました。資金利益については、貸出利ざやの改善や海外の金利上昇局面における外貨預貸金収益の増加などにより、前年度比8,638億円増加の2兆9,075億円となりました。信託報酬・役務取引等利益は、海外の融資関連手数料増加を主因として、前年度比1,206億円増加の1兆6,954億円となりました。特定取引等利益・その他業務利益は、セールス&トレーディング収益が好調に推移する中、簿価利回り改善に向けて含み損の大きい外国債券の売却を進め、前年度比4,455億円減少し999億円の損失となりました。営業費は、国内の経費は減少しましたが、為替影響やMUFGユニオンバンク株式譲渡による影響などにより、前年度比1,614億円増加の2兆9,087億円となりました。以上の結果、業務純益は前年度比3,775億円増加の1兆5,942億円となりました。与信関係費用総額は、米国子会社のMUFGユニオンバンク(MUB)株式の売却決定に伴う会計処理によってMUBの貸出金評価損を計上し、前年度比3,434億円増加の6,748億円の費用発生となりました。株式等関係損益は2,880億円の利益、持分法による投資損益は4,258億円の利益となりました。その他の臨時損益は、MUB株式の売却決定に伴う会計処理によってMUB保有債券等の評価損を計上し、6,125億円の損失となりました。特別損益は、上記貸出金・債券等の評価損の大半の戻し入れを含むMUB株式売却益の計上により、5,491億円の利益となりました。
 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、1兆1,164億円となり、前年度に続き2年連続で1兆円を超過し、MUFG発足以来過去最高益であった前年度並みの水準となりました。
 自己資本規制(バーゼルⅢ)の下での連結普通株式等Tier1(中核的自己資本)比率は、10.76%、連結Tier1比率は12.04%、連結総自己資本比率は13.91%となりました。いずれも2022年度末時点で求められる水準を充足しています。流動性カバレッジ比率*1も、152.2%と、規制で求められる水準を充足しています。
 また、貸出資産の健全性を表す不良債権比率は、1.26%と低水準を維持しています。2022年度の普通株式1株当たりの年間配当金につきましては、前年度比4円増額の32円を予定しています*2
 なお、2021年9月に経営資源の最適配置の観点から決定したMUB株式の米国大手銀行U.S.Bancorp社(USB)への譲渡については、2022年12月に株式譲渡が完了しました。また、USBとの間で業務提携契約を締結し、米国に居住する個人のお客さまに対する口座開設サービスの継続などについて合意しました。本件後も米国は重要な市場であり、MUFGの強みを活かせる法人取引を中心とする事業に集中し、新たな成長をめざします。

*1 ストレス下において30日間に流出すると見込まれる資金(分母)を賄うために、短期間に資金化可能な資産(分子)を十分に保有しているかを表す指標
*2 2022年度期末配当については、2023年6月29日に開催予定の定時株主総会において承認されることを前提としています

決算の詳細は、当社ウェブサイトをご参照ください。
https://www.mufg.jp/ir/

(事業本部別の経過及び成果)
 当社グループは、総合金融グループの強みを発揮するため、グループ各社が緊密な連携のもと、一元的に戦略を定め事業を推進する事業本部制を導入しています。各事業本部は、お客さまの幅広いニーズにお応えするため、グループ各社それぞれの強みを融合させた戦略の立案や施策の運営を行っています。
 当年度における事業本部別の事業の経過及び成果は次のとおりです。


デジタルサービス

 主なビジネス 
国内の個人・法人のお客さまを対象に、様々な接点を通じて利便性の高いデジタル金融サービスを提供

  めざす姿  
お客さまのお金の不安を解消し、金融サービスの専門家として社会から常に頼られる存在
本邦トップバンクとして圧倒的な「金融・デジタルプラットフォーマー」へ

  業績概要  
コロナ禍からの回復も相まって、コンシューマーファイナンス等が堅調に実績を積み上げました。また、店舗統廃合や内部事務のデジタル化などに伴う経費削減も進め、結果、営業純益は317億円の増益となりました。引き続きオンラインを含むチャネル全体でお客さま接点を拡充します。また、外部事業者連携を通じた新サービス創出にも取り組んでいます。

法人・リテール

 主なビジネス 
国内の個人・法人のお客さまを対象に、貸出、資金決済、資産運用や相続・不動産など幅広い金融サービスや、事業・資産承継といったソリューションを提供

  めざす姿  
人々の暮らし・豊かさと、取引先企業などの成長・発展に貢献
本邦随一の“金融プロフェッショナルグループ”

  業績概要  
米国金利上昇等の環境変化に対するニーズを捉え、預貸金・外国為替・デリバティブ業務を中心に増収となりました。また、店舗統廃合により人件費・物件費を抑制し、営業純益は636億円の増益となりました。引き続き、銀行・信託・証券一体でお客さまの課題にアプローチし、付加価値の高いサービス・ソリューションを提供します。

