第19期定時株主総会招集ご通知 証券コード : 8306
(1)企業集団の事業の経過及び成果等
イ 企業集団の主要な事業内容
当社グループは、当社、子会社156社、子法人等97社及び関連法人等51社により構成される企業集団であり、「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」をめざし、銀行業務、信託銀行業務、証券業務を中心に、クレジットカード・貸金業務、リース業務、資産運用業務、その他業務を行っております。
ロ 金融経済環境
当年度の金融経済環境でありますが、世界経済は、各国の金融引き締めによる累積的な影響が景気を下押ししたものの、コロナ禍以降の財政支援や堅調な労働市場等にも支えられ、全体としては緩やかな回復を続けました。もっとも、コロナ禍で生じた繰り越し需要の一巡や財政支援の漸進的な縮小等、各国が平時モードへ回帰していく中での反動に加え、中国の不動産問題の顕在化や長期化するウクライナ紛争、ガザ情勢といった実体経済への影響を見定めることの難しい出来事も多く、不確実性の高い状況が続きました。わが国では、物価高が消費の重石となったものの、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う経済活動の正常化や、インバウンド需要の拡大、円安等による企業業績の改善にも支えられ、景気は緩やかな回復を続けました。
金融市場に目を転じますと、株価は、地政学リスクを巡る緊張が高まり、更に各国中銀が金融引き締め姿勢を続ける中で調整する局面もありましたが、年度を通じ上昇基調で推移しました。金利については、欧米では、急速な利上げに伴い、年度前半に市中金利は上昇しましたが、金融引き締め局面の終了等が意識される中で年度後半にかけて低下しました。わが国では、短期金利は日銀が3月にマイナス金利を解除した後に小幅に上昇しましたが、総じて低位で推移しました。長期金利は、日銀による昨年7・10月の長短金利操作の柔軟化により、年度半ばにかけてやや上昇しましたが、その後は概ね横ばい圏内で推移しました。ドル円相場は、日米の金融政策の方向性の違い等が意識され、昨年11月には151円台まで円安が進行しました。その後は米国の利下げ転換時期の模索や日銀のマイナス金利解除等により、円安進行には一定の歯止めが掛かり、振れを伴いながらも横ばい圏で推移しました。
ハ 企業集団の事業の経過及び成果(2023年度決算)
このような環境下、当社グループの2023年度連結業績は、経常利益が2兆1,279億円、親会社株主に帰属する当期純利益は1兆4,907億円となりました。
業務粗利益は、前年度比2,295億円増加の4兆7,325億円となりました。資金利益については、預貸金収益が増加するも、前年の投信解約益の剥落やMUFGユニオンバンク(MUB)売却の影響等があり、前年度比4,496億円減少の2兆4,578億円となりました。信託報酬・役務取引等利益は、海外の融資関連手数料増加や受託財産業務、資産運用ビジネスの手数料増加を主因として、前年度比1,252億円増加の1兆8,206億円となりました。特定取引利益・その他業務利益は、主にポートフォリオ組み替えに伴う国債等債券関係損益の損失が前年よりも減少したことにより、前年度比5,538億円増加の4,539億円となりました。営業費は、MUB売却による影響などにより、前年度比199億円減少の2兆8,887億円となりました。以上の結果、業務純益は前年度比2,494億円増加の1兆8,437億円となりました。与信関係費用総額は、前年度にMUB売却決定に伴う会計処理により計上した貸出金評価損の反動により、4,979億円と、前年度比1,769億円の費用減少となりました。株式等関係損益は3,712億円の利益、持分法による投資損益はMorgan Stanleyの持分法適用決算期の変更の影響もあり、5,318億円の利益となりました。その他の臨時損益は、前年度にMUB売却決定に伴う会計処理により計上したMUB保有債券等の評価損の反動により前年度比4,915億円改善しましたが、1,209億円の損失となりました。特別損益は、778億円の損失となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1兆4,907億円となり、MUFG発足以来過去最高益を更新しました。ROEは8.5%(Morgan Stanleyの持分法適用決算期の変更影響除きでは8.1%)となり、中期経営計画の財務目標である7.5%を超過達成しました。
自己資本規制(バーゼルⅢ)の下での連結普通株式等Tier1(中核的自己資本)比率は13.53%、連結Tier1比率は15.72%、連結総自己資本比率は17.82%となりました。いずれも2023年度末時点で求められる水準を充足しています。流動性カバレッジ比率*1も、161.7%と、規制で求められる水準を充足しています。
また、貸出資産の健全性を表す不良債権比率は、1.51%と低水準を維持しています。2023年度の普通株式1株当たりの年間配当金につきましては、前年度比9円増額の41円を予定しています*2。
*1 ストレス下において30日間に流出すると見込まれる資金(分母)を賄うために、短期間に資金化可能な資産(分子)を十分に保有しているかを表す指標
*2 2023年度期末配当については、2024年6月27日に開催予定の定時株主総会において承認されることを前提としています
決算の詳細は、当社ウェブサイトをご参照ください。
▶ https://www.mufg.jp/ir/
(事業本部別の経過及び成果)
当社グループは、総合金融グループの強みを発揮するため、グループ各社が緊密な連携のもと、一元に戦略を定め事業を推進する事業本部制を導入しています。各事業本部は、お客さまの幅広いニーズにお応えするため、グループ各社それぞれの強みを融合させた戦略の立案や施策の運営を行っています。