コーポレートバンキング

 主なビジネス 
日系大企業のお客さまに、銀行、信託、証券をはじめとしたグループ各社が、各々の高い専門性を活かした金融サービスを提供するとともに、グループ連携を通じて総合的な金融ソリューションを一体で提供

  めざす姿  
お客さまと事業リスクを共にし、共に成長する
「階段経営」の実現
 中期経営計画のゴールに向け、階段を上るように、毎年前年比で一歩一歩着実に成長する

  業績概要  
リスクに対する適正なリターンの追求、米国金利上昇等の環境変化への機動的な対応により、預貸金収益を中心に拡大。営業純益は1,724億円の増益となり、2022年度の「階段経営」を実現しました。また、複雑化・多様化する環境・社会課題やお客さま経営課題の解決に向けて、お客さまとのエンゲージメント(対話)を深め、事業リスクを共にする取り組みも強化しています。

グローバルコマーシャルバンキング

 主なビジネス 
パートナーバンク(クルンシィ(アユタヤ銀行)・ダナモン銀行・ヴィエティンバンク・セキュリティバンク)を通じて、アジア進出企業及び地場企業・個人のお客さまへ金融サービスを提供

  めざす姿  
 MUFGとパートナーバンクの協働により、お客さまが“アジアで進むチカラになる”

  業績概要  
クルンシィの貸出残高増加、ダナモン銀行の調達コスト抑制等により、営業純益は466億円の増益となりました。またデジタル関連投資ではHC子会社*1の買収、Akulaku社*2への出資、Garudaファンド*3の設立を決定しました。お客さまが“アジアで進むチカラ”になるべく、パートナーバンクとの協働強化に加え、更なるアジアの成長の取り込みに向けてデジタル関連投資を進めます。

*1 個人ローン事業を展開するHome Credit社のフィリピン・インドネシア子会社 *2 主にインドネシアで、デジタル金融サービスを提供するフィンテック事業者 *3 新興企業への投資を目的としたインドネシア特化型ファンド(総額1億米ドル)

受託財産

 主なビジネス 
AM*1、IS*2、年金の各事業において、高度かつ専門的なノウハウを活用したコンサルティングや商品・サービス等を提供
 *1 資産運用 *2 資産管理

  めざす姿  
 安心・豊かな社会の実現に向け、フィデューシャリー*3として高度な専門性を発揮し、国内外のお客さまに選ばれ続けるAM・ISプレイヤー
 *3 受託者

  業績概要  
AM事業は、三菱UFJ国際投信の公募株式投信残高*4が業界首位になりました。IS事業は、国内外で高付加価値サービスの複合提供が順調に進捗しました。年金事業は、D-Canvas*5利用者が30万人を超え、確定拠出年金加入者の裾野が拡大しました。一方、営業純益は前年度に計上した成功報酬の減少や市況低迷で24億円の減益となりました。高度な専門性を発揮し更なる成長をめざします。

*4 除くETF *5 確定拠出年金加入者向けアプリ。2022年度グッドデザイン賞を受賞

グローバルCIB

 主なビジネス 
グローバル大企業のお客さまを対象に、商業銀行機能と証券機能を中核にグループ一体で付加価値の高いソリューションを提供

  めざす姿  
市場環境変化に柔軟に対応し、将来にわたって持続可能な収益性を実現するビジネスモデルを構築する
世界標準の知見の蓄積・還元を通じ、日本・アジアを代表する「グローバル金融機関」として、お客さまに必要とされる存在に

  業績概要  
キャピタルマーケットの市況低迷により証券プライマリービジネスは減収も、プロジェクトファイナンス等のローン関連手数料や預貸金収益の増収により、営業純益は1,312億円の増益となりました。GCIB・市場セールス&トレーディング領域一体で、金融市場における総合的な取引の獲得を進めると共に、スタートアップ向け融資事業の拡大や関連する新規事業への展開も続けています。

市場

 主なビジネス 
金利(債券)・為替・株式のセールス&トレーディング業務を中心とする顧客向けビジネス
MUFGの資産・負債や各種リスクを総合的に運営管理するトレジャリー業務

  めざす姿  
 Drive Growth and Transformation:
 「変化の先頭に立つ」を基本方針として、稼ぐ力を着実に伸ばし、失敗を恐れず変革にチャレンジすることで、お客さまとMUFGの持続的な成長に貢献し続ける


  業績概要  
相場のボラティリティが大幅に上昇する中、お客さまの課題・ニーズを捉える活動量の引き上げと機動的なポジション運営によってセールス&トレーディング業務が大幅増益となり、営業純益1,371億円を牽引しました。トレジャリー業務は特に米国金利が大幅に上昇する難しい環境下、ヘッジ操作により外債ポートフォリオの評価損失を抑制したほか、新機軸投資にも挑戦し続けています。


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2023/06/29 12:00:00 +0900
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