当年度における事業本部別の事業の経過及び成果は次のとおりです。
事業本部の概要
国内の個人・法人の非対面取引を中心とするお客さまを対象に、デジタルでの取引接点の拡大や利便性向上を通じたデジタル金融サービスを提供するとともに、全社のデジタルトランスフォーメーションを推進し、ビジネス基盤を強靭化しています。
2023年度の業績概要
お客さまのデジタルシフトが進展し、ダイレクトのユーザー数が1,000万人を超えました。コンシューマーファイナンスでは業容を着実に拡大しコロナ禍以前の水準を超えたほか、金利上昇に伴う預金利ざや改善もあり、営業純益は253億円の増益となりました。
事業本部の概要
国内の個人や法人のお客さまを対象に、貸出、資金決済、資産運用や相続・不動産など幅広い金融サービスの提供、事業・資産承継といったソリューション提供などを通じて、多様なニーズにグループ一体でお応えしています。
2023年度の業績概要
利ざや改善や法人向け貸出の残高増加、LBO(Leveraged Buyout)を中心としたソリューションの案件積上げ等により、資金収益や手数料収益が増加しました。また、市況回復に伴い資産運用ビジネスでの収益も増加し、営業純益は898億円の増益となりました。
事業本部の概要
日系大企業のお客さまを対象に、貸出や資金決済、外国為替などのサービスや、M&Aや不動産関連ビジネスなどグループ各社の専門性を活かした総合的なソリューション提供を通じて、お客さまの企業価値向上に貢献しています。
2023年度の業績概要
リスクに対する適切なリターンの追求による貸出利ざやの改善に加え、金利環境変化を捉えた活動に伴う預貸金収益の増加、不動産ビジネス等におけるリスクテイク力の強化、グループ一体運営の進展により営業純益は1,997億円の増益となりました。
事業本部の概要
パートナーバンク(クルンシィ(アユタヤ銀行)、ダナモン銀行、ヴィエティンバンク、セキュリティバンク)を通じて、アジア進出企業や地場企業、個人のお客さま向けに金融サービスを提供しています。
2023年度の業績概要
米国MUFGユニオンバンク(MUB)株式譲渡による減益影響がありましたが、クルンシィでの4社連結子会社化や利ざや改善、ダナモン銀行でのオートローン好調推移等により、営業純益は119億円の増益となりました。成長投資では、アジアのコンシューマーファイナンス2社*への出資を完了しました。
* DMI Finance Private Limited(インド)及びPT Mandala Multifinance Tbk.(インドネシア)
事業本部の概要
資産運用(AM*1)、資産管理(IS*2)、年金の各事業において、高度かつ専門的なノウハウを活用したコンサルティングや、運用力と商品開発力の向上に取り組み、国内外のお客さまの多様なニーズにお応えしています。
2023年度の業績概要
AM事業は、オルタナ運用商品の提供や国内運用子会社における好調な運用商品販売等で増益となりました。IS事業は、国内外における複合的なサービス提供や米国金利上昇により資金収益が増加しました。年金事業は、DC*3での投資信託への資金流入等により増益となりました。以上の結果、事業本部の営業純益は199億円の増益となりました。
*1 Asset Management *2 Investor Services *3 確定拠出年金
事業本部の概要
グローバル大企業のお客さまを対象に、商業銀行機能と証券機能を中核にグループ一体で付加価値の高いソリューションを提供するコーポレート&インベストメント・バンキング(CIB)ビジネスを展開しています。
2023年度の業績概要
効率的なバランスシート運営の徹底や機関投資家向けファイナンス等の推進により、貸出利鞘が大きく改善。更に、市況変化がある中でも、強みであるストラクチャードファイナンス領域を中心に手数料収益を増強、GCIB・市場一体運営を通じたクロスセル強化も寄与し、営業純益は1,238億円の増益となりました。
事業本部の概要
金利(債券)・為替・株式のセールス&トレーディング業務*1を中心とする顧客向けビジネスと、MUFGの資産・負債や各種リスクを総合的に運営管理するトレジャリー業務*2を主に担っています。
2023年度の業績概要
顧客向けビジネスでは為替・デリバティブ等のフロー取引の増加を背景に、高水準の収益を確保しましたが、トレジャリー業務において、有価証券ポートフォリオの将来の利回り向上を図るために、含み損を抱えた債券を計画的に売却したこと等から、営業純益は1,117億円の減益となりました。
*1 為替・デリバティブなどの金融商品・ソリューションをお客さまに提供するセールス業務と、銀行間取引や取引所などで市場性商品の売買を行うトレーディング業務の総称
*2 貸出などの資産と預金などの負債に内在する資金流動性リスクや金利リスクなどを総合的に管理するALM運営やグローバル投資など
なお、リテール戦略の更なる強化のために、2024年4月1日付けで事業本部体制を変更しました。
デジタルサービス事業本部はリテール・デジタル事業本部となり、個人のお客さま(ウェルスマネジメントを除く)を一体で所管します。リアル・リモート・デジタルの各チャネルのベストミックスを通じてお客さまとの接点を広げ、「MUFGで良かった」と感じていただける顧客体験を届けることで、「お客さまへの生涯提供価値(Life Time Value)×顧客基盤」の最大化をめざします。
また、法人・リテール事業本部は法人・ウェルスマネジメント事業本部となり、事業法人とウェルスマネジメントのお客さまを所管します。有人でのソリューション提供力を高め、社会課題解決に資する事業承継・資産承継などを起点としたビジネスモデルを更に強化します